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「イチロー」と同じ精神でやれば店は繁盛する

プレジデントオンライン / 2019年10月7日 11時15分

ネッツトヨタ南国本店のショールーム。ゆったりした空間で、来場者は商談だけでなく、時には好きに時間を過ごすことができる。これも満足度が高い一因だ。

いい会社とはいい人が集まっている会社——それを体現しているのが、高知市のディーラー、ネッツトヨタ南国だ。「全社員が勝利者になる」ことを最優先し、顧客満足度の高いサービスを実現、業績も好調に推移している。個性的なこの会社の歩みと経営哲学について、創業以来経営に携わってきた横田英毅取締役相談役に話を聞いた。3回にわたって掘り下げていく。

■「お客様を大切にする」サービスとは

——ネッツトヨタ南国は社員の幸せを大切にする会社としても、お客様満足度の高いサービスをしている会社としても注目され続けています。まずは会社の歩みから聞かせてください。

【横田】ネッツトヨタ南国は、1980年にトヨタビスタ高知としてスタートしました。トヨタ5番目の販売チャネル「ビスタ店」66社が一斉に立ち上がった、その1つです。愛媛、徳島、高知など四国を中心にトヨタ系ディーラーなどを運営している西山グループが母体になっています。その後、オート店(98年からネッツ店)とビスタ店が統合したため、2004年からネッツトヨタ南国に改称して、現在に至っています。本社を含めて3店舗、スタッフ約140人でやっています。

新しい販売チャネル「ビスタ店」はいくつかの使命を帯びていました。その一つが新しい販売方法への挑戦です。当時、昼間に訪問しても家に誰もいないことが多く、クルマが1家に1台は当たり前になっていました。そんな状況でお客様に無理やりアプローチして嫌がられるよりも、クルマを買いたいお客様にディーラーを訪ねてもらうようにしよう。来店型の販売スタイルへの転換です。もう一つの使命が、日曜日の営業です。1980年当時、ディーラーはどこも日曜は休みでした。日曜営業体制に踏み出す、その先陣を担うことになったのです。

週末には来場者が楽しめるよう、さまざまなイベントを開催。正月には餅つきや和服でのもてなしのイベントも。

■名物となった週末のイベント

——新しいチャレンジに対して、反応はどうだったのでしょうか。

【横田】日曜営業、来店型のディーラーとして始まりましたが、普通にオープンしていてもお客様はやってきません。そこでお客様にきてもらうために、毎週のようにイベントをやりました。いまでは週末のイベントは恒例になっています。たとえば1月なら餅つき大会や女性スタッフが着物でお迎えするイベントをやったり、屋外イベントの「カーオリエンテーリング」などは毎年続いています。新車発表のイベントのときには、ストーリー性のある独自の演出をします。演じるのも当社の若手スタッフです。営業だけでなく、メカニックのスタッフも参加し、新車の性能などを丁寧に細かく説明します。

——来店型のディーラーを成功させるために、ほかにどんな工夫をしたのでしょうか。

【横田】まず、一流ホテルのロビーを思わせるショールームにし、ゆったりとした空間で商談をしやすくしました。車はすべて外に展示。試乗車は60台くらい用意します。すぐに買っていただけるかどうかを5分以内で見極め、そうでないお客様からは離れなさい、と指導しているディーラーもありますが、われわれはすぐにお買い求めにならないお客様を大切にし、長いおつきあいをします。

——お客様がたくさん訪ねてくるようになったのはいつ頃からですか。

【横田】スタートした当時は年間の来場者数が1万人くらいでした。10周年の頃に3万人前後になり、20周年をちょっとすぎたときに5万人を超えて、10万人台になったのが30周年の頃です。来場者がずうっと前年を上回ってきましたが、数年前に年間12万人くらいになったところで上限としました。週末に1日300~500人くらいの方が来店されるわけですが、これ以上の人数になると、行き届いた対応ができなくなってしまうからです。

ネッツトヨタ南国来場者数
ネッツトヨタ南国の年間来場者数は、創業時の1万人から右肩上がりで増え続けてきた。最近は対応のキャパを考慮し、12万人を上限としている。
メンテナンススペースは整然とし、作業が丁寧になされている。ささいなことにも手を抜かい精神はここでも貫かれている。

■ささいなことにも手を抜かない

——お客様が増えたうえ、お客様満足度全国ナンバーワンのディーラーとしても注目されました。

【横田】1980年の発足当初からお客様の満足ということを意識して、取り組んできました。

メーカーのトヨタがお客様満足度の調査を始めたのが1999年です。お客様満足度の指数が、他のディーラーを圧倒的に引き離している状態が10年間くらい続いたでしょうか。その後、他のディーラーもお客様満足度向上に取り組むようになったので、現在はトップグループの1社という位置づけですが、相談のしやすさ、担当営業の接客マナー、点検・整備の意向、待合スペースの快適さなどは依然として高いスコアを維持しています。

このような状態を続けることができているのは、創業以来「ささいなことにも手を抜かない」という精神が脈々と流れているからです。社訓にこう謳(うた)っています。「当たり前のことを人並みはずれた熱心さで実行すること。これが凡人と非凡人の違いである」。これが他社との微妙な差を広げていく力となるんです。野球のイチロー選手が「小さなことを積み重ねることが、とんでもないところに行くただ一つの道」と何度も言っていますけれど、まさにその通りです。

——ところで、2つ目の販売拠点を出したのは25年経ってからですね。現在でも販売拠点は3つです。これには理由があるのでしょうか。

【横田】高知県の事業規模ですと、開業して4、5年の間に5拠点くらいつくるのが業界の標準です。たとえば、ネッツトヨタ南国の本社からほど近いトヨタ系販売店は、高知県内に9拠点を構えています。

ネッツトヨタ南国にも立ち上がってまもなく、メーカーから2番目の拠点づくりの打診がありました。提案があった場所は、高知県で高知市の次に大きい都市の一つである中村市(現在の四万十市)です。

面積が香川県と同じくらいある広い地域で、人口は3万5000人、高知市からは車で約2時間の場所に位置します。

もしその地域に2番目の拠点を出せば、月10台くらいは売れるでしょう。しかし、そのうち7台くらいは他のトヨタ系列ディーラーから買っているお客様の購入分。拠点を出したことによる純増は3台程度です。そのために新規に投資をし、人を採用したり、高知市にいる社員を転勤させないといけない。利益が多少上がったとしても、売り上げに比例して上がらなかったら、社員を余分に採用した分、昇級や賞与に響いてきます。また、われわれが掲げる社会貢献として、お客様を幸せにする、次がビジネスパートナーのメーカーを幸せにする、ということがあります。販売拠点をつくっても、月の販売純増が数台しかなく、競争が激しくなった分値引きが大きくなって利益が減ってしまう。これではメーカーに貢献することにはなりません。そういうことを総合的に判断して、拠点づくりよりも本社の販売を増やすことを考えました。

——メーカーのトヨタはそれで納得したのですか。

【横田】こちらの考えを伝えて、話し合いを続けました。担当者が2年で変わるので、新しい担当になったらまた同じようにこちらの考えを伝える、それを繰り返してきました。

——そう考えていた横田さんが2つ目の拠点を出すことにしたきっかけは?

【横田】創業時の1980年から私が採用を担当していましたが、8年目に採用した社員が店長を任せても大丈夫というところまで育ってきました。それで高知市内に2番目の拠点を出すことにしたのです。それが2005年、創業25年目のことです。そのときに店長に抜擢したスタッフが今は社長になっています。

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横田 英毅(よこた・ひでき)
ネッツトヨタ南国相談役、ビスタワークス研究所顧問
1943年生まれ。日本大学理工学部卒業後、カルフォニアシティカレッジに留学。西山グループ系列の宇治電化化学工業、四国車体工業を経て、1980年トヨタビスタ高知発足と同時に副社長に就任、87年代表取締役社長。2007年代表取締役会長、10年取締役相談役。1917年から続く西山グループの資本家の一員として、愛媛トヨタ自動車の代表取締役も務める。著書『会社の目的は利益じゃない』。DVD『横田英毅のこう思う』。横田さんの経営哲学を解説した著書として『「教えないから人が育つ」横田英毅のリーダー学』がある。

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(ネッツトヨタ南国相談役、ビスタワークス研究所顧問 横田 英毅 構成=PRESIDENT経営者カレッジ事務局 撮影=小川 聡)

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