古本マニアがどハマり"電子書籍の奥深き世界"
プレジデントオンライン / 2019年11月3日 11時15分
■10万円の古書が無料で読める!?
私が「明治娯楽物語」(明治30年代から大正時代ごろ、名もなき作者たちによって書かれた無数の小説)の魅力にとりつかれてから、10年くらいでしょうか。そんな私が主に活用しているのが「国立国会図書館デジタルコレクション」というウェブサイト。著作権の切れた絶版本・レア本が電子書籍で読み放題、しかもすべて無料。私のような読書好きにとっては夢のようなサービスです。
古本の価格設定基準は不明瞭で、内容の面白さと値段が一致しないこともしばしばあります。推理小説や探偵小説はファンが多いので、むやみに価格が吊り上げられていることもありますが、「デジタルコレクション」は無料なので、古本の市場価値を無視して自分が面白いと思う作品を自由気ままに拾い読みできるのが魅力ですね。
■電子書籍にもメリットがある
本は紙で読むのが一番という方もいらっしゃるかと思いますが、電子書籍にもメリットがあると思います。まず、たくさんの冊数を持ち歩けること。私はデバイスに2000冊以上をダウンロードして持ち歩いていますが、紙の本ではこれはできませんよね。それに、体への負担が軽い。クリックやスライドでページをめくれるので楽ですし、目が疲れてきたら字を大きくすることもできます。また、きれいな状態で読めるのも意外な利点。大正時代くらい古い紙の本になると、触るだけでかゆくなる場合もありますからね(笑)。
![](https://president.jp/mwimgs/1/c/300/img_1c0b7edef69847aedb10ba316eccbd73143951.jpg)
著作権がまだ切れていない作品は購入することにはなりますが、それでも電子書籍で読むメリットはあります。電子書籍化されるということは、それだけで面白い本である可能性が高く、“はずれ”を引く可能性が低いからです。
私はよく頭に浮かんだ適当な単語で検索をかけて、ヒットした作品を読み漁ったりしています。今の電子書店はリコメンド機能が充実していますが、関連するものばかり読んでいてもなんだか飽きてしまう。だから、私は偶然や他人の意思で決めてしまう方法が好きなんですよね。
この方法でアマゾンのKindle本などを検索すると、出版社から出されていない、いわゆる自費出版の電子書籍も見つかります。まだ人が見つけていない宝の原石が埋まっているかと思うと、なんだかワクワクしてしまうのは私だけでしょうか。
単に時代の流れで売れなくなったからということ以外に、利害関係の都合で発行ができなくなったなど、紙の本が絶版になる理由はさまざま。電子書籍は、そんな埋もれていった宝を発掘できる夢のようなツールなのです。
自己研鑽のために読書をするのも素晴らしいことですが、単純に趣味としての側面もあることを忘れてはいけないと思います。
私は前述のように、10年以上本の世界にどっぷり浸り、毎日たくさんの本を読んでいますが、本で人生が変わったことはありません(笑)。それくらいの気楽さで読書をしてみるのも、いいのではないでしょうか。
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▼こんなにあった! 電子書籍で読めるレア本・絶版本を探す方法
1. 「国立国会図書館デジタルコレクション」を利用する
「国立国会図書館デジタルコレクション」では、同館が保有するデジタル資料の本文画像を閲覧することができます。著作権保護期間が満了した作品や、著作権者の許諾を得た作品であれば、図書館に赴くことなく、パソコンやタブレットで読書が可能。会員登録も必要ないため、とても気軽に古書を楽しめます。
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2. 偶発的に思い浮かんだ単語で検索する
電子書籍サイトの検索窓に、思いついた適当な単語を入れて検索してみます。たとえば、「デジタルコレクション」で「絶食」と検索すると、『生命の洗濯』という作品がヒットします。これは犯罪者がキリスト教徒になって書いた手記なのですが、そういった通常は手に取らないような作品と出会えるのがこの方法の魅力です。
3. Amazonで利用する「高い順」で検索する
Amazonで適当なジャンル名で本を検索し、「価格の高い順」に並べ替えると、上位には数十万円もする高価な本が並ぶことも。そうしたプレミアがついた本は、絶版本やレア本である可能性大。タイトルを控え、ほかの電子書籍サイトで扱われていないか探してみましょう。どういった本がプレミア化するのかを知れるのも魅力です。
4. 電子書籍ストアBookLive!を活用する
電子書籍販売サイトBookLive!でも、入手が難しい書籍が電子化されていることがあります。「絶版」で検索すると本の紹介文にその旨が書かれている書籍が見つかりますし、サイト内を探索すると平凡社の「東洋文庫」シリーズなど、他の電子書籍サイトでは販売されていないレアものに出合えることもあります。
5. 「日本の古本屋」で探す
東京都古書籍商業協同組合が運営している「日本の古本屋」というサイトは、全国の古書店に置いてある古本を書名、著者名、出版社、刊行年、関連ワードなどから検索できるサービスです。ここで見つかる古本の多くは絶版本。このサイトでは紙の古本の購入しかできませんが、電子化されていれば読むことができます。
![](https://president.jp/mwimgs/d/2/300/img_d226742a67d66ba1e1c427e8fefd35bf116766.jpg)
6. 青空文庫を利用する
著作権の切れた作品を無料で読めるサービスとして有名な「青空文庫」。今も著作権が満了した作品の電子化作業がボランティアの手によって進められていて、2019年8月現在で約1万5000以上の作品が閲覧できるようになっています。テキスト形式ならデータが軽いので、多くの作品をダウンロードできるのがメリットです。
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■▼子ども向け入門書を電子で読むべき理由
新しく何かを学ぶ際の入門として、ジュニア向けの本はおすすめです。その分野のことが簡単にわかりやすく書いてあるので、大人だとあっという間に読めて概要がつかめます。
おすすめを2点挙げると、中川右介『歌舞伎一年生――チケットの買い方から観劇心得まで』(ちくまプリマー新書)。小難しいうんちくではなく、チケットの買い方や席の選び方など、初めての観劇に一歩踏み出すための実用的な知識が学べる本になっています。
次に、南野忠晴『正しいパンツのたたみ方――新しい家庭科勉強法』(岩波ジュニア新書)。表題のパンツのたたみ方をはじめ、「家族とは」「労働とは」など家庭科の基礎を総ざらいできる内容で、生活やライフプランについて改めて学ぶのにうってつけです。
こうしたジュニア向けの入門書も、やはり電子書籍で読むのがおすすめ。「大人がジュニア向けの本を買うのは気恥ずかしい」という方も電子書籍なら抵抗はないはずですし、こうした本は隙間時間にスルスルと読める内容なので、持ち運びが容易な電子書籍と相性がいいからです。
■▼びっくり!国会図書館の奇書・珍書
自著『「舞姫」の主人公をバンカラとアフリカ人がボコボコにする最高の小説の世界が明治に存在したので20万字くらいかけて紹介する本』(柏書房)で紹介した明治娯楽小説のほとんどは、「国立国会図書館デジタルコレクション」で読むことが可能です。
たとえば、弥次喜多とヴェルヌが悪魔合体した『宗教世界膝栗毛』。日本全国を踏破した弥次喜多が大砲で月旅行へ行こうとしますが、着陸したのは「無闇矢鱈」という名の星。そこの宿屋の亭主をキリストだと思い込んでバトルをけしかけたり、後から追って星に来たアメリカの科学者と低レベルな口喧嘩をしたりと、とりとめのない混沌としたストーリーの連続で物語は終わります。
また、個人的に一番好きなキャラクターが、『探偵実話 閻魔の彦』の主人公である閻魔の彦。無許可営業の売春宿を遊び歩いては、警察に通報するぞと脅して金を巻き上げるという徹底した「クズ男」なんです。
こんなふうに当時の書き手のアグレッシブさを体感できる明治娯楽小説は、純文学にはない人間くささがあって面白いですよ。
■▼戦前の忘れられた名作6選
![](https://president.jp/mwimgs/3/8/670/img_385197669a5ff70cab8ddac72c2d8a521677226.jpg)
■▼マニアが復刊を望んだ名作6選
![](https://president.jp/mwimgs/d/4/670/img_d46a05aea4573f781c1c32bae97553971867837.jpg)
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明治~大正時代の小説を追い続ける読書マニア。青空文庫を読みつくし、現在は国立国会図書館デジタルコレクションが主戦場。普段は「かたい仕事」に従事。
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(作家 山下 泰平 構成=万亀すぱえ)
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