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橋下徹「難敵韓国と向き合う問題解決の考え方」

プレジデントオンライン / 2019年8月28日 11時15分

※写真はイメージです。 - 写真=iStock.com/Oleksii Liskonih

悪化の一途をたどる日韓関係。韓国によるGSOMIA(軍事情報包括保護協定)破棄により対立はついに安全保障分野にも及んだ。関係改善のために両国は何をすべきか。プレジデント社の公式メールマガジン「橋下徹の『問題解決の授業』」(8月27日配信)から抜粋記事をお届けします。

(略)

■歴史は善悪の二者択一ではない

日韓の歴史については、日本の教育ではあまり深く触れられていない。昭和44年生まれ、今年で50歳の僕の中学、高校の頃でも、1910年の日韓併合とその後の植民地統治(厳密には植民地統治と言えるかは微妙)に触れるぐらい。1909年に伊藤博文が安重根に暗殺されたことは、歴史の年表として暗記した。

高校になって世界史がカリキュラムに入ってくるけど、今の歳になれば、ローマ史や中世ヨーロッパ史、隋・唐以前の中国史などを細かく学ぶよりも、近現代における日中史、日韓史をしっかり学ぶ方が重要だとつくづく感じるね。

1945年8月に日本が敗戦し、その後、戦争当時者が存命のしばらくの間は、日本の近現代(明治以後)の歴史について、特に日中戦争・太平洋戦争に突入していく歴史については、冷静な議論ができなかったと思う。当事者なのでどうしても善か悪かにこだわってしまう。

(略)

日韓の歴史についても、史実研究が深まり、戦争当事者から2世代、3世代と世代を経てきた今だからこそ、どちらの国が完全に正しくて、どちらの国が完全に間違っていたかという二者択一的な評価から脱却すべきであり、それが可能だと考える。

(略)

■もし日本がアメリカの1州になるとしたら賛成するか?

19世紀後半から20世紀初頭の朝鮮半島は、中国、ロシア、日本などの勢力がぶつかり合う要衝であり、当時の世界情勢の中では、日本が韓国を保護国化しなければロシアが保護国化していたかもしれない。

日本は、もちろん日本の利益のために、朝鮮(韓国)の独立と保護国化をはかったのだが、日本が1905年の日露戦争に勝利したことをもって、国際社会は日本の韓国統治を容認するようになっていく。

(略)

もし日本の独立を重視する日本人が、韓国人の立場でこのような日韓の歴史を見た場合にどのような言動をとるだろうか。独立を重視するからこそ、たとえ日韓併合が合法だったとしても自分たちの主権を奪われたことに納得するわけがない。日韓併合によって韓国が近代化したとしても、主権を奪われたことを認めるわけがない。そうであれば、韓国人が主権にこだわる言動をすることには理解すべきである。

もちろん、日韓併合による韓国の近代化を重視する韓国国民もいるだろう。

しかし、今の文大統領は、韓国の主権、朝鮮民族の独立というものを徹底的に重視する立場だ。

僕も日本の主権にはこだわる。

ゆえに、僕は、日本の主権が奪われることには徹底的に抵抗する。主権が奪われることが仮に経済的な利益になるにせよ、それでも主権が奪われることには反対する。経済的な利益や国際社会での立場を考えれば、日本はアメリカ合衆国のひとつの州になった方がいいのかもしれない。しかし、僕は日本の主権にこだわるので、反対だ。今、EUでも加盟各国の主権を重視する政治的な動きが活発化してきている。最たるものが、EUから離脱しようとするイギリスの動きだ。

それほど国家の主権・独立ということは国民・国家のプライドにかかわることであり、経済的メリットに勝るとも劣らない。

だから僕は、朝鮮民族の独立、韓国の主権にこだわる文大統領の立場に立てば、日韓併合を徹底的に否定する主張が出てくることには理解できる。

しかし、僕は日本人なので、日本の立場で徹底的に主張する。文大統領の立場上の主張には理解するが、文大統領の主張自体を認めるわけではない。あくまでもその「立場」を認めただけだ。

僕は、日韓併合条約は合法で、韓国の近代化に貢献したということを主張する。

もちろん日韓併合時の朝鮮(韓国)人の独立性は不十分だったろうし、その他社会制度においても不備があったことは事実だ。朝鮮(韓国)人に対する差別の問題もあった。だけれども、日韓併合の全てが悪だったわけではない。繰り返すが、全てが善だったわけでもない。

韓国国民にも日本の立場に立って、このことを考えてもらいたい。

(略)

■韓国の徴用工判決は認めた上で、韓国政府が日本側に補償すべき

今の日韓関係の悪化のきっかけとなった、いわゆる徴用工判決は、韓国の司法機関が、「日韓併合条約は『違法』で、それをきっかけとした日本企業の非人道的行為について慰謝料責任を認めた」というものだが、これは韓国の立場としては仕方がないところがある。というのも、1965年の日韓基本条約と請求権協定は、日本の植民地支配による賠償責任は認めていない。日本側は、日韓併合条約は合法で、賠償問題は何も発生しないという立場だからだ。

そうすると、日韓基本条約と請求権協定によっては、日本の違法な韓国統治に関する責任はまだ清算されていないという韓国側の主張も一定成り立ち得る。もちろん、日本側の立場では受け入れられないが。

どうしても韓国側が日韓併合条約の違法性にこだわるというなら、それは仕方がない。しかもそれが韓国の司法機関で判断されたということであれば、なおさらである。韓国も三権分立の国であり、司法機関の判断は尊重される。ゆえに、韓国の法的手続きによって、韓国内の日本企業の財産を差押えして現金化するというのであれば、それも仕方がない。立場が異なれば、主張も異なるのである。

橋下 徹『トランプに学ぶ 現状打破の鉄則』(プレジデント社)

しかし、日本の立場における日本の主張にも韓国側は仕方がないと認識すべきだ。韓国内の日本企業の財産を差押え、現金化し、日本企業に実損を与えたのであれば、韓国政府はその分をしっかりと日本側に補償すべきだ。

韓国のプライドを守るために、日韓併合条約を違法だとして、韓国内の日本企業の財産を差し押さえて現金化するのは結構だが、日本側に実損を与えることは許されない。日本のプライドも尊重し、特に実損を与えることは絶対に避けるべきだ。日本企業の実損分は、韓国政府として日本側に補償すべきだし、韓国政府が補償しないというのであれば、日本側はあの手この手を尽くして、韓国側からお金をむしり取るべきである。

韓国をいわゆるホワイト国から除外するという輸出管理手続きの厳格化をしても、徴用工判決によって被る日本の実損を回復できるわけではない。

韓国側が日本企業から金をむしり取ったのであれば、今度は日本が韓国側から金をむしり取る。これが、今回の徴用工判決騒動における、日本側の正しい対処の仕方だ。

(略)

(ここまでリード文を除き約2500字、メールマガジン全文は約9100字です)

※本稿は、公式メールマガジン《橋下徹の「問題解決の授業」》vol.165(8月27日配信)を一部抜粋し、加筆修正したものです。もっと読みたい方はメールマガジンで! 今号は《【超緊迫・日韓関係(1)】自分のプライドを守りつつ相手を利用するには》特集です。

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橋下 徹(はしもと・とおる)
元大阪市長・元大阪府知事
1969年東京都生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、大阪弁護士会に弁護士登録。98年「橋下綜合法律事務所」を設立。TV番組などに出演して有名に。2008年大阪府知事に就任し、3年9カ月務める。11年12月、大阪市長。

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(元大阪市長・元大阪府知事 橋下 徹)

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