世界の富裕層がやっているお金の増やし方2つ
プレジデントオンライン / 2019年9月7日 6時15分
■富裕層の常識「プライベートバンク」を使った資産運用
人生をより豊かにするための賢い資産運用法とし、プライベートバンクを使うことは、富裕層の間では常識になっています。お金はお金の専門家に任せ、次世代のためにも賢くお金を増やすためのアドバイスをもらいます。特にオールドリッチの方々は、財産は代々同じ銀行で資産運用をする傾向が高いです。これは今までの信用と信頼で関係が成り立っているからです。
モナコ公国は小国ですが、プライベートバンクを含め30以上の銀行が存在するといわれています。世界の富裕層は、数種類の外貨を持ち、銀行や国も分けて資産管理をしています。それはどこかの国でテロがあったり、自然災害で打撃を受けた時のことを見越しての選択です。たとえば日本は地震、火山の噴火、津波、台風など自然災害が多い国なので、日本国内のみ、日本円のみで財産を持っていると、災害のとき、すべてを失うリスクがあるかもしれません。
だからと言って、モナコのプライベートバンクに口座を開くことは、少しハードルの高いことでしょう。モナコのプライベートバンクを利用する世界中の人たちの中で、日本人はわずか1%しかいないそうです。これはとても少ない数字です。また、モナコ公国の住民約35,000人に対して、在モナコの日本人は100人に満たないと言われています。日本企業もありません。そもそも、モナコで日本人を見かけない理由として、①モナコ公国をよく知らない②この地域の独特な文化に馴染めない③日本語のコミュニティがない、などが上げられます。このような理由から、日本により近いシンガポールや香港の方が、日本人にとってお金を預けるのも馴染みやすいのかもしれません。
海外へ行かなくても、日本国内にも海外のプライベートバンクはUBS、クレディスイス、ロンバーオディエ、ジュリアスベアの4社があります。国内なら日本人担当者や日本語で対応してもらえるので安心です。とはいえ、海外の銀行でも、日本国内と現地では販売商品は異なり、海外で販売できても、日本で販売できない金融商品もあるそうで、利回りも違ってきます。ただ、いきなり海外に行くのはやはりハードルが高いので、プライベートバンクに興味のある方は、まず国内に事務所のあるプライベートバンクに相談するところからはじめてはいかかでしょうか。
■オークションで実物資産を築く
富裕層たちの資産運用法を、もうひとつご紹介しましょう。オークションで高級品を売買するという方法です。夏のハイシーズンのモナコでは、毎週のように高級ホテルでオークションが開催されます。ジュエリー、時計、絵画、美術品、バック、ワイン、車、家具などあります。富裕層の人たちは多趣味で、ヴィンテージやアンティークのコレクターが多く目立ちます。落札価格が億単位になるケースもよくあります。オークションでは新品な商品を購入するのと違い、商品の価値を見極める目が必要です。オークション会場は、そのような価値の見極め方が学べる絶好の場所でもあります。
オークションは、開催の前日までホテルのバンケットルームに商品が展示され、内覧会が開かれます。これをヴューイングといいます。このヴューイングは、開催期間中の時間内なら、無料で誰でも入館することができます。商品を実際に手に取ったり、付けたりすることも可能です。前日の夜には、オークションに参加する人や関係者を招いてパーティーが開かれ、気分を高めながらオークション当日を迎えます。このように、単純にものを購入するというだけでなく、社交の場が提供されるのもモナコならでは。オークションにいきなり参加するのはちょっと気が引けるという方でも、ヴューイングに参加するだけでも学びになるはず。
当日はたくさんの商品を競りにかけるため、とても早いスピードでオークションが進んでいきます。数字はオークショナーがフランス語と英語の両方で伝え、その金額はスクリーンに随時、ユーロ、米ドル、ポンドなどで表示されます。
オークションの落札方法は、会場でのビット(落札)、オンライン・ライブオークション、テレフォンビット、書面によるビットがあります。最近はオンライン・ライブオークションの参加が世界的に多くなっているそうです。会場へ行かなくても、インターネットを使ってライブで競ることができるので、世界の富裕層たちにとってはとても参加しやすくなりました。
私の友人パオロは、クラシックカーのコレクターで、自分の車の写真集をつくったり、世界で開かれるクラシックカーコンテストに出展し、数々の賞を獲得しています。世界で有名なクラシックカーコンテストは、春にイタリアコモ湖のヴィラデステで開催される「コンコルツォ・デレガンツァ・ヴィラデステ」、そして夏のカリフォルニアで開かれるモントレーカーウィークの一部「ペブルビーチ・コンクール・デレガンス」です。この歴史あるコンクールに出展をして賞を競います。彼の場合は趣味で参加していますが、このように賞を獲得することで、車の価値をより高めることができ、売買することで資産運用として成立していきます。この他にもパオロの自宅には、アンティーク時計が100個以上所持され、自宅の書斎には古書が並びます。毎年ロンドンで開かれる古書専門のオークションに出席するのが楽しみのひとつだとか。さらにリビングには世界の鎧や甲冑が10点以上並び、他にも帽子、絵画、彫刻が飾られていますが、これらもすべて実物資産となります。
■国ごとの「価値の見極め方」を学ぶ
世界的に有名なオークションハウスのひとつは、サザビーズ(Sotheby’s)。日本でオークションは開いていませんが、より多くの人に参加してもらえるようにと、帝国ホテル本館に店舗を出展されたそうです。ここでは入札、出店、作品の査定やアドバイスなどをしてくれます。私は20年前に、サザビーズオークションへ参加するため、ヴューイングは東京で、実際のオークションは香港まで行った経験があります。その時に比べると、大変便利な時代になりました。
もうひとつは、世界でもっとも長い歴史を誇る美術品オークションハウスのクリスティーズ(Christie’s)です。こちらは年間450回を超えるオークションを開催し、美術品、宝石、時計、家具など80種以上に及ぶ分野を扱っています。HPには世界で開催されるオークションの年間スケジュールの掲載や、カタログ購入ができるので覗いてみるのも面白いでしょう。
オークションは未知の世界かもしれませんが、参加は誰でも可能なので、興味のある方は一度足を運んでみてはいかがでしょうか。オークションの傾向や仕組みがわかってくると、国によって人気があるものと無いものの違いが理解できるようになり、それだけでも勉強になります。ヨーロッパで人気なものが、アジアでは人気がなかったり、またその反対だったりします。それがわかっていれば、購入する国によって、意外なものが低価格で手に入るチャンスもあり、資産になるでしょう。
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国際マナー研究家
モナコ公国に活動拠点をおく国際マナー研究家。2003年、日本人女性にプロトコールマナーを伝えるスクール「エコール ド プロトコール モナコ」を設立。日本と欧州の文化活動や社会貢献活動の功績に対して、王家騎士団“聖マウリッツオ・ラザロ騎士団”から2016年、Dame(ディム)の称号を得る。モナコ公国アルベール大公が名誉顧問総裁を務める国連提携慈善団体Amitié Sans Frontières Internationale(国境なき友好団)の日本支部代表理事。著書に『ドレスを1枚ぶらさげて』など。
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(国際マナー研究家 畑中 由利江 写真=iStock.com)
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