「全裸よりパジャマ」が日本人の眠りにいいワケ
プレジデントオンライン / 2019年9月26日 17時15分
Q. 全裸で寝ると健康になるってほんと?
■全裸で寝るより効果的なこと
残念ながら、「全裸で寝た場合と、寝巻きを着て寝た場合、どちらが睡眠(健康)にとって優位であるか」というエビデンスがないので、医学的にはお答えできません。
ただし、質の高い睡眠には「深部体温」が関係しています。深部体温とは、体の表面の温度である「皮膚体温」に対して、内臓など体の内部の体温のこと。これは通常、朝目覚める頃から上昇をはじめ、日中は高めのまま推移し、夜にかけて低くなる、という決まったリズムで変動しています。そして、私たちの体には、深部体温が低くなると眠くなり、昼夜の差が大きいほど眠りやすくなる、という仕組みが備わっています。「全裸で寝ると健康になる」という俗説は、この「深部体温の昼夜の差」に由来するものかもしれません。
深部体温の昼夜の差を大きくするためには、全裸で寝るより、規則正しく過ごすことをおすすめします。よい睡眠がとれない人は、夕方のピーク時になっても体温が上がらず、夜、布団に入る時間になっても体温が下がらない、深部体温のリズムが乱れた状態であると考えられます。深部体温のリズムには、「メラトニン」というホルモンが影響します。メラトニンは、睡眠時に多く分泌され、朝目覚めて太陽の光を浴びると、脳からの指令で分泌が止まります。しかし、現代の多くのビジネスパーソンは帰宅時間が遅く、寝る直前までスマホやPCを眺めて人工的な光(ブルーライト)を浴びているため、自然の光との関係が乱れがちです。ライフスタイルを見直して、睡眠の質の向上をはかりましょう。
■ウオーキングやストレッチなどの有酸素運動をするといい
もうひとつおすすめしたいのは、適度な運動です。デスクワーク中心のビジネスパーソンの多くは、慢性的な運動不足を感じているのではないでしょうか。そういう場合は、寝る2~3時間前に軽いウオーキングやストレッチなどの有酸素運動をするといいでしょう。このようにして一時的に体温を上げておくと、布団に入る頃には体温が下がり、自然と睡眠が促されます。ただし、あまり激しい運動をすると、脳が興奮して眠れなくなるので、クタクタになるまでの運動は避けてください。
また、比較データはありませんが、寝るときは全裸ではなく、やはり寝巻きを着たほうがいいでしょう。というのも、ここは高温多湿の日本です。私たちは睡眠中、冬でもペットボトル1本分程度の汗をかいています。そんな環境で全裸で寝れば、かいた汗が体の表面に残り、ムレによる不快感が寝返りを誘発。頻繁な寝返りは睡眠の妨げにつながります。そこで私が寝巻きにおすすめしているのは、肌触りがよく吸湿性に優れ、ある程度体幹を覆う「パジャマ」です。パジャマは体温を下げるためにかいた汗を吸って気化させるため、質の高い眠りを維持しやすいのです。
また、音楽を聴いたり、本を読んだりといった毎晩寝る前に行う習慣行動を「入眠儀式」といいますが、寝巻きに着替えることもそれにあたります。「寝る前にやるべきことをやった」という意識が、脳や体に「これから寝ます」という合図として伝わり、自然と睡眠スイッチに切り替わるのです。
▼日本人は、全裸よりもパジャマを着て寝たほうがいい
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医学博士・日本睡眠学会認定医
東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科統合呼吸器病学修了。公立総合病院睡眠センター長などを経て、2013年6月からRESM新横浜 睡眠・呼吸メディカルケアクリニック院長。
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(医学博士・日本睡眠学会認定医 白濱 龍太郎 構成=大高志帆 撮影=奥谷 仁)
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