"話が長い"と言われる人は何が一番問題なのか
プレジデントオンライン / 2019年9月10日 6時0分
■なぜ話が長くなってしまうのか
・論点ズレてきてるよ
・「感情」はいいから「事実」話してくれよ
と言われてしまいます。
これは、女性リーダーが自身をそう振り返っているコメントであり、我々がコンサルティング現場において、実際多数の女性経営者、女性管理職から聞く言葉でもある。
今回はこの「長い話」について考えていこうと思う。
■なぜ会議は長いままなのか
昨今、働き方改革を中心に、時間生産性の改革が叫ばれているが、ムダな仕事を削減するチャレンジは何十年も前から繰り返されてきていることである。
求人媒体や、リサーチ会社が行う、「御社のムダな仕事は?」アンケートによると、
・繰り返しの作業
・アナログ、紙中心の書類まわし
・長い会議やミーティング
・無意味な残業
といった項目が常連だ。今回のテーマである「長い話」は「長い会議やミーティング」に相当する。「長い話=長い会議」の原因と対策について“識学的”観点から掘り下げ、みなさんと一緒に考えてみたい。ここでいう会議は、今はやりの1on1のようなものも含まれると考えて頂いてOKだ。これだけ、コミュニケーションツールが発展、進化しながら、なぜ会議は依然として長いままなのだろうか。
■過去トークか、未来トークか
みなさんの会社の会議の中身を思い出して頂きたい。内容は過去のものか未来のものか、その割合はどうか。
会議の長い会社は、「過去トーク」に大幅に時間を割いている可能性が高い。過去の話というのはおおむね「原因分析」であり、未達成事項やトラブル、クレームなどネガティブな問題に関するものが多い。5W・1Hといったように、問題に対して、誰が、どこで、なぜ不具合が生じているのか、いったいどのような方法をとってそうなったのか、が詳細に述べられることになる。
会議の内容が過去トークに終始することを経験的に知っている発表者たちは、入念にこの原因分析を練り上げ、会議に臨み、場合によっては会議に臨んだ時に事なきを得るための会議を事前に行ったりしている組織も散見される。これでは時間生産性を追及することはできない。
いやいや、何を言っている、原因分析こそがカイゼンの始まりではないか!!
ここまでの話だとこんな反論が出てきそうだ。原因分析が絶対悪という主張をしているのではない。原因分析“のみ”で会議を終わるな、ということが言いたいのだ。
■言い訳の機会を与えていないか
当然のことながら、変えられるのは未来のみであり、もう出てしまった結果(=事実)は変更不可である。よって、原因分析という大義のもと、ただひたすらに過去について議論することで価値は生まれない。
原因分析を踏まえて対策案を計画し、いつまでにどのような状態にもっていくのか、というコミットメントをセットで行わない限り、新たな価値は生まれない。もしみなさんの会社での会議が過去トークに終始しているならば、それは単に、発表者に「言い訳の機会」を提供しているに過ぎない。
“話を短く”するためには、もう出ちゃっている結果についての分析は当事者の責任として会議の場に来るまでには、ほぼ終わっている状態でスタートを切らなくてはならない。そのうえで会議の場は、「約束の場」として機能させなければならず、「じゃあ、どうするのか?」という未来側に視点をもった話にウェイトを割かなければならない。
このように長い会議は、過去トークから未来トークに軸足を移すことで圧倒的に短くすることができる。
■言い訳なのか課題認識なのかを見抜く
管理者のみなさんは、部下の言い訳と課題認識を識別できるだろうか。この紙一重の発言に悩まされている上司も多いのではないかと思う。前述の通り、原因分析に会話の中心が置かれている場合、この2つを見抜くことが困難となる。困難だからこそ管理者サイドは多くの質問をしなければならず会話が長くなる。ここでも未来視点の会話かどうかで課題認識かどうかを識別しなければならない。
2.○○という施策で1週間後の商談数を10とします
3.がんばったのですが、足りませんでしたあとは気合でがんばります
4.○○というツールを使用し、納期を3日短縮します
ここまで極端に表現すればわかりやすいと思うが、1、3のように未達状態を前提に部下が「引き続きがんばります」という場合、これはまったく課題認識としてセットされていない。ここで原因分析をいくら掘り下げても部下の意識上、言い訳状態のまま時間が経過することになる。
2、4は未来視点で行動変化とコミットメントを述べることで“約束”を行っているためこれらは課題認識といってよい。
つまり、未来視点の「じゃあどうする?」について具体的施策と期限、およびその期限時の状態を述べているならば、部下の意識は課題認識に向いている、ということになる。
■謝罪と原因分析はいらない
我々がサポートしている企業でも、未達成業務について、幹部が社長に脂汗を書きながら謝罪するシーンが繰り返されている組織があった。識学的アドバイスを行い「謝罪や原因分析は不要なので、差分をどのように埋めるかを必ず考えさえて報告するようにコミュニケーションの取り方を変えてください」とした。
幹部は、謝ってもその場を逃げ切ることができなくなったため、必死で対策を考えコミットメントをするという習慣がついたため、生産性が目に見えて向上した。
このように見てみると、性別差の特徴によって、話が長くなってしまうのではないことがわかる。原因は、視点の置き方、重視するポイント、ということになる。会議が長い会社、部下との会話が長くなってしまう管理者のみなさんは、未来側に「じゃあどうするの?」という視点をメインに据えてコミュニケーションをとってほしい。
特に部下とのコミュニケーションにおいては、対策が期限と状態でコミットされていることをもって、原因分析はすんでいると見なし、対策に整合性を感じない時のみ、原因分析の詳細を聞くという順番にすれば劇的に“話が短く”なるはずだ。
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識学 新規事業開発室 室長
1980年東京生まれ。02年 立教大学経済学部卒。15年グロービス経営大学院にて経営学研究科(MBA)修了。現東証1部のジェイエイシーリクルートメントにて12年間勤務し、主に幹部クラスの人材斡旋から企業の課題解決を提案。名古屋支店長や部長職を歴任し、30~50名の組織マネジメントに携わる。15年、識学と出会い、これまでの管理手法の過不足が明確になり、識学がさまざまな組織の課題解決になると確信し同社に参画。大阪営業部 部長を経て、現職。
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(識学 新規事業開発室 室長 冨樫 篤史 写真=iStock.com)
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