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経営破綻の体験から学んだ「企業再生の鉄則」

プレジデントオンライン / 2019年10月9日 11時15分

ロイヤルHD4つの事業の柱が外食、コントラクト、機内食、ホテルだ。

ファミリーレストラン「ロイヤルホスト」をはじめ、「天丼てんや」「リッチモンドホテル」などを展開するロイヤルホールディングスは、リーマンショック後に業績が低迷していたが、その後業績を回復し、いまは堅調な経営が続いている。長期的視点でグループ事業を展開する戦略に転換したからだ。それを主導してきたのが菊地唯夫会長である。経営改革をどう進めてきたのか、菊地会長に話を聞いた。2回にわたって掲載する。

■なぜ持続的成長を目指すのか

——ロイヤルホールディングス(以下ロイヤルHD)の歩みと事業内容について教えてください。

【菊地】ロイヤルは1951年に福岡で機内食搭載と喫茶営業で創業し、ファミリーレストランの「ロイヤルホスト」を中心に外食事業を展開してきて、私が入社した翌年の2005年にホールディングス制に移行しました。現在、ロイヤルHDは、4つの事業を柱に展開しています。第1がファミリーレストラン「ロイヤルホスト」「天丼てんや」などの外食事業、第2が空港ターミナルビルや病院などの飲食・物販施設の展開を受託するコントラクト事業、第3が機内食事業、そして第4がホテル事業です。

——ロイヤルHDの事業展開において、菊地会長が心がけていること、基本方針としていることは何ですか?

【菊地】現代の経営戦略において最も大切なのは、サスティナビリティ(持続的成長)だと思っています。今後日本は、人口が大幅に減少する時代に本格突入しますから、市場が縮小しても持続的に成長できるビジネスモデルをつくっていかなければなりません。また、ファイナンスの教科書には「企業価値とは、その企業が将来生み出すキャッシュフローの現在価値の総和である」という言葉が必ず出てきますが、この企業価値、そして企業の存在意義も、経営の基本に考えていることです。

——菊地会長がサスティナビリティ、持続的成長重視の経営をしているのは、昨今の時代背景以外にも理由がありますか?

【菊地】私が以前勤めていた日本債券信用銀行(日債銀)が1998年に経営破綻したことが大きく影響しています。企業の破綻というのは、いろんなところに影響を与えてしまう。例えば、公的管理となると株価はゼロになってしまいますから、当然、株主は全損です。また従業員も、破綻によって将来の見通しがまったく立たなくなってしまいました。さらにお金を預けていただいていたお客様や融資先のお客様にも多大なご迷惑をおかけしてしまった。こうした事態を目の当たりにした恐ろしさが、「企業にとって最も大切なのは持続的成長だ」という思いを深く胸に刻みつけることになったのです。では、そのサスティナビリティを担保するものは何かといえば、「企業の存在意義」です。企業の一丁目一番地といえる基本の事業を世の中から常に必要とされるように維持し、さらには変革していかないといけない。この存在意義を大切にしつつ、持続的な成長を図っていく、ということです。

天丼てんやの海外FC1号店。昨今は東アジア、東南アジアでの展開を進めている。

■外食冬の時代をどう生き抜くか

——「私たちの会社は何のために存在するのか」を、常に問い続けるということですね。

【菊地】そうです。1956年に制定されたロイヤルの経営基本理念には、こうあります。「お客様から代金をいただくからには、食品は美味しくなければならない。調理・製造も取扱いも衛生的でなければならない。サービス・販売は、お客様の心を楽しませ、社会を明るくするものでなければならない。以上のつとめを果す報酬として、正当な利潤を得られ、ロイヤルも私共も、永遠に繁栄する」と。まさしくロイヤルの存在意義です。店のサービスレベルが低下して、地域に必要とされなくなってしまったら、ロイヤルの存在価値は失われてしまう。これは不断の努力を重ねてはじめて維持できるものです。

——日債銀が経営破綻した後、外資系のドイツ証券に転じ、2004年に当時のロイヤルに就職されました。

【菊地】ロイヤルにいた日債銀OBに「手伝ってくれないか」と声をかけられたのがきっかけです。私にとっては畑違いの業界への転身でしたが、銀行・証券の仕事を通じて培った自分の経験、ファイナンスの知識を、事業会社の経営に役立てたい、という思いがありました。また、当時、ロイヤルの創業者・江頭匡一が実質的に引退し、カリスマがいた会社から普通の会社へと展開していくので力を貸してほしい、と請われたことも、転職へと心が動いた理由です。

——初めてロイヤルという会社を見たとき、どんな印象を持ちましたか?

【菊地】強烈なリーダーシップを持つ創業者のいた会社らしくトップダウンで組織が動いていました。その一方で、従業員のお客様に対するコミットメントが強くて、すごく真面目な社風だな、とも感じました。例えば、オフィスのトイレに洗面台がありますよね、そこが少しでも濡れていたら、必ず従業員が拭いている。すべての従業員が当然のようにそうしているんです。これは、この会社が持っている素晴らしい文化だと思います。

——入社後は総合企画部長として事業計画などを担当した後、経営状況が厳しいなか、菊地さんはロイヤルHDの社長に就任されました。

【菊地】リーマンショックの影響などで2008年、2009年の2年連続最終赤字となっていました。第一の課題は、赤字からの脱却です。国内の外食産業は冬の時代を迎え、「ロイヤルホスト」も既存店売上高が前年を下回り続けていました。このまま推移したのでは、会社の経営が立ち行かなくなりかねない。もう、日債銀の破綻のような体験はしたくないし、社員を同じ目に遭わせたくないという危機感がありました。

そして第二は、社内に存在する3つの壁を取り払うこと。3つの壁とは「経営と現場の壁」「営業部門と管理部門の壁」「各事業会社間の壁」です。ロイヤルHDは事業の特性上、全国に800もの店舗や事業所があって、たとえば本部から現場へ一方向の通達というコミュニケーションになりがちです。これでは意識を統一することも、会社の方向性を徹底することも難しい。改革を進めるには、トップである私が率先して意識を変え、アクションを起こすことにしたのです。

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菊地 唯夫(きくち・ただお)
日本フードサービス協会会長・ロイヤルホールディングス会長兼CEO
1965年神奈川県横浜市生まれ。88年早稲田大学卒業後、日本債券信用銀行(現あおぞら銀行)入行。2000年ドイツ証券を経て、2004年ロイヤル(現ロイヤルホールディングス)入社。07年取締役総合企画部長。10年社長、16年に会長兼CEO。19年から現職。16年~18年日本フードサービス協会会長。

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(日本フードサービス協会会長・ロイヤルホールディングス会長兼CEO 菊地 唯夫 文=梅澤 聡 撮影=小川 聡(菊地唯夫氏))

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