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「資産家シニア」が外国人妻に求める結婚の条件

プレジデントオンライン / 2019年10月15日 11時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/AlisLuch

外国人女性との「婚活」に励むシニア男性が増えている。ライターの篠藤ゆり氏は、「日本人女性ではなかなか相手を見つけられない。そういう人たちは、『子づくりに協力する』などの条件が書かれた婚前契約書を交わすことが多い」という――。

※本稿は、篠藤ゆり『ルポ シニア婚活』(幻冬舎新書)の一部を再編集したものです。

■婚活シニアは「外国人」に目をつける

桁外れな資産家の場合は、たとえ40歳離れていても、結婚してもいいという日本人女性は少なからずいるのかもしれない。しかし、子どもがほしくて婚活をしてきたものの、日本人女性ではなかなか相手を見つけることが困難な人も多くいる。そんなシニア男性たちにとって活路となっているのが、国際結婚だ。

外国人女性との婚活でよく知られているのが、1980年代半ばに始まった、過疎化に悩む農村での国際結婚だろう。結婚難の農業従事者が多い地域で、行政や農協が結婚相談業者と提携して行う、フィリピンでのお見合いツアーが盛んになった。90年代半ばからは中国人女性や韓国人女性など、フィリピン人女性以外にも対象が広がった。

しかしこうした第一次産業の“嫁”とは違った意味合いで、外国人との婚活を実践するシニア男性たちがいる。

国際結婚の仲介を行う結婚相談所が多く加盟する、ブライダルアライアンス幹部の萩森高勝さん(仮名)によると、最近はある程度の年齢まで独身で来た資産家の男性が、実子に財産を相続させたいという理由で相談に来るケースが増えているという。

■子どもを産んでほしいから「35歳まで」を希望

「シニアの単身男性の方は、同世代の知人や友人が病気になったり亡くなったりすると、危機感を抱くようです。だいたい50代に入ってからでしょうか。定年も近くなり1人ではなにかと不安がつきまとうからです。もし自分が死んだらどうなるのか、お墓も誰が守ってくれるんだろうと焦り出す。とくに不動産など財産を持っている場合、子どもを産んでくれる女性を切実に求める方がけっこういます。

そこで、私どものような団体に駆け込んでくるので、加盟店である国際結婚に実績のある結婚相談所を紹介しております。皆さんお子さんを産んでもらいたいので、35歳までの女性を希望してきます。なかには絶対に20代じゃなきゃダメだと言い張る男性もいます」

ブライダルアライアンスで紹介している結婚相談所の国別会員としては、中国、台湾、香港、韓国、タイ、ベトナム、フィリピン、ミャンマー、カンボジア、ラオス、モンゴル、インド、スリランカ、カザフスタン、ウズベキスタンなどの東南アジアや南アジア、中央アジアの女性が中心で、中東、東ヨーロッパ・ロシア、ウクライナ、西ヨーロッパ・フランス、イタリアの女性も対象にしている。

日本との経済格差がある国の場合、国の家族に仕送りをすると親孝行ができるので、それが理由で日本人と結婚したいという女性はかなりいる。また、働かない、浮気をする、アルコールに依存する人や暴力をふるう人が多いなどの理由で、自国の男性が嫌いという女性も少なくない。

■お見合いのため渡航、「手ぶらでは帰りたくない」

以前はいわゆるお見合いツアーを実施していたが、ツアーだと人気のある女性を奪いあったり男性同士でけん制しあったりすることがあり、現在は、男性1名に対し複数の女性とのお見合いのみ。各国の現地スタッフがお見合いに参加する条件に合う女性を募集し、男性は日本から現地に行き、お見合いが成功したら後日現地で結婚式を挙げるケースが多い。

お見合いに参加する女性に関しては、スタッフが面談をして人となりを確認するとともに、借金を抱えていないか入念にチェックする。また、女性側に日本人男性の資産状況や年収などは教えない。知らせると、財産目当てになってしまうおそれがあるからだ。

「海外までお見合いに出かけた方は、ほぼ成婚しています。やはり時間もお金も使って海外にまで出向いた以上、手ぶらで帰りたくはない、という心理が働くのでしょう。それにたいていのシニア男性は、若い女性を目の前にすると、気持ちが高揚して結婚に前向きになるようです」

■インドやスリランカが人気の理由は「辛抱強いから」

お見合い相手として人気が高いのは、中国、タイ、ベトナム、ウズベキスタンの女性だという。やさしくて従順だというイメージを抱いている人が多いのだろう。また、顔立ちが比較的日本人に近いため、あまり周囲から浮かないという理由で希望する人も多い。顔立ちが似ているし漢字を理解するという理由で、中国人を望む人もいる。

フィリピンパブ全盛期に通った経験のある男性のなかには、フィリピン人限定という人もいる。また、碧眼金髪の女性を望む男性もおり、そういう場合は主にロシア系や東ヨーロッパの女性などとのお見合いを設定する。

「外国人女性は、日本人よりも信心深く、仏教徒、キリスト教徒、イスラム教徒の場合が多いので、お見合い前に確認しておくのも重要なポイントです。

日本人になじみの深い仏教徒の女性を望む男性が多いですが、愛があれば国境、宗教、言葉を超えられるケースがほとんどです」

萩森さんによれば、最近、インドやスリランカの女性の人気が高まっているという。その理由のひとつが、これらの国では一度結婚したからには離婚することは恥だという価値観がまだまだ根強いため、辛抱強いという点だ。たとえ文化の違いや夫との関係で悩んだとしても、離婚に至るケースが少ないそうだ。

■子作りを焦るあまり、バイアグラを使って脳梗塞に

成婚料は相手の国によっても違い、100万円から300万円の間。これには相手への結納金も含まれている(スリランカのように結納金が不要な国もある)。お見合い旅行や結納式、結婚式などで現地に行くための旅費は、別途支払う必要がある。成婚料が高いのは、現地スタッフの人件費や、大使館や弁護士への費用、お見合い設定の手数料、また外務省・法務省など各省庁での申請業務や書類の翻訳認証などの手続きがかなり煩雑なので、そのサポートのための料金なども含まれるからだという。

今まで成婚した中で一番年齢差があったのが、70歳男性と30歳女性の組み合わせ。ただしその人は子どもをつくる前に脳梗塞になり、新婚の妻は介護を余儀なくされた。一日も早く子どもがほしいからとバイアグラを使う人もいるので、がんばりすぎて循環器に負担がかかったのかもしれないと萩森さんは言う。

■難病持ちだがスリランカ人と結婚し子どもを授かる

実際にはどんな人が国際結婚を望んでいるのだろうか。

投資家の山口耕介さん(59歳・仮名)は、あえて「子どもを産んだ経験がある人」という条件で相手を探した。そのほうが、子どもができやすいだろうという判断からだ。

耕介さんはクローン病という難病を抱えており、3日に1度は病院に通う生活をしている。資産は相当持っているが、ほぼすべての結婚相談所が難病を理由に受け入れ困難な状況だった。だがブライダルアライアンス加盟の「ガーデンマリッジ」で、国際結婚へと踏み出すきっかけを得た。

タイとスリランカで総勢20名くらいとお見合いをしたが、クローン病と知って断る女性もかなりいた。お相手として決まったのは、30代前半のスリランカ人女性。離婚歴があり、結婚前は看護師として働いていたので、その経歴も耕介さんは気に入った。子どもが1人おり、その子は母国で女性の母親が面倒をみることになった。

妻となった女性の唯一の望みは、着物を着て結婚写真を撮ること。ホテルで貸衣装を借りて撮った写真は、スリランカのお母さんにも送ったそうだ。彼女はその後、人工授精で妊娠。この5月に無事に元気な男の子を出産した。

■妻たちのSOS「毎晩求められるので勘弁してほしい」

ブライダルアライアンスの加盟店では、成婚後のフォローも行っている。というのも、国際結婚は言葉の障害や文化の違いなどさまざまな行き違いから、トラブルが起きやすいからだ。

具体的には、男性側、女性側双方からの相談を受け付けている。女性側は現地スタッフや通訳者を介し、LINEや電話で相談できるシステムとなっている。

男性からの相談で多いのは、「妻が何を言っているかわからない」という言葉の問題と、お金の問題だ。「親の具合が悪いから治療費を送りたい」と言っているけれど、それは本当かなど、仕送りに関する相談が多い。

女性からの相談は、「病院で自分の症状を伝えられない」など日本語についての悩みと、「毎晩求められるので勘弁してほしい」といった内容が多いという。男性はだいたい60代、70代だが、相手が若い女性ということで性欲が爆発してしまうのだろうか。「子どもがほしい」ということもあり過剰にセックスを求め、辟易した妻が耐え切れずSOSを出すようだ。

■遠慮して100グラムのスライス肉を購入

先ほど紹介したスリランカ人の女性は、妊娠中、食生活に関する悩みをスタッフに相談してきた。夫はクローン病のせいもあって動物性たんぱく質を控えているし、そもそも食事には興味がなく、一日中パソコンを見ては株式投資に熱中している。お金に関してはシビアで、レシートも細かくチェックする。

スリランカではスライスした肉は売っておらず、通常、塊で買う。そういう文化的背景のある彼女としてはかなり遠慮して、スライスした肉を100グラム程度買ってきたところ、夫から『3日にわけて食べなさい』と言われたという。担当結婚相談所のスタッフは家まで行き、夫に「妊娠中はしっかり栄養を摂る必要があるし、ストレスをかけないよう、食事に関しては彼女の好きなようにさせたほうがいいですよ」とアドバイスした。

「一番危ないのは、来日して3カ月目くらいです。言葉も通じないし、友達もおらず、ホームシックになるんですね。そこを乗り越えて1年たつと、日常的な日本語を覚えるし、夫婦2人で通じる言葉もできてきます。言葉と地理を覚えると、たいていの女性は、日本が居心地よくなるようです」と萩森さんは言う。

■日本人との婚活で失敗した人は“勘違い男性”が多い

ブライダルアライアンスの理事・増田朱美さんは、「それまで日本人を相手に婚活をしてうまくいかなかった男性は、勘違いしている人も多いですね」と、なかなか手厳しい。

「『やっぱり日本人でないと言葉も気持ちも通じない』とおっしゃる方もいます。そういう方に、『じゃあ今まで婚活していた十数年間、日本人の女性と気持ちが通じていたんですか?』と聞き返すと、黙ってしまわれます。

相手を理解しようという気持ちがなければ、たとえ日本人どうしでも難しい。ましてや海外の方と結婚する場合は、お互いに文化が違うわけですから、相手をわかろうとする気持ちが大事なのではないでしょうか」

■結婚にお金が絡むからこそ婚前契約書が大事

日本人のシニア男性と結婚しようと考える外国人女性は、基本的に経済的な安定を求めていると考えてよさそうだ。また、親孝行が目的の場合も少なくない。そのため結婚の条件として、「これだけの額の結納金がほしい」、あるいは「月にいくら実家への仕送りをしたい」と、具体的に金銭面での要求を提示する女性が多い。

こうしたお金にまつわる事案は、口約束ですませるとトラブルの元になる。そこで推奨されているのが、婚前契約書の作成だ。

たとえば毎月の送金額や月々のお小遣いの額、年に一度は里帰りを認めその費用はすべて夫が負担するといった金銭的なことはもちろん、家事の範囲など、できるだけ細かく決めておくことが勧められる。お互いに文化的背景が違うため、片方にとってあたりまえのことが、相手にとってはあたりまえではない場合もある。だからこそ事細かく明文化しておくことが、トラブル回避につながる。

■「人身売買じゃあるまいし」と言うが……

実際に数組の国際結婚の婚前契約書づくりを担当したスタートライン行政書士事務所の横倉肇さんによると、よくある内容は次の通りだという。

篠藤ゆり『ルポ シニア婚活』(幻冬舎)

「男性側からの要望は、子づくりに協力すること。家庭をきちんと守ること。年齢差があるので、病気になったり介護が必要になったりしたらそれを担うこと、といった内容が多いですね。女性側からは、生活費とは別にお小遣いが月にいくら。万が一離婚になった場合、ビザがなくなるし生活ができなくもなるので、永住権が取れるまでは法的には離婚しない。あるいは、離婚した後も一定の金銭的援助をする、といった内容もよくあります」

なかには、婚前契約書を作成するのをいやがる男性もいる。「契約」という言葉に過剰反応してしまうのか、「人身売買じゃあるまいし」というのが言い分だ。それは裏返せば、結婚そのものに若干のやましさを感じている、ということかもしれない。どう取り繕おうが、経済的な優位性を利用して若い外国人女性を嫁に迎えることには変わりはない。そのため男性側にも、なんとも微妙な感情があるのだろう。

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篠藤 ゆり(しのとう・ゆり)
小説家、ライター
1957年、福岡県生まれ。国際基督教大学教養学部卒業後、コピーライターとして広告代理店に勤務。退社後、世界各地を旅する生活を経て、1991年「ガンジーの空」で海燕新人文学賞受賞。女性誌を中心に人物インタビューを多数手がける。著書に『食卓の迷宮』(アートン新社)など。

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(小説家、ライター 篠藤 ゆり)

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