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「すべてデパート」の医師妻が我慢を始めたワケ

プレジデントオンライン / 2019年8月31日 9時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Alife

山下さんは4人家族。夫は外科医。妻は専業主婦で、買い物はすべてデパート派。ファストファッションを買ったこともなかった。だが不慮の事故で夫の月収が92万円から63万円に激減。さらに都内の私大に通うことになった長女への仕送りが毎月22万円。赤字転落した家計を立て直す方法とは——。

■自動車事故の後遺症で医師の夫の手取り月給が92万円から63万円に

「夫の自動車事故と、長女の大学進学が重なって、家計が一挙に苦しくなりました」

わざわざ北海道から東京の私のオフィスに相談にいらした山下由美さん(仮名・47歳)。来年には次女の大学進学も控え、このままでは赤字が悪化して、せっかく貯めた貯金(1150万円)がなくなってしまうのではと、不安になったそうです。

山下家は、勤務医である夫の稔さん(仮名・51歳)と由美さん、大学1年生の麻衣さん(仮名・19歳)と、高校3年生の芽衣さん(仮名・18歳)の4人家族。

稔さんはベテランの外科医として、これまで多くの難手術を手掛けてきました。ところが、今年の1月、車で外出中に追突事故に遭い、入院。懸命なリハビリを続けたものの、利き腕の右手にしびれと痛みが残り、手術を行うことが難しくなってきました。病院の勤務には復帰したものの、以前は約92万円あった手取り月収が、4月以降、約63万円に減ってしまいました。ボーナスも手取りで年300万程度ありましたが、減額必至です。

さらに、長女の麻衣さんの大学進学で、家計的に大きな誤算がありました。麻衣さんは地元の国立大学が第一志望でしたが、結果的には東京の私立大学に進学することになったのです。東京での家賃や生活費は両親にとって想定外でした。

「100万円を超える学費(年間)はボーナスを充てて何とかしのぎますが、それとは別に家賃と生活費を合わせて毎月20万円仕送りしています。ちょうど夫の給料が毎月30万円も少なくなったところに、この20万円の出費。ダブルパンチでたちまち毎月の家計の赤字は23万円という火の車状態です」(由美さん)

■私大へ進学した長女のための仕送り月20万円+αも痛い

麻衣さんのほうも大都会・東京での初めてのひとり暮らしで浪費しがちです。毎月、仕送りの追加要求が2万~3万円あり、5月の大型連休ではホームシックで帰省し、往復の飛行機代などイレギュラーな支出もありました。加えて、次女の芽衣さんも来年の大学受験を控え、予備校代、模試代も増えてきました。そして稔さんは思うように仕事ができないストレスからか、お酒の量が増えました。

「このままでは毎月の赤字をボーナスでも補塡(ほてん)できなくなるかもしれないし、貯金にも手をつけることになると思うと、もう、心配で心配で」と、由美さんは精神的にかなり追い込まれた状態です。

毎月安定した高収入を得ていても、予期せぬ事故などで収入が激減し、赤字になってしまうことは、あまり多いケースではないとはいえ、誰にでも起こり得ることです。また、子どもの進路も親の期待どおりにはなかなかいかないもの。

由美さんは「東京で私立大学に通わせる親の経済的負担の大きさ」をこぼしたい気持ちをぐっと我慢にして、子どもの決めた道を応援しようと心に決めました。

ただ、そうはいっても、毎月23万円の赤字が続いているのは、危機的な状況であることに変わりありません。由美さんは長い間家計簿をつけていたそうですので、家計簿を拝見しながら、対策を考えていくことにしました。

■「月23万円の赤字」を放置したヤバすぎる家計のすべて

由美さんは長年、雑誌の付録の家計簿を愛用し、「日記も兼ねて」ほぼ毎日家計簿をつけているそうです。几帳面に細かく記入、集計するのがモットーで、ページを開くと、「食パン6枚切り・218円」「ヨーグルト・特売138円×5個」など、買ったもの一つひとつの金額、個数、特売情報などを詳細に記入した、「文字で埋め尽くされた家計簿」でした。

メタボ家計 BEFORE→AFTER

ですが詳細に記入してある割には、家計管理にはあまり生かされていないようです。

稔さんの収入が毎月100万円近くあった1年前の家計簿と比較すると、食費、日用品費、通信費、被服費、交際費、嗜好品代などの支出額が、ほとんど変わっていませんでした。麻衣さんは東京で生活し、現在は家族3人なので、これはやや使い過ぎでしょう。

■収入激減にもかかわらず、食料はすべてデパートで購入

私は家計簿の活用法や買い物の仕方など、由美さんから詳しく話を聞いて、具体的な改善点を探っていきました。

まずわかったことは、家計簿は「つけるだけ」になっているということ。細かいところまできっちりしたい性格なので、詳細に記入するものの、その内容を吟味したり、振り返ったりすることはほとんどなく、集計が合えばそれで満足していたそうです。

そのため、以前と同じようにお金を使い、赤字になってしまっても、どの費目をどのように減らしていけばいいのかが、まったくわからないといいます。

家計簿は記入や集計にどんなに労力をかけても、「つけるだけ」では家計の改善に役立てることはできません。「何にいくら使っているのか」をつかみ、買ったものが「そのときに必要だったか」「必要以上に買いすぎていないか」「この値段でよかったか」を振り返り、「欲しいだけで買ったもの」「たくさん買いすぎたもの」「高いなあと思ったもの」を、次から減らしていくことが大切です。こうして、買うものに優先順位をつける目的で家計簿を見直すと、さまざまな発見があるはずです。

写真=iStock.com/Juan Carlos Hernández Hernández
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Juan Carlos Hernández Hernández

由美さんにもこうした視点で家計簿を見直してもらいました。

すると、詳細に記入していたおかげで、「このヨーグルトは特売につられて家にあるのに買ってしまった。今度からは安くてもあるものは買わないようにしますね」など、振り返りが順調に進んでいきました。

そして、買ったものだけでなく、「買っているお店」にも「家計費がかかる理由」があることに気づきました。由美さんは自宅の近所にあるから、「カードのポイント還元率が高いから」といった理由で、食材も、洋服も、日用品もデパートで買っていたのです。

■なんと月19万円の支出カットに成功した

スーパー、ドラッグストア、ファストファッションはもちろん、いまはメルカリなどでも安くていいものが買えることをお伝えし、さっそく利用してもらうことにしました。それにより、食費は当初月13万8000円のところを9万円に、また生活日用品を月3万8000円から1万4000円に減額することができました。

通信費は「つながりにくいのでは?」という先入観を捨てて、スマホの契約をキャリアから格安SIMに変更したり(4台で月3万2000円→1万6000円)、小さいときから通っていたものの、受験で続ける時間がなくなった次女のピアノ教室を一時お休みしたり(教育費月4万2000円→3万4000円)、ほとんど乗っていない2台目の車を処分したり(車関係費2万8000円→1万8000円)と、いままで「あたりまえ」と思って続けていたことも、一つひとつ見直してもらいました。

また、食費は月単位の予算では全体像がつかみにくいことから、「週予算」での管理でやってみることにしました。こうした由美さんのチャレンジも含めた改善案を持ち帰ってもらい、家族みんなで「山下家の家計」について、話し合ってもらうことにしました。

■長女も家庭教師のバイトを始め、仕送り代が4万円減

1カ月後、由美さんからメールをいただきました。

山下家の初の「家族マネー会議」は、最初はぎこちなかったそうですが、実際の家計簿の数字を見てもらい、たたただ節約ということではなく、「必要じゃないと思う出費を、みんなそれぞれに減らすようにしてみない?」と話したところ、稔さんが「ワインを毎月買うのをやめて、ワインセラーにあるものを大事に飲むことにするよ」と口火を切ってくれました。

すると「スカイプ」で東京から家庭会議に参加していた麻衣さんはバイトを始めると宣言し(月4万円の家庭教師のバイト代分、仕送り代を減額)、芽衣さんはピアノ教室の中止を納得したうえで、「ママがいろいろ買いすぎないよう、私が冷蔵庫と納戸の中をチェックするね」と、メンター役を買って出てくれました。

写真=iStock.com/kudou
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/kudou

その結果、毎月23万円だった赤字が、約4万3000円にまで削減できるめどが立ちました。まだ毎月は赤字ですが、年間では大きく改善できることになります。

■「黒字」を目指して頑張りすぎると、リバウンドする

一気に「黒字」を目指して頑張りすぎると、リバウンドしてしまいます。できることから始めていくことが大切ですし、山下家の場合、家族で話し合うことで、みんなが自分の問題として家計改善に取り組むようになりました。これは今後のさらなる改善に向けて大きな力になると思います。

「芽衣が社会人になるまでのあと5年、みんなで意識して取り組んでいけば、乗り越えられそうな気がしてきました」と、由美さんも前向きな気持ちになったようです。

山下家の場合は、夫の事故というタイミングが重なってしまいましたが、地方に住む親にとって、子どもへの仕送りは大きな負担になるものです。教育費はコントロールが難しい費目ですので、「どうしてもお金がかかる時期」には「貯金」をいったん脇に置いて、多少の赤字は覚悟しつつ「収支トントンの家計」を目指してもいいのではないでしょうか。

長い人生にはこうした「谷」の時期もあるもの。そのなかでどれだけ具体的な手を打てるかが、「強い家計」の指標になるのだと思います。

写真=iStock.com/Silberkorn
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Silberkorn

■何をいくら削ったのか【コストカット額ランキング】

1位 -4万8000円 食費
家族の人数が4人から3人になったことを意識して、毎週の予算内でやりくりするようにした。買い物する場所をデパートからスーパーに変更
2位 -4万円 長女仕送り
毎月追加の仕送りはしないことに。長女が家庭教師のアルバイトも始めた
3位 -2万4000円 生活日用品
ドラッグストアで1カ月分だけ買い物。シャンプーなどのブランドも見直した
4位 -1万6000円 通信費
4台のスマホをすべて格安SIMに変更
5位 -1万4500円 嗜好品
ワインセラーに寝かせているワインをまずは大事に飲み切ることに
6位 -1万2000円 被服費
デパートでの購入を減らし、ファストファッションも取り入れた
7位 -1万円 車関係費
ほとんど乗らなくなった1台を売却し、保険料、ガソリン代を削減
8位 -8000円 教育費
大学受験の勉強のため通えなくなった、次女のピアノレッスンを中止
8位 -8000円 交際費
夫の付き合いゴルフ、妻のランチ会をぞれぞれ月1回ずつ減らすことに
10位 -6000円 理・美容費
インターネット予約割引などを活用

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横山 光昭(よこやま・みつあき)
家計再生コンサルタント、株式会社マイエフピー代表
お金の使い方そのものを改善する独自の家計再生プログラムで、家計の問題の抜本的解決、確実な再生をめざし、個別の相談・指導に高い評価を受けている。これまでの相談件数は2万3000件を突破。各種メディアへの執筆・講演も多数。著書は60万部を超える『はじめての人のための3000円投資生活』や『年収200万円からの貯金生活宣言』を代表作とし、著作は110冊、累計330万部となる。個人のお金の悩みを解決したいと奔走するファイナンシャルプランナー。

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(家計再生コンサルタント、株式会社マイエフピー代表 横山 光昭)

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