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"夢に出てきた意外な人"に恋をするメカニズム

プレジデントオンライン / 2019年11月30日 17時15分

Getty Images=写真

■意外な人が夢に出てくる理由

夢に出てきた人のことが後々まで気になるという経験は、時として起こります。これを「もともと思いがあったから夢に出てきたのだ」と、自分でも気づかない深層心理の表れと考える人もいますが、心理学の見地から、夢に出てきた人を好きになるメカニズムについてご説明したいと思います。

まず、睡眠中に見る夢の役割についてですが、記憶の整理や定着のためだといわれています。私たちが直接的あるいは間接的に経験したことは、長期記憶に全部ストックされています。そして、一晩の眠りの間には、レム睡眠とノンレム睡眠が繰り返され、「夢を見る眠り」といわれるレム睡眠では、体は休んで動かないようになっていますが脳は比較的活性化しています。このとき脳は、起きている間にうまく処理できなかった情報や感情を整理し、記憶の棚のどこにしまうかカテゴリー分けをしたり、過去の記憶にアクセスしたりしています。

強い関心事や、いつも心の片隅にあるような事柄は、寝ている間も記憶の保存場所に何度もアクセスしているので、心に思っている人が夢に出てくるということは、確かにあるでしょう。たとえば、自分が憧れているアイドルや、俳優、アーティストが夢に出てくる場合がそれに当たります。

一方、ふだん特別の関心を払っていなかった意外な人が、夢の中に登場することもあります。これは、最近あった出来事で、脳が処理しようとしていた事柄との関連や類似――時代、集団、場面、色、数字、名前の音韻が同じなど――がトリガー(引き金)となって、長期記憶に保存されている中から引っ張り出された可能性があります。

■昔の恋人や若いアイドルが現れる場合

たとえば、学生時代の古い記憶を掘り起こすような出来事が日中にあると、当時自分が憧れていたアイドルやアーティストが夢に出てきたりする、というのはわかりやすい例です。

※写真はイメージです(写真=iStock.com/GeorgeRudy)

さらに、そのアーティストと名前の音韻が同じだとか、当時の学校名やサークル活動などと重なる点があったりして、まるで関係のない職場の部下や古い友人の姿や声が、夢に引っ張り出されてくることがあるのです。

すると、目が覚めたときに意外な人が夢に出てきたので気になります。「夢にまで見たのだから、自分はこの人を気にしているに違いない」という認知的なバイアスがかかり、ますます考えてしまいます。これが、「夢で見た人を好きになる」メカニズムだといえるでしょう。逆に「夢の中にまで出てきてあの人は苦手だな」と思う人もいます。どういうバイアスがかかるかはその人の考え方にもよるのです。

人によっては、何度も夢の中に架空の人物が出てきて、恋してしまうということもあります。これは記憶の整理の中でいくつもの異性像がミックスされて作られた理想像なのです。ついには、「出会うべき運命の人を夢に見た!」と予知夢のように思ってしまうことがあります。しかし、夢は常に、自分の頭の中に記憶したものを材料に、自分の脳が作り出しているので、未知なるものをお告げのように見る可能性は低いといえます。

40代、50代の中高年世代は、生涯発達の過程の中で、若さが失われていくという実感とともに「このままこの仕事をしていていいのか」「この相手でよかったのか」という人生の見直しがさまざまに起こる時期でもあります。

男性も女性も、昔の恋人や若いアイドルが夢に出てくる人はけっこういるのですが、浮気願望というよりも自分の中の「若さ」について考えるからこそ、夢に出てくるのだといえます。

■夢の中に異性の部下が出てくる

このように、夢は保存された情報がそのまま出る場合もあれば、いろいろな情報とミックスされて出てくる場合があります。

経営者的な立場に立つ人にとっては、仕事がうまくいくことが会社の業績だけでなく自分の生活にも直結するので、社員は家族のようなものです。大事にしながら育てなければいけないと思っていると、年齢や男女を問わず、社員の夢を見ることは多いでしょう。

たとえば、夢の中に異性の部下が出てくるような場合でも、「その部下を実は異性として意識していた」ということではなく、その部下が仕事で失敗しないか、あるいは自分がちゃんと育てていけているかが心配で夢に見てしまうケースも多いのです。「リーダーとして部下が心配なのだ」と気づくことができれば、実世界でも、親身になって指導するという具体的な行動として活かしていくこともできるでしょう。ぜひ夢を有効利用してみてください。

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松田 英子(まつだ・えいこ)
東洋大学社会学部社会心理学科教授
お茶の水女子大学大学院修了(博士・人文科学)。臨床心理士として活躍し、江戸川大学教授、放送大学大学院客員教授などを歴任。2015年から、東洋大学社会学部社会心理学科教授。著書に『夢と睡眠の心理学』『図解 心理学が見る見るわかる』など。

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(東洋大学社会学部社会心理学科教授 松田 英子 構成=南雲つぐみ)

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