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格付けレーティング時代に「五つ星」になれる人

プレジデントオンライン / 2019年10月27日 11時15分

評価、格付けを意味するレーティング。店、物のほか個人も対象となる時代だ。 - taa/PIXTA=写真

■格付けレーティング時代、「五つ星」になれる人、なれない人

最近、いろいろな局面で、個人のレーティングの問題についての議論を見かけるようになった。

インターネット上で活動をする中で、さまざまな個人データを収集することが可能になり、人工知能による解析も進んでいる。そのような技術の発展自体は、これからの時代の「インフラ」として必要なことだろう。

時代の流れの中で、ある個人がどれくらい信用できるかという「信用スコア」をはじめ、さまざまなレーティングが用いられることは不可避なのかもしれない。

問題は、レーティングがどのように使われるかである。ある個人の経済活動、趣味嗜好、性格、能力などに関するレーティングが計算された後、どのように流通して企業や政府によって利用されるのか。この分野の趨勢が、これからの私たちの生き方に重大な影響を及ぼす。

世界の中の流れを見ると、ある個人の社会的評価のレーティングが生活のさまざまな分野に影響を及ぼすような国も出てきている。評価が低いと飛行機のチケットが買えないほか、住宅ローンが組めない、学費が借りられず大学に進めないなど、生きづらくなるようなケースもあると聞く。

日本では、そこまで個人のレーティングが影響力を持つ社会になるとは考えにくいが、いずれにせよ、評価がどのように計算され、それがどう利用されるのかということについては重大な関心を持たざるをえない。

1つはっきりしていることは、自分の生き方をさまざまなレーティングで評価することは、それを自身が認識して省みて、思考や行動に反映させる限りにおいては害よりも利益が多いということである。

■学校の「テスト」が生涯続くようなもの

認知科学においては、「テスト効果」というものが知られている。学習する際に、単に内容を繰り返し学ぶだけでなく、「テスト」をすることを取り入れると、学習効果が上がるのである。

テストを受けるということ、その結果のスコアが自分に戻ってくるということを意識することで、脳の働きがいわば「本気」になって、学習する内容がそれだけ強く定着すると考えられる。

学校のテストの思い出は、多くの人にとってほろ苦い。点数によって順位をつけられたり、偏差値に変換されたり、入試の合否にもつながっていく。いわば、個人の「レーティング」が学校という「社会」での自分の扱いに直結するという経験が共有されている。

個人のレーティングによって「生きやすさ」が変わっていく社会は、学校の「テスト」が生涯続くようなもので、そんなのは嫌だと感じる人が多いだろう。

発想を変えて、例えば、自分自身の生活スタイルがどれくらい健康か、そのレーティングが計算できるとしたら、そのスコアを自分の生き方を振り返って改善するためのきっかけにしたらどうだろう? 知識やスキル、能力もレーティング化することで、向上心につながり、よりよい仕事、生活に向けた改善に活かせるかもしれない。

そもそも、学校のテストの点数だって、本来は学習の達成度を見るはずのものが、いつの間にか人との比較のために使われるようになってしまった。

テスト効果ならぬ「レーティング効果」をうまく活用すれば生き方を改善できる。大切なのは、安易に人と比較するのをやめることである。

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茂木 健一郎(もぎ・けんいちろう)
脳科学者
1962年生まれ。東京大学理学部、法学部卒業後、同大学院理学系研究科修了。『脳と仮想』(新潮社)で第4回小林秀雄賞受賞。近著に『いつもパフォーマンスが高い人の 脳を自在に操る習慣』(日本実業出版社)。

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(脳科学者 茂木 健一郎)

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