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たくさん眠れば「やせる」というのは本当なのか

プレジデントオンライン / 2019年10月14日 17時15分

※写真はイメージです(写真=iStock.com/ljubaphoto)

■なぜ「寝不足だと太る」のか?

睡眠時間と肥満の関係は少々複雑です。米ウィスコンシンの住民を対象とした調査で、睡眠時間とBMI(肥満度の指数)に興味深い関係があることがわかりました。睡眠時間を横軸、BMIを縦軸にしてグラフ化したところ、グラフは睡眠時間が平均的な人たちのBMIが低くなるU字型を示しました。つまり睡眠時間が短い人と長い人、両方に肥満傾向があることが判明したのです。

短時間睡眠で肥満になるメカニズムとして、美容雑誌などでよく喧伝されるのは、ホルモンの影響です。

じつは数日程度、睡眠不足になっただけでも、食欲を増進させる摂食ホルモンであるグレリンが増えて、逆に食欲を抑える摂食ホルモンのレプチンが減ります。徹夜明けにどんぶり飯が食べたくなるのも、睡眠不足による摂食ホルモンの変化が影響していると考えられています。

ただし、睡眠時間と摂食ホルモンの関係に関する実験は、せいぜい数日から1週間程度の期間でしか行われていません。人体には正常な状態を保とうとする恒常性維持機能が働くため、長期的には摂食ホルモンも元に戻るのではないかと考える研究者もいます。ですから、短時間睡眠の人で肥満傾向が大きいのは摂食ホルモンが犯人であるかどうかはまだわかりません。

■「長時間睡眠でも太る」のはなぜか

仮に摂食ホルモンが肥満に影響を与えていたとしても、主犯かどうかは別の話です。睡眠不足になると、交感神経系が過緊張になったり、体に炎症が起きたり、インスリンの分泌能が低下したりします。これらの変化も肥満に影響を与えている可能性があります。

「寝不足→摂食ホルモン変化→食欲増→肥満」はわかりやすいロジックなのでそればかり注目されますが、本当は他の要因のほうが強く影響しているかもしれない。要は、睡眠不足で太るメカニズムはまだわかっていないのです。

では、逆に長時間睡眠で太るのはなぜでしょうか。実はこちらは短時間睡眠による影響以上によくわかっていません。

長く寝て日中の運動量が少なければ、運動不足になって肥満になるのではないかというシンプルなロジックがまず考えられますが、よく考えてみると、そもそも肥満で体を動かすことが億劫だからベッドにいる時間が長くなったというように、因果関係が逆になっている可能性もあります。いずれにしても研究は進んでおらず、メカニズムは不明です。

■寝る前にカロリーを摂ると肥満リスクは高まる

U字型の両端、つまり短時間睡眠と長時間睡眠が肥満に影響を与えるメカニズムがまだわかっていない以上、「ダイエットしたいなら平均的な睡眠時間で眠るべきだ」と単純に言うこともできません。むしろ原因と結果は逆で、「適正な体重を維持できている人は結果的に標準的な睡眠時間(健康的な生活習慣)の人だった」だけの可能性もあります。

睡眠と肥満に関して何かアドバイスできることがあるとすれば、食事を摂る時間です。

寝る前に食事をすると小腹が満ちて眠りやすいという人もいますが、ダイエットしたいなら就寝前の食事は厳禁。よく言われていることですが、寝る前にカロリーを摂ると肥満リスクは高まります。私たちの実験でも、睡眠前3時間以内に脂質を摂る人はBMIが高いという結果が出ました。空腹のまま寝るのはつらいかもしれませんが、夕食や夜食を摂るタイミングと量には十分注意してください。

▼睡眠時間が長すぎても肥満になる傾向あり

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三島 和夫(みしま・かずお)
秋田大学大学院医学系研究科精神科学講座教授
国立精神・神経医療研究センター睡眠・覚醒障害研究部部長などを経て、2018年より現職。『朝型勤務がダメな理由 あなたの睡眠を改善する最新知識』など著書多数。

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(秋田大学大学院医学系研究科精神科学講座教授 三島 和夫 構成=村上 敬 写真=iStock.com)

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