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金持ちが遺伝しなかったビンボー芸人の言い訳

プレジデントオンライン / 2019年11月1日 11時15分

お笑い芸人 中山功太(Ⓒ2010関西テレビ放送/フジテレビジョン/吉本興業)

人生イージーモードだったはずが……。裕福に生まれたのに貧乏になってしまった人は一体何を思うのか。金持ちが遺伝しなかった芸人が数奇な人生を語る。

■豪邸、誘拐、帝王学 金持ち息子の生活

金持ちに生まれ、死ぬまで金持ちだった人ってどれぐらいいるのかな。裕福な家に生まれ、現在貧乏生活をしているボクはそう思います。

ボクは吉本のピン芸人で、現在39歳。今は3畳の部屋に暮らしていますが、生まれた家はとても裕福でした。

ボクは大阪市住之江区出身。戦後、祖父が工場を立ち上げ、父親が会社を継ぐと、バブルの波に乗って会社は成長。ソファベッドの製造販売では、近畿シェアNo.1にまでなりました。

ボクが5歳のころ、父親が建てた家は4階建て。間取りは27LDKKKの大豪邸です。ピンポンが鳴っても、外に出るまで2~3分はかかります。とにかく広い家でした。「床下に白蛇がいたら縁起がいい」と聞きますが、調べてみたら、白蛇が3匹ギュッと集まっていたこともありました。

お坊ちゃんとして生まれたボクは、とにかく甘やかされました。欲しいものは何でも買ってもらえましたし、小さいころから1万円のお小遣いをもらっていました。というのも、実はボク、誘拐されたことがあるんです。幼稚園から帰ってきたボクを、ハンチングに黒いサングラスの男が、かっさらっていきました。

車に乗せられたところで、近所の人が助けてくれ、事なきを得ましたが。それもあってか、父はボクのことを特に心配していました。遊びにきた友達を、不審に思ったのか追い出したこともありました。余談ですが、父親も海外で誘拐されたことがあります。親子2代で誘拐。それくらい大きい会社だったんですよね。

父親からは「帝王学」を教え込まれました。

ある日、父親とファストフード店に行ったときのこと。ボクに1万円札を渡して「みんなが食べられそうなもん、買ってこい」と言いました。1万円札をポケットに入れて、車から降りたのですが、いざお店に行くと、さっき受け取ったはずの1万円札がない。どこを捜してもないから、車に戻って「お父さんごめん。お金を失くした」と言いました。すると、また1万円札を渡してくれました。

ところが、あとから父親に聞くと、ボクが車から降りたら、すぐにお金を落としたらしいんです。そして、浮浪者の人が拾っていったと。これを見ていた父親が言いました。「落とした時点でお前の負け。拾った人はその時点で勝ちだ」と。そして「ただお前は、金を拾う側じゃない。拾われる側にならなあかん」と。

一時は隆盛を誇った会社ですが、ボクが中3のときに倒産しました。バブル崩壊など、いろいろ不運が続いたんですよね。

■生活レベルを下げるのは難しい

高校を卒業したボクは、芸人を目指して吉本総合芸能学院(NSC)に進学。下積み時代も、バイトをせずに実家暮らしだったので、ありがたいことに芸事に専念できました。

デビューしたのち、仕事も順調に増えていきました。芸人は、月収10万円を超えるのがまず1つの目標です。それを超えたときが一番嬉しかったですね。そこから2008年まで、30万、40万、50万という感じで、ちょっとずつ増えていった。NHK大阪の番組など、レギュラー番組も数本持っていた時期もありました。09年にはピン芸人の日本一を決める「R-1ぐらんぷり」で優勝。当時の最高月収は200万円くらいでしょうか。ギャラのほとんどは、後輩芸人におごることに使っていました。

そこから、10年4月に東京進出を図りますが、タイミングが遅かった。初めの月から、仕事は舞台数回のみ。テレビはなかったです。当たり前なんですけどね。読みが甘かった。

写真=iStock.com/dobok
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/dobok

貯金もほとんどありませんでしたが、東京で最初に借りた部屋は、家賃20万円のタワーマンション。仕事はほとんどないのに、芸人仲間と毎日飲んだり、焼き肉や寿司屋に行ったり。大阪と変わらない生活をしていました。1度上げた生活レベルは、下げることがとても難しい。9カ月でお金がなくなりました。

金持ちは遺伝しませんが、「金遣い」は遺伝するなとつくづく思います。食事に行ったときに、一番高いものを頼むなど、お金の使い方は父親そっくりです。後輩におごるのも好きですが、お金がないので、消費者金融から借金しておごっていました。

家賃が払えなくなったボクは、部屋のグレードを下げていきます。月20万円のタワマンから、10万円、7万円。そして今も住んでいる家賃4万9000円のアパートに。

これがまたボロい。幽霊屋敷と間違えて、中学生が肝だめしに来たこともあります。壁も薄くて、隣人がガラガラと窓を開ける音が聞こえるんです。間取りは4.5畳。そのなかにキッチン、シャワールームとトイレがあるので、事実上ボクの専有面積は3畳。かつゴミ屋敷なので、本当に狭い!

一時は200万円あった月収も、現在は手取りで10万円。内訳は、吉本のギャラ2万円、薬局のアルバイトで5万円、その他日雇い5万円。借金返済に2万円を充てています。

振り返ってみれば、ボクは裕福だった時代が長かったです。それも自分の力じゃなくて、父親のお陰でした。親元から独立した当初は、自分の力のみでお金を稼いでいると思っていましたが、周囲の人がいて、やっとのこと。それに気づいたからといって、再び稼げるかといったら、そうではない。自分としては、ちゃんと食べられて、納得がいく生活ができればいいんですけどね。とはいえ今はやりたいことができて幸せです。

幼少期はゲームなど欲しい物は何でも買ってもらえましたが、そこから学んだのは「大事なのは、物じゃない」ということ。お金だけあっても、幸せにはなれません。

だからね、むちゃくちゃ高価な時計や車を買うよりも、クサい言い方ですけど、ボクは仲間と安いお酒を飲んで過ごす時間、そっちのほうがありがたいですね。

金持ちは遺伝しない。遺伝するのは「金遣い」だ

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中山 功太 お笑い芸人
1980年、大阪府生まれ。吉本興業所属。2009年R-1ぐらんぷり優勝。15年歌ネタ王決定戦優勝。OKOWAチャンピオンシップ2019優勝。趣味はビジネスホテル宿泊。

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(お笑い芸人 中山 功太 構成=プレジデント編集部 撮影=泉三郎 写真=平地勲)

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