山本一郎「3人の育児と4人の介護で見えたこと」
プレジデントオンライン / 2019年9月22日 17時15分
■「誰が、どうズレているのか」を客観視する
著者の山本一郎さんは、今話題の情報サイト「文春オンライン」でも屈指の人気コラムニスト。出版の経緯について、複数の出版社から「本にしましょう」と勧められていたほどだ。本書は、そんな同サイトの掲載コラムに加筆をしたものだ。
昨今は社会の変化が激しいため、何を価値基準にすればいいのかわからなくなっている。そして、自分で「正しい」と信じていた人生哲学や仕事上のポリシーが、いつの間にか周囲と“ズレ”てしまうことがよくある。
そこで本書は、仕事観、人生観、企業観、世代観、結婚観、時代観という6つのテーマで、「誰が、どうズレているのか」を客観視する。自分がズレているケースもあれば、まわりがズレているせいで、自分が振り回されているケースもあるわけだ。そんな“ズレ”で迷える日本人にとって、本書は人生のコンパスになるかもしれない。
山本さんは、「問題にいきなり直面してわけもわからずに苦しむよりも、何で苦しいのか、何のために苦しむのかが客観的に理解できれば、その苦境を乗り越え、人生の次のステージを展望できると思うんですね」と話す。
■「山本家の会話は煽り合いが基本」
本書の題材は、著者の実体験に基づいたものだ。山本さんは「実はコラム連載開始当時に、僕自身が3人の子育てと並行して、自分と妻の両親の4人を介護しなければならない状況になり、ライフスタイルや働き方の改革を迫られていました」と明かす。
「待機児童」や「介護離職」が社会問題となる中、「同じように悩む人の心の負担が、少しでも軽くなれば」と考えて執筆したそうだ。
また、山本さんのWEBコラムは歯に衣着せぬ物言いが売りだ。
「山本家の会話は煽り合いが基本で、父親が『生きるのが大変』とか抜かしたら、『じゃ、死ねば』と返します。これは一種の愛情表現なのですが、社会に出るまで煽るのは当たり前だと思っていました。ネットでも、表現が直截的なほうが読まれます。
しかし、書籍化にあたって、丁寧に加筆をしました。もっと幅広い層に手に取って、人生についてじっくり考えてもらいたかったんです」
実際に、「励まされた」「上層部に読ませたい」といった反響が、30~40代を中心とした読者から、続々と寄せられているそうだ。
もちろん、批判的な意見も少なくないが、「いちいち手紙を書いて、言い返しています」というのが、読者との熱のあるやり取りを大事にする、山本さんらしいところだろう。
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個人投資家、作家
1973年、東京都生まれ。96年慶應義塾大学法学部政治学科卒業。文春オンラインでコラムを連載中。
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(ジャーナリスト 野澤 正毅 撮影=的野弘路)
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