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「あの男はつき合いがいい」には軽蔑が含まれる

プレジデントオンライン / 2019年10月24日 17時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/y-studio

Q. 仲間を飲みに誘えない

■飲んでも愚痴をこぼさないこと

酒には功罪ともにありますが、そのうちの「功」について楽しく教えてくれるのが、プラトンの『饗宴』(光文社古典新訳文庫)です。

紀元前のギリシャで、プラトンの師匠ソクラテスが多彩な友人らとともに長椅子に寝そべり、ワインを酌み交わしながら「エロス(愛)」の起源について論じた記録です。古代ギリシャではこのような、ともに飲みかつ語る歓談を「シンポシオン」と呼び、それが現代のシンポジウムの語源になっています。

酒の功とは互いに本音で楽しく話せることで、だからこそ気心の知れた関係をつくるために酒の場が重視され、「飲みに誘えない」ことが悩みの種にもなるわけです。

最近の若い人は職場の仲間と一緒に飲みたがらないといわれ、管理職の中にはそれで悩んでいる人もいると思います。しかし私は、彼らは飲みに行きたくないのではなく、飲むと愚痴ばかりこぼす先輩や説教を始めるような上司とは一緒に行きたくないということだと解釈しています。

大事なのは、相手の話を聞いてあげるということです。語り合うなら「『仕事』とは何か」といった哲学的な話はどうでしょう。

■人付き合いのコツ

フランス文学者らしく、ユーモラスな語り口の中にも明快な論旨で、人付き合いのコツをずばりと言い当てている河盛好蔵の『人とつき合う法』(新潮文庫)は、「酒席のことは、その場かぎりとして、忘れてしまうこと」を勧めています。

プラトン 著●哲学者ソクラテスを中心に宴会に集った才人たちが、愛や性的欲望について議論を交わす。著者はソクラテスの弟子のプラトン。(光文社古典新訳文庫)

太宰治も『新ハムレット』(新潮文庫)の中で登場人物に、「座が乱れてきたなと感じたらすぐに席を立ち、そのとき本来の会費より多めに置いていくとよい」と、スマートな酒の飲み方について語らせています。

もっとも太宰本人は酒癖が悪いことで有名だったので、自分で書いたことの実行はできていなかったようですが。

なかには「飲みに誘いたくとも体質的にお酒が飲めない」という人もいると思います。そういう人はウーロン茶を飲みながらでも、その場の雰囲気に合わせて楽しく話せれば問題はないし、それも嫌なら、無理して酒の席に付き合わなくてもいいのです。

私は以前、上司・部下を問わず職場の人とは飲まない主義だという人から、「職場で浮いているように感じる」と相談を受けたことがあります。「飲みに誘うべきでしょうか」と言うのです。私は「嫌なのに無理をして付き合うことはありません。仕事をきっちりしていれば問題ないでしょう」とアドバイスしました。

先に挙げた『人とつき合う法』は、「酒はつき合いで飲むべきものではなく、自分自身の楽しみのために飲むのが本筋であろう」として、「『あの男はつき合いのいいやつだ』という言葉には常に多少の軽蔑が含まれている。あたかも、『あの男はつき合いにくいや』という言葉のなかに、一種の敬意が含まれているように」と指摘しています。

「あいつは付き合いにくいやつだ」と思われるのも、ある意味で勲章。「誘えない」と悩んだり、気を使って無理に付き合う必要などないのだ、ということです。

▼無理に付き合うよりも仕事で示せ

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本田 有明(ほんだ・ありあけ)
本田コンサルタント事務所代表
慶應義塾大学文学部哲学科卒業。日本能率協会勤務を経て、1996年独立。コンサルティングや講演、執筆で活躍。『上司になってはいけない人たち』など著書多数。

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(本田コンサルタント事務所代表 本田 有明 構成=久保田正志)

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