どんなに字がヘタでも「宛名」が美しくなるコツ

プレジデントオンライン / 2019年10月9日 6時15分

字が下手で恥ずかしい。でもハガキの宛名や冠婚葬祭の署名は手書きするしかない。どうすればいいか。書道家の岡部修一・省三両氏は、「人は文字を目で追うのではなく、全体を“絵”のようにとらえている。文字の配置や周囲の余白に気を付ければ、字は上手く見える」という――。

※本稿は、岡部 修一・岡部 省三『理系の書道家が科学の視点で考えた、誰でも字がうまくなるすごい方法』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。

■人は宛名全体を絵画のようにとらえている

四角い紙や枠の中といった「決まった形」の中に文字があると、人はまず、文字を目で追うのではなく、全体を「絵」のようにとらえ、美しいか否かの先入観をもって読み始めます。つまり、人は最初に「文字の配置」や「周囲の余白」などを感じ取るものなのです。

ここでは、文字の「配置」と「余白」の問題点がよく表れる封筒(はがき)の表書きの実例を用い、簡単に説明しますが、ふだんなかなか「手書き」をする機会がない方が、いざ「手書き」する状況になったときの、ちょっとした知恵になるはずです。

まず、絵画を思い浮かべてください。ふつうは額縁に入れますよね。額縁までが「絵画」だからです。これと同じ見方で、封筒(はがき)も、表書きの部分に「周囲の余白」をどう意識して残すかが大切になります。そのために必要なのは、「書く順番」「文字の大きさ」「文字の間隔」です。実例と共に、その考え方を解説しましょう。

●最初に「宛名」を、封筒(はがき)の中央に大きな文字で、間隔も大きめに書く。宛名の下限が住所の下限の目安となる。
●次に書く「住所」は、宛名の下限までの長さに1行で書けそうなら(実例左)、宛名の中心と封筒(はがき)の右端のちょうど真ん中に、中くらいの文字で詰めて書く。もし住所の文字数が多くて1行にならなそうなら(実例右)、宛名の中心と封筒(はがき)の右端のちょうど真ん中に仮想の中心線をイメージし、その両側に2行で書く。
●住所右側の余白が大切。これはいつも意識する。
●会社名・役職名などを書く場合、宛名の右側に小さな文字で詰めて書く。
●余白のほか、「漢字は大きめ」「仮名は小さめ」を意識すると、もっと字がうまく見える。

■送付状を書くときも周囲の余白を意識する

仕事や日常生活でモノを送る際には、簡単な送付状や一筆箋などを添えることも多いはずです。ここで、一般的に普及している横書きの「簡単な送付状」の実例をもとにざっと解説しますが、パソコンのワードソフトで書面を作る際のレイアウトの参考にもなりますので、覚えておくとよいでしょう。

●文章の周りに「余白」を残すよう意識する。文章も、用件ごとに分けるなどすれば余白ができる。
●「漢字は大きめ」に、「仮名は小さめ」に書くようにすると全体が整って見える。
●発信者の名前を行末に入れるときは改行し、年月日や会社名・部署名などは、本文中の文字より小さめに書く。
●横書きの場合、文字のそろえ方のイメージは次の2通りのどちらかとなる。
 ①文字の中央を、横一線に合わせるイメージ
 ②文字の下限を、横一線に合わせるイメージ

■香典袋の3文字は「真ん中の文字を少し小さめ」に

ビジネスの取引先や、プライベートの友人知人、家族など、彼らの周辺に「慶事」や「弔事」の場面が生じることはよくあるものです。

そんな状況がめぐってきた方からよく聞くのは、「式での記帳の字が下手すぎた」「香典袋の表書きが難しかった」といったような失敗談ですが、ここでは、字の「配置」の参考にしていただけるよう、慶弔シーンでよく見る文字の実例と共に簡単に解説します。

●「中心線」をイメージし、それにそろえるように文字を書くことが大切。
●3文字のときは「真ん中の文字を少し小さめ」にすると、うまく見える。
●楷書体・行書体・草書体、どの書体でもかまわない。

■一字一字は整っていなくてもいい

●相手の方が亡くなってすぐのときは、草書体・行書体は控えたほうがよい。
●葬式や告別式でなく、法事などあらかじめ決まった行事なら、楷書体・行書体・草書体、どの書体でもかまわない。
岡部 修一・岡部 省三『理系の書道家が科学の視点で考えた、誰でも字がうまくなるすごい方法』(KADOKAWA)

以上、この記事では、ふだん私共が提唱している書道理論や法則には深入りせず、あくまで一般の方々にとっての「知っておきたいちょっとしたテクニック」を簡単にお伝えしましたが、一字一字がさほど整っていなくても、文字を書くときの「余白」や「配置」が意識できている人とそうでない人の「字の見え方」には、想像以上の差が出るものです。

記事のはじめでもお伝えしたように、人は一般的に、文字全体を「絵」のようにとらえ、美しいか否かの先入観をもって読み始めるものであり、「配置」や「余白」が整っているかどうかで「字のうまさ」を感じ取るものなのです。

自分の字に今一つ自信が持てないという方であっても、「配置」や「余白」の意識次第で、文字の見え方に“違い”が出る字を書くことができると思います。文字を美しく書くこと以前に、まずは「余白」と「配置」。このことを意識してみるとよいでしょう。

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岡部 修一 書道家
1950年、福岡県生まれ。立命館大学理工学部高分子化学科卒業。日本IBMで30年にわたり品質・研究技術者として勤める。退職後、韓国の三星電機にて約3年研究職。1956年、西日本書道通信学会(日本習字教育財団の前身)に入塾し書道の道へ。書道教授(八段位)・墨画部教授を取得。現在、北九州市にて書道字教室「愛書友」を主宰。

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岡部 省三 書道家
1954年、福岡県生まれ。九州産業大学芸術学部デザイン学科卒業。アサヒコーポレーションに入社、以来36年にわたりシューズデザイン開発に携わる。1961年、西日本書道通信学会に入塾し書道を始める。書道教授(八段位)・墨画部教授を取得。現在、久留米市にて書道教室を主宰。

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(書道家 岡部 修一、書道家 岡部 省三)

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