橋下徹「小泉大臣は言うだけを卒業してほしい」

プレジデントオンライン / 2019年9月18日 11時15分

初閣議を終え、記念撮影する安倍晋三首相(手前中央)と第4次安倍再改造内閣の閣僚ら=2019年9月11日、首相官邸 - 写真=時事通信フォト

国民的人気の高い小泉進次郎衆議院議員がついに環境大臣として入閣した。小泉氏の人気は国民に寄り添う態度や発言によるところが大きいが、権限と責任を持つ立場になったこれからは、「国民に寄り添う」だけでは済まされない。現在の小泉氏と同じ38歳で大阪府知事に就任した経験を持つ橋下徹氏が、辛口のエールを贈る。プレジデント社の公式メールマガジン「橋下徹の『問題解決の授業』」(9月17日配信)から抜粋記事をお届けします。

■「小泉には負けへんぞ」という雰囲気が高まってほしい

9月11日、第4次安倍第2次改造内閣が発足した。注目の一人は38歳の小泉進次郎環境大臣。先日は、滝川クリステルさんとの結婚報道で日本中を賑わしたが、今回の入閣報道も日本中を賑わした。

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政治は小難しいことを考え、論じるよりも、官僚組織を動かし、反対の声を唱える者を説得し、メディアやインテリたちからの批判に耐え、世の中を動かしていかなければならないものだ。

加えて、どうしても意見が合わない政敵は、選挙によって政治の世界から追い出さなければならない。ほんとエネルギーがいるんだよ。

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それでエネルギーがなくなってくると、大胆なことにはだんだん挑戦できなくなってくる。「まあ、この辺でいいか」となっちゃうんだ。さらに、周囲と衝突するのも面倒くさくなってしまって、「自分の人生が良ければ、そこまで衝突しなくてもまあいいか」ともなってしまう。

だからこそ、政治家は若い方がいい。ただし、それなりの知恵と経験も必要だから、やっぱり40歳前後が一番いいんじゃないか。

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ゆえに、38歳の小泉大臣が誕生したことは、日本にとって大変有益なことだし、小泉さんがさらに首相を目指すことによって、若手国会議員(若手と言っても30代、40代)の心にも火がつき、「よっしゃ、俺もいっちょやってやろうか」「小泉には負けへんぞ」という雰囲気が高まれば、日本の政治も活気づく。

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■政治家小泉進次郎にしかできない改革を!

日本は三権分立の国である。立法=国会、行政=内閣、司法=裁判所。これら国権の中でも最高機関とされているのが国会であり(憲法41条)、選挙で選ばれた国会議員たちがそうした高い位置付けになるのは当然といえる。それだけ国会議員の任務は重要なのだ。

しかし現実には、内閣から出された予算や法律について、YES、NOの意見を示すことが国会議員の主な仕事となっている。

政権与党である自民党と公明党は、ほぼYESなので、内閣に対してはよいしょ質問が大半となる。他方、野党は内閣にNOなので、とにかく批判。さらに野党は内閣や政府(行政)の問題点を指摘するばかり。

このように国会議員は与野党含めて、自分たちでは実行しない。「意見を言うだけ」なんだよね。

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総理大臣はもちろん、大臣という内閣の一員になってこそ、初めて「実行できる」立場になる。

小泉さんも今、一国会議員の立場と、大臣の立場の違いを、強烈に感じているだろう。

これまでは、一国会議員として国民から拍手喝采を受けるようなことを「言って」いればよかった。自民党の議員を応援する選挙演説でも、その地元の方言や地元ネタを基に「しゃべって」いればよかった。何かあれば「現場に行き」、そこで人々と「話をすれば」よかった。

ところが、大臣という立場は、「実行」しなければならなくなった。

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そこで無責任ついでに言わせてもらえば、国民的人気が高い小泉環境大臣だからこそ、環境の領域で、政治家小泉進次郎にしかできない改革を実行して欲しいんだ。

■事態について全責任を負うのが「実行する」立場

「言うだけ」には責任は伴わない。ある意味、言いっ放し。世の中の事態がどうなろうが最終的には責任は負わない。新聞の社説やテレビのコメンテーター、学者などが、偉そうなことをどれだけ言おうが、何の責任もないので、これほど楽なことはない。僕が今、その立場。知事、市長のときと比べて、ほんと天国と地獄の差くらいに楽になったよ(笑)

国会議員も同じ。基本的には「言うだけ」。責任は負わない。

ところが、「実行する」立場は、事態について全ての責任を負う。大臣は、自分がやったことだけではなく、自分の所管領域の事態について全責任を負う。特に総理大臣となれば、世の中のあらゆる事態に全責任を負う。これは、ほんときつい。逆に、それだけの責任を負うからこそ権限も保有し、自分が腹を括れば世の中を動かすこともできる。これが、大臣、総理大臣というポジションだ。

地方の知事や市長も、地方政治における大臣のようなもの。自分が所管する地域のあらゆる事態に全責任を負わされる代わりに、権限も与えられる。その権限をどう使うかは、知事や市長次第である。

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政治家は、国民から猛反発を受けるようなことを実行してこそ意味がある。

だけど、そういうことを実行するのは面倒くさいんだよね。

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小泉さんは大臣就任あいさつで、環境省の職員に対して、「私を使って下さい」と述べたが、環境省の職員のみならず、日本国民がこの小泉さんを活用しなければならない。日本の難題について小泉さんを活用して乗り切っていかなければならないんだ。

そのためにも、小泉さんには、国民からの反発を避けて、自らの権限をフルに使わない政治家にはなって欲しくない。自らの権限をフルに使い、一部反発を受けながらでも難題を解決していく政治家になって欲しい。そして、その姿が日本の若手政治家に影響し、「俺も小泉さんに負けてられない!」と奮起するような事態を期待している。

■昭和時代のリーダー像はもう古い!

僕が大阪府知事や大阪市長に立候補する際には、自ら立候補したので、しっかりと府政、市政について勉強し、準備していた。

しかし小泉さんの場合には、安倍さんからの突如の任命だったので、環境大臣としての準備が十分にできていなかったと思う。ゆえに、まだ「自分はこれをやりたい」という小泉さん独自の環境ビジョンがきっちりと確立していないのだと思う。先ほども述べたが、環境省の職員に対して「私を使って欲しい」と訓示したのはその表れだ。

橋下 徹『トランプに学ぶ 現状打破の鉄則』(プレジデント社)

組織のトップに立った時に、部下に「自分を使って欲しい」と言うのは、昭和の時代の良きリーダー像だ。古い! これは38歳という年下の者が、年上の部下を持つ場合に、かつてはお手本とされたメッセージの出し方だ。そう言えば、民主党が政権を奪取した際の鳩山由紀夫首相も「自分はオーケストラの指揮者のような役割をしたい」と言っていた。現場をしっかり調整していく役割を担う、と。これらは、「自分は独断・横暴にやりませんよ」「部下の気持ちに『寄り添い』ますよ」というメッセージなのだろうが、これからの時代は、トップのリーダーシップが求められるので、このようなメッセージでは物足りない。

「自分は○○をやりたい。だからその実行のために力を貸して欲しい」

これが、これからの時代のリーダーが部下に発すべきメッセージだ。部下に使われるリーダーではなく、部下を使うリーダーでなければならない。

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(ここまでリード文を除き約2700字、メールマガジン全文は約9800字です)

※本稿は、公式メールマガジン《橋下徹の「問題解決の授業」》vol.168(9月17日配信)を一部抜粋し、加筆修正したものです。もっと読みたい方はメールマガジンで! 今号は《【38歳・小泉大臣(1)】これからは国民に「寄り添う」だけではダメ、権限をフルに使って課題を解決する政治家に!》特集です。

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橋下 徹(はしもと・とおる)
元大阪市長・元大阪府知事
1969年東京都生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、大阪弁護士会に弁護士登録。98年「橋下綜合法律事務所」を設立。TV番組などに出演して有名に。2008年大阪府知事に就任し、3年9カ月務める。11年12月、大阪市長。

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(元大阪市長・元大阪府知事 橋下 徹)

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