1分でわかる「親死亡前の相続手続きA to Z」
プレジデントオンライン / 2019年9月16日 11時15分
▼遺産相続編
分割協議がまとまる生前対策とは
■相続税がかかる場合は、早めに税理士へ
相続は、被相続人が亡くなったその日からスタートする。相続財産は相続開始日にさかのぼって法定相続人に所有権が移るのだ。
「最初にやるべきは遺産の把握です。どのような財産や債務が、どれぐらいあるのか、すべて詳しく調べ、それぞれ評価・計算し、総財産を算出します。次に遺言書の有無も確認します。そして、相続放棄あるいは限定承認(財産の範囲で負債を相続する)は3カ月以内に手続きします」(行政書士の明石久美氏、以下同)
相続を放棄すると、相続権は別の相続人に移る。よくある勘違いのひとつに、父親が亡くなり、母親と息子が相続人になった場合、「母親に全財産をあげたいから」と息子が相続放棄をする例があるという。
「息子が相続放棄しても、母親の相続分が増えるわけではなく、父方の祖父母に相続権が移ります。遺産分割協議書を作成する際、母親の相続分を100%、他の相続人(この場合は、息子)の分を0%とする、いわゆる“ゼロ円相続”と相続放棄は似て非なるものなので注意が必要です」
遺言書がある場合は遺言書にしたがって、遺言書がない場合は、相続人全員で遺産分割協議を行い、相続人全員が合意した内容を遺産分割協議書にまとめる。そして遺産相続開始から10カ月以内に相続税の申告や納付を行わなくてはならない。
「相続税がかかることがわかっている場合は相続を得意とする税理士に早めに依頼しておくのがおすすめです。タイミングが遅くなると、依頼しても受けてもらえないことも」
■相続が得意な税理士はどうやって探せばいいのか
では、相続が得意な税理士はどうやって探せばいいのか。
「行政書士や司法書士など専門家に依頼したり、知り合いにいたりすれば、その専門家に紹介してもらうのもひとつの方法です。肩書では『相続専門』などとうたっていても、実際にはまるで経験がないという人も中にはいますので」
まったくツテがない場合は、専門家が開催する相続や終活にまつわるセミナーに参加してみるのもいいと明石氏は助言する。
「セミナーに参加すれば、基礎知識が身につくのと同時に、講師を務めている専門家の雰囲気もある程度はつかめます。感じがよくて話しやすそうな先生がいれば、有料相談を申し込み、もう少し詳しく相談してみるといった方法もあります」
専門家をうまく活用できるかどうかもやはり、下準備次第。できることからひとつずつ、根気強く準備を進めていきたいものだ。
まずはどのような財産や債務がどれぐらいあるのか、すべてを把握する
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(1)可能なら遺言書の有無や保管場所は生前に確認しておきたい
遺言書には、公証人に作成を依頼した「公正証書遺言」と、本人が書いた「自筆証書遺言」の2種類がある。公正証書遺言は公正役場に原本が保管されているため、親の死後、公正証書遺言が見つからない場合は最寄りの公証役場で再発行してもらえる。一方、自筆証書遺言の場合、自宅の机やタンス、仏壇の引き出しなど保管場所はさまざま。貸金庫や信託銀行に預けられているケースもある。できれば生前に確認しておくと、遺言書探しに追われずに済む。
(2)相続手続きがスムーズに進む「法定相続情報証明制度」
2017年5月にスタートした「法定相続情報証明制度」。相続手続きでは、被相続人や相続人の戸籍謄本の束を各窓口に何度も提出する機会がある。しかし、法定相続情報証明制度では、親が居住している管轄の法務局に戸籍謄本や除籍謄本など相続手続きに必要な書類一式と相続関係を一覧に表した図(法定相続情報一覧図)を提出すると、認証文を付した写しが無料で、必要な通数交付される。この写しを戸籍の束の代わりに、各種相続手続きに利用できる。
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行政書士
明石シニアコンサルティング代表。相続や終活のコンサルタントとして活躍。全国の企業や団体に向け年間120件以上のセミナーを行っている。
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■▼遺言書の有無で決まるその後の手続き
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ライター
1973年生まれ。東北大学大学院経済学研究科博士後期課程満期退学。編集プロダクション「馬場企画」を共同経営。マネー系の話題を中心に週刊誌などで活躍中。
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(ライター 島影 真奈美 撮影=研壁秀俊)
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