世界の運用資産の3割を占めるESG投資入門
プレジデントオンライン / 2019年10月20日 6時15分
■社会に優しい「ESG投資」入門
投資判断といえば、まず重視されるのは企業が稼ぎ出す利益や資産などの財務情報。しかし昨今、財務諸表だけでは測りきれない「企業価値」に着目した投資のスタイルが、資産運用の常道になりつつある。
環境(Environment、環境問題への取り組み)、社会(Social、労働環境や人権問題などへの対応)、企業統治(Governance、経営の健全性や透明性など)――企業が長期的、持続的に成長するためにはこの3つの観点が欠かせないという考え方から、急速に拡大しているのが「ESG投資」だ。世界中の機関投資家、大手の投資会社や運用会社がこぞって、環境・社会・企業統治に配慮した企業経営を評価するESG投資に乗り出し、今や世界の運用資産の30%以上を集めているのだ。なぜこんなに盛り上がってきたのか。“ESGの伝道師”の異名を持つ、ニューラルCEOの夫馬賢治さんは説明する。
「一言で言えば危機感です。企業経営において環境だったり、社員や働き方の多様性だったり、途上国の人々との接し方だったり、ESGに配慮しなければ大きな経営リスクになることが強く認識されるようになった。投資家も『ここが、投資先の企業が生き残れるかどうかの分かれ道』という感覚があるので、ESGで経営リスクを見る動きが広がった。今や資産運用の常識は大きく変わり、ESG投資をやっていないほうが非常識という時代に突入しています」
先行したのは長期投資を志向する年金ファンドや生命保険会社などの機関投資家だという。運用資産150兆円を超える世界最大の年金基金である日本の年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)も、2017年にESG投資による日本株の運用を始めた。今春、花王などがESG戦略を発表するなど、日本企業の動きも加速している。感度が低い企業は長期的に見て投資リスクが高い、と評価される時代になったからだ。
■機関投資家の分散手法を、そのままコピー
「環境や社会への責任に対する感度が高い女性は少なくない。ESG的な観点をうまくキャッチして、今後生き残っていく会社を選ぶ力を、女性は多く持っていると思います」
![](https://president.jp/mwimgs/1/e/300/img_1eccbe3fc458fd19b0ef89e9106d3736183896.jpg)
ESG投資は女性と相性が良さそうだが、実際、どのように投資すればよいのか。個人がアクセスできるチャネルは主に2つ。1つは個別企業への投資。もう1つは、複数の企業に分散投資できる投資信託やETF(上場投資信託)だ。
「個別に企業の長期的な成長を見定めて投資するのは、非常に難易度が高いです。投資先企業をパッケージしてある投資信託をお勧めします」
投資先が分散されているということで、個別企業の突発的なリスクを軽減するメリットもある。では、優良なファンドはどのように選べばよいのか。たとえば東京証券取引所に上場している「ESG関連指数連動型ETF」は、「ダイワ上場投信-MSCI日本株女性活躍指数(WIN)」「One ETF ESG」など17銘柄(18年5月末時点)。
「ここ数年で出てきているESG関連の投資信託は、機関投資家などプロの投資家が使っている分散手法をそのままコピーして、個人投資家向けに売っているファンドです。一方で、古いファンドでもよいものもあります。ファンドの設置年や過去の実績を見ることが重要です」
今後もますます大事になってくるESGの観点。「環境や社会的なインパクトに配慮する企業を応援したい」、そんな価値観を反映できる投資先の選び方として注目だ。
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![](https://president.jp/mwimgs/d/c/80/img_dce69379e81728a03ac2fc50f340950111070.jpg)
ニューラルCEO
1980年、愛知県生まれ。東京大学卒業。米サンダーバード国際経営大学院でMBA取得。在学中に、現在の事業領域であるサステナビリティの分野に出合い、2013年にニューラル創業、CEOに就任。米ハーバード大学大学院在籍。
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ジャーナリスト
1946年、東京都生まれ。中央大学法学部卒業。編集プロダクションを経て、フリーライターとして活躍。週刊誌、月刊誌、書籍と幅広い舞台で、経営、ビジネス、人物、金融、技術など幅広い分野で活躍中。
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(ジャーナリスト 小川 剛 写真=iStock.com)
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