1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 経済
  4. ビジネス

「論理的」と「理屈っぽい」にある決定的な違い

プレジデントオンライン / 2019年9月2日 9時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Rawpixel

※本稿は、西村克己『論理思考大全』(PHPエディターズ・グループ)の一部を再編集したものです。

■「論理的」なことは、誰も否定できない

「論理的」と「理屈っぽい」が混同されていることが意外に多いようです。論理的と理屈っぽいは、どちらとも筋道が立っていることですが、決定的な違いがあります。論理的とは、第三者である聞き手や読み手にとって、「客観的に筋道が立っていること」です。

一方、理屈っぽいとは、「自己満足的に筋道が立っていること」です。話し手や書き手の頭の中では話がつながっていても、都合がいい話だけを並べていることが多いのです。聞き手や読み手にとっては、屁理屈を並べているだけで、筋道が立っていないと感じられます。たとえば、話し手にとって、都合がいい理由しか並べていないとき、聞き手は話し手を「理屈っぽい」と感じます。

論理的であるためには客観性が重要です。客観的とは、誰もが否定できないことです。1人よがりでは、主観的になってしまいます。相手をきちんと「説得」することが求められる場合、論理的であることが不可欠です。話し手や書き手が「信用できない理由」「都合がいい話」だけを並べても、聞き手や読み手を説得することはできないでしょう。

■結論や主張に至るプロセスを明確化して考える

聞き手や読み手に対して、説得する理由を飛ばして結論や主張だけを伝えようとしても、説得できません。たとえば、社長が「わが社には組織改革が必要だ」と言っても、社員たちには、組織改革が必要な理由が伝わらないでしょう。なぜ組織改革が重要だという結論になったのか、その理由を説明しなければ、社員を説得できません。

説得理由などの途中の説明が飛躍すると、話が伝わらなくなります。飛躍が多いと相手に論理的に伝わらないのです。「なぜならば」という理由をきちんと補足して、第三者が納得する説明でなければ、論理的とはいえません。

論理的という言葉には、「結論や主張に至るプロセスが明確」という意味もあります。問題提起から結論や主張に至るまでのプロセス(手順)が、第三者につながったものとして理解されてはじめて、論理的といえます。

■論理思考の三大要素は「主張」「論拠」「データ」

論理の三大要素を表したものに三角ロジックがあります。三角ロジックとは、「主張」「論拠」「データ」の3つが、矛盾なく整合性を保っていることです。「主張」を頂点として、「論拠」「データ」が底辺を支える三角形を形成するイメージから、三角ロジックと呼ばれています。

主張とは、「話の結論、提案や意見、推論」のことです。論拠とは、主張を説得するための「原理・原則、法則性、一般的な傾向、常識などの理由付け」です。データとは、主張を裏付ける「客観的な統計などの数値や事実、具体例など」です。

現状説明が多く、「要するに何を言いたいのか?」がわかりにくい場合、主張が明確でないことが多いのです。また、主張が明確でも納得できない話には、論拠やデータがあいまいで、主張の説得材料になっていない場合が多くあります。

主張を支える論拠とデータに信憑性がない、またはチグハグな場合、第三者を説得することはできません。

■鍵を握るのは三大要素を結ぶ「Why?」と「So what?」

三角ロジックの頂点の主張と、両底辺の論拠とデータの関係は、「なぜ?(Why?)」「だからどうした?(So What?)」の関係で結ばれています。上から下、つまり主張から論拠とデータに結び付けるキーワードが「Why?」です。また下から上、つまり論拠とデータから主張に結び付けるキーワードが「So What?」です。

主張ばかりで説得力がない場合、説得のための論拠とデータが不十分です。「Why?」をきちんと説明するよう心がけましょう。現状説明ばかりで「何が言いたいのか?」が明確でない場合、主張をきちんと伝えることを意識しましょう。

三角ロジックを理解するために、「税理士をめざそう」という例題で考えてみましょう。主張を「税理士の資格を取って自分の未来を切り開こう」とします。それを説得するためには、税理士資格の魅力を伝える必要があります。

そこで論拠として、手に職をつける必要性、独立開業の魅力、高収入の可能性を伝えます。データとして、サラリーマンより平均年収が高い、ベンチャー企業増加による顧客増加の統計データを伝えます。これで税理士の資格を取得する魅力が説得できるでしょう。

■「水平思考」と「垂直思考」で応用力を身につける

マクロからミクロに考える習慣は、屁理屈に陥らないために極めて重要です。

これと同じような意味として、「水平思考をしてから垂直思考をする」という考え方があります。

水平思考とは、「広く浅く全体を把握すること」。一方、垂直思考とは、「特定の部分を深く深く分析すること」です。

まずは全体を広く浅く把握して、それから重要な部分を探して、深く深く分析することが大切です。

特に私たち日本人は、垂直思考をする習慣がDNA(遺伝子)レベルで体に染みついています。農耕民族である日本人が、太古の昔から与えられた村で一生を終え、水平思考をする習慣がなかったことに起因するのかもしれません。いきなり思いこんで「これしかない」という垂直思考からスタートすることが多かったといえます。

一方、欧米人は狩猟民族で、何もない広大な大地から、都市設計図を描いてきました。まず全体を見渡して、どこに道路を造るか、どこから水道を引いてくるかと、ゼロから都市計画を立てる水平思考からスタートすることが多かったのです。すぐに垂直思考から入るクセを直すことで、飛躍的に論理思考力が高まります。

■水平思考で広くとらえ、垂直思考で深く深く考える

陥りやすい垂直思考の枠組みを広げるために、先に意識して水平思考をしましょう。ところが、水平思考をしてから垂直思考をしても、時間が経つと周囲が見えなくなってきます。そこで、ある程度垂直思考をしたら、もう一度周囲を見渡して水平思考をしましょう。

垂直思考で進めてきた今までのやり方を、一度ゼロにリセットしてみるのもいいでしょう。頭の中のバイアス(偏り)を一度捨てて、まっさらな気持ちで冷静になって、360度周囲を見渡して水平思考をするのです。もっといいアイデアが浮かぶかもしれません。

西村克己『論理思考大全』(PHPエディターズ・グループ)

よくある悩みとして、メーカーの研究所の多くで、研究テーマが商品化につながらないというものがあります。商品にどのように適用するのかを考えないで開発テーマを決めるからです。テーマ設定の段階で、水平思考で商品企画部門や販売部門と広く連携して視野を広げることが求められています。

ビジネスシーンで絶えず生まれてくる問題に絶対的な答えはありません。そして、その答えの見えない問題を解決するためには、知識だけでも、ひたすら考え続けるだけでも足りません。

問題の奥に潜む「根本原因」をつかみ、限られた時間のなかで最大の効果をあげる解決策を優先的に選びとること。そして、それをシンプルに伝え、人を動かすこと。

これらの複雑で答えのない問題を解決していくための道具が「論理思考」なのです。

----------

西村 克己(にしむら・かつみ)
経営コンサルタント
東京工業大学大学院 経営工学系修士課程修了。富士フイルム株式会社を経て、1990年に日本総合研究所に移り、主任研究員として民間企業の経営コンサルティング、講演会、社員研修を多数手がける。2003年より芝浦工業大学大学院 工学マネジメント研究科教授、08年より同大学院客員教授。現在、ナレッジクリエイト代表取締役。昭和ホールディングス社外取締役。

----------

(経営コンサルタント 西村 克己)

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください