「いい加減」を知ると体調が整えられる理由
プレジデントオンライン / 2019年10月3日 11時15分
■高揚感に満たされる秋だからこそ、冬への準備は必須
10月8日~10月22日は寒露で、露が冷たく感じる時期を指します。空気は澄み、夜空にさえざえと月が明るみ、秋の夜長に虫の声が大きく響きわたるのを聞くと、そろそろ秋の終わりを感じる頃となります。
この時期は実りの季節でもあり、今までの成果がようやく実を結び、周りからも注目されるようになることで何事にも充実感を感じるでしょう。一種の高揚感や幸福感により、とても気分が良い状態であるため、何事にもやる気がみなぎります。だからこそ、運動や読書などで自己啓発を進め、冬に向けて心身を鍛え、寒い季節への準備を始めましょう。ただし、活動的なためにエネルギー消費も多く、食欲が増進しがち。食べすぎはさまざまな病気の引き金になることから、十分注意が必要です。
朝夕の気温差が大きくなり、露が冷たく感じはじめると秋が深まり、いよいよ冬の始まりです。
季節の始まりの初候は、雁(ガン)が北から渡ってきて、冬の到来を告げるとともに、菊が見頃を迎えます。また秋の味覚のシメジやシシャモが旬を迎えます。季節が進む次候では菊の花が満開になり、「菊晴(きくば)れ」と呼ばれる、さわやかな秋晴れの日が続きます。ちょうどその頃に、ハタハタや栗なども旬を迎えます。
終わりである末候には、キリギリスの声がとどろいて秋の終わりを告げるとともに、真鶴(マナヅル)が北の大地から日本へと渡ってきて、柿やサバが旬を迎えます。
■「いい加減」を知ることで、カラダの調子が整えられる
寒露は、植物を見てもわかるように春から夏にかけて育んできたものが実となり、収穫できる時期です。人も同様で、春から培ってきたことがようやく実を結び、人から注目され、高揚感を得られやすい時期なのです。高揚感と食欲の秋が重なって食べすぎることで体重が増えたり、運動の秋ということで、動きすぎて関節を痛めたりしてしまいます。また、疲れすぎることで免疫機能が低下し、風邪を引いたり、膀胱炎を起こしたり、女性はホルモンのバランスが良くないため生理痛が悪化したりします。
人から注目され高揚感を得ることは、次への原動力となりますが、ここで頑張りすぎると後でカラダを壊すことになるため、何事も無理をせずに「いい加減」を保つことが大切です。
高揚感は人を動かす原動力になりますが、頑張りすぎるとカラダを壊し、最終的にはココロの状態が不安定になるため、高まる気持ちをセーブできるように深呼吸や瞑想などで工夫することも必要です。
また、周りが高揚感に浸っているのに自分が高揚感を得られていないと、周囲から取り残された気持ちになり、気分が落ち込むことも。高揚感を得られにくい状態になっていることもあるため、ココロのバランスだけでなく、カラダのバランスを整えるようにすることが大切です。そんな時こそ、さまざまな本を読み、ココロの栄養を蓄えることをお勧めします。
■カラダ養生は、食事と運動。ココロの養生は、日記がお勧め
「カラダとココロの養生法」
幸福感は脳内モルヒネと呼ばれる物質がつくり出すと考えられています。脳内モルヒネをつくるには、たくさんの種類のアミノ酸が必要です。アミノ酸には自分でつくることのできるものと、自分ではつくることのできない必須アミノ酸があります。バランスの良い食事を摂らないと必須アミノ酸が足りなくなり、脳内モルヒネをつくり出せないため、幸福感が得られにくいと言われています。幸福感を感じにくい人は、食事の内容を見直すようにしましょう。
特に、シラスや鰹節に含まれるフェニルアラニンや豆類に含まれるトリプトファンはとても大切な必須アミノ酸であるため、積極的に摂取するようにしましょう。また、牛乳(カソモルフィン)、ホウレンソウ(グルテン・ルビスコリン)には脳内モルヒネの合成に必要な物質が多く含まれていることから、これらの食品も摂るよう心がけましょう。
ココロを整えるには、日誌をつけることがお勧めです。日誌に1日の生活習慣とともに、その時の感情や事実をまとめて、自分自身を客観的に見つめ直してみましょう。メンタルが弱くなっている人は、起きた出来事やストレスを「悲観的」にとらえ、その悪い側面に注目して「客観性」を失っています。大切なのは、感情ではなく事実であり、その「事実の明るい側面を見る(楽観的に解釈する)」こと。メンタルを強くするには、「事実」と「感情」を分けてとらえることが重要なのです。
「食養生」
この季節の旬は栗や柿です。栗はエネルギー源となる炭水化物が豊富であるため、脳を活性化する働きがあります。またビタミンCが豊富で、ストレスの軽減効果があるとともに、マンガンや銅が多いため、骨を丈夫に保ち、貧血予防や健康を維持するにも効果的です。一方、柿は炎症を抑える作用があるため、風邪や胃腸炎の予防に効果的。鎮静効果もあるためリラクゼーション効果があります。また、収れん作用があるために皮膚や粘膜を強める働きもあります。
「お勧めのツボ」
寒露を乗りきるためのお勧めのツボは、曲池(きょくち)です(図表1)。曲池はヒジを曲げるとできるシワの外端(一番外側)にあります。このツボは、胃腸の機能やホルモンバランスを整え、血流を促進する作用があります。イタ気持ちいい程度に10秒程圧迫し、5秒空けて5回程度刺激するといいでしょう。
■必須アミノ酸とゆるめる運動で筋肉を鍛え、春に備えよう
【タイプ別・カラダの鍛え方】
この時期は春から夏にかけて心がけてきたことが実を結び、何らかの成果を受け取る時期です。その一方、今から来年の春に向けて、次の種を植えるためにカラダを鍛えることが大切です。春に向けてカラダを鍛え、次年度の準備を始めましょう。
一生懸命頑張りすぎの頑張り屋さんタイプの人は、動的ストレッチでカラダを適度に緩めながら鍛えるようにしましょう。お勧めは、ウォーキングランジという動的ストレッチ(図表2)。上半身を床と垂直を保ったまま、片足を大きく前に踏み出し、前に出した足のヒザが直角になるまでカラダを沈み込ませます。元の姿勢に戻って、反対の足を前に出し、同様にカラダを沈み込ませます。この動作を1日の活動が始まる前に両足交互に16回程度行いましょう。
生活リズムが乱れることによっておこる生活習慣タイプの人は、筋肉の原料となるタンパク質を多く摂ることが大切です。タンパク質には植物性と動物性があり、植物性タンパク質は脂肪が少なくダイエット向きですが、食事でしか摂取することのできない必須アミノ酸が豊富に含まれるのは動物性タンパク質。秋は次の季節に向けてカラダを整え、つくる時期であるため、動物性タンパク質を積極的に摂取するように心がけましょう。特に、牛肉、豚肉、鶏肉などの肉類や魚介類(貝類と甲殻類以外)は、必須アミノ酸であるロイシン、イソロイシン、リジン、フェニルアラニン、トリプトファン、メチオニン、スレオニン、バリンの8つを含有しアミノ酸スコアは100。それに対し、植物性タンパク質の大豆のスコアは86と少なく、特に、アレルギーのもとになるヒスタミン濃度を低下させ、利尿機能にも関与するメチオニンが少ないことが知られています。メチオニンは、むくみや動脈硬化の予防にも役立つ成分でもあります。
年齢による加齢タイプの人は、全身の筋肉をトレーニングできるノルディックウォーキングがお勧めです。ノルディックウォーキングはポールを使って全身を使いながら姿勢を伸ばして歩くため、全身の筋肉を使ってカラダを鍛えることができます。前にあるポールが後ろに下がる瞬間に少しだけ力を入れると、より全身の筋肉を使うことができて効果的です。さらにノルディックウォーキングは、エネルギー消費が普通のウォーキングより20%も増加することが知られています。肺活量を鍛えたい場合は、勾配がある山道などを選ぶとより効果的です。平地でも山道でもいろいろなところで行えるので、1日1回5分ほど行うようにしましょう。余裕のある人は体幹をひねりながら行うと、さらに効果がアップします(図表3)。
なお、自分のタイプに関しては、カラダの状態を入れるだけで簡単にわかる無料アプリYOMOGIを利用すると便利です。月に1回(毎月10日まで)入力すると、あなたに合ったその月の養生法が送られてきます。
寒露は、秋から冬へと本格的に移り変わる季節。今年1年頑張ってきた成果を噛(か)みしめながらも、来年度に向けてカラダを鍛える時期です。何をするにもカラダが資本。そのため、筋肉を鍛え、カラダの土台を整えることが大切です。
食事もおいしく、運動もしやすい季節です。動物性タンパク質をしっかり食べ、全身を動かす運動をすることがなによりも大切です。
「秋分の特徴」
●心身の症状
カラダ:ホルモンバランスの乱れ、皮膚の症状
ココロ:気持ちが充実する
●季節に多い症状
躁状態
●心身の養生法
バランスのよい食事、日誌でココロを整理
●食養生に効く食材
栗・柿
●ツボ
曲池(きょくち)
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明治国際医療大学大学院/養生学寄付講座教授
鍼灸学医学博士・全日本鍼灸学会理事。同大学附属鍼灸センター長。トリガーポイント鍼治療の第一人者であり、慢性痛の緩和治療に精通。現代女性のための、東洋医学に基づく心身のセルフケアも指導している。
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(明治国際医療大学大学院/養生学寄付講座教授 伊藤 和憲 写真=iStock.com)
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