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ゾウが立ったまま3時間睡眠で活動できるワケ

プレジデントオンライン / 2019年10月2日 17時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Oxana Medvedeva

人だけではなく、哺乳類や鳥類からより下等な動物まで、睡眠行動を持つことがわかってきた。『動物はいつから眠るようになったのか?』の著者で、分子生物学・分子遺伝学者の大島靖美氏(九州大学名誉教授)に、その睡眠の特徴について聞いた。

Q. トラの睡眠時間は15時間、キリンはたった5時間?

■動物の睡眠時間を決める重大要素

ライオンやトラの平均的な睡眠時間は15時間、キリンは4.6時間、野生のアフリカゾウは3.3時間といわれます。この差をもたらすのは、まず食性です。睡眠時間は、肉食動物、雑食動物、草食動物の順に短くなるのです。

肉類は栄養価(エネルギー量)が高いので、常にエサを探しまわる必要がありません。特に、ライオンやトラなど大型の肉食獣は生態系の頂点に君臨し周囲に敵がいないため、自然界でも仰向けで脚を広げ、のびのびと寝る姿が観察されています。

一方、大型草食動物のキリンやゾウは睡眠時間が短く、ほとんど立って寝ています。植物は栄養効果が低く、大量のエサを常に探して食べなければいけない。それと周囲に敵が多いことが、睡眠時間やスタイルを決定しているのです。エサを探す苦労も身の危険もない動物園では、インドゾウは5~6時間寝るという報告があります。しかし、立って寝る姿勢が大半であることには変化はありません。

■睡眠も進化していく

哺乳類と鳥類では、脳波のパターンによるレム睡眠が認められます。睡眠には、レム睡眠とノンレム睡眠の2種類があり、ノンレム睡眠はすべての動物が行っている眠りで、体や脳の機能を回復するためのものです。レム睡眠は、記憶、学習の強化に必要とされる眠りで、ヒトでは夢を見る眠りです。動物が夢を見るかはわかりませんが、高等動物になるほど生活も複雑になっていくため、睡眠も進化していくのでしょう。

また、その動物特有の睡眠進化もあります。イルカなど水棲の哺乳類は、泳ぎ続けるために、左右の脳を片方ずつ眠らせます。「半球睡眠」といって、渡り鳥もこの方法で飛び続けながら寝ています。

このように動物の睡眠行動を調べていくと、どの睡眠にも「恒常性の維持」というルール(行動学的基準)があることがわかります。つまり、睡眠不足だと寝溜めして取り戻そうとするのです。

このような研究はおもに飼育動物で行われており、ザリガニやショウジョウバエなどでも睡眠を妨げられると、その後の睡眠時間がいつもより増加します。

私は遺伝学者で、センチュウの研究をしていました。細胞数が1000個しかない原始的な生物ですが、それでも成長段階に応じて何度か「眠り」といえる行動を取り、それを妨げると次の睡眠が長くなります。

人間も含め、どんな動物でも睡眠行動を持つものは、睡眠不足になるとそれを解消しなければ生きていかれないのです。

▼ザリガニやハエも、睡眠不足を取り戻そうとする

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大島 靖美(おおしま・やすみ)
九州大学名誉教授
1940年、神奈川県生まれ。東京大学理学部生物化学科卒業、同大学院理学系研究科博士課程修了、理学博士。米国カーネギー発生学研究所博士研究員、九州大学理学部教授などを経て、九州大学名誉教授。専門は分子生物学、分子遺伝学。

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(九州大学名誉教授 大島 靖美 構成=南雲つぐみ)

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