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「入籍婚」を目指さない結婚相談所のシニア対応

プレジデントオンライン / 2019年10月16日 11時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/PeopleImages

60歳以上のシニア世代の「婚活」は、若年世代とは事情が異なる。ライターの篠藤ゆり氏は、「中高年に特化した結婚相談所では、必ずしも戸籍上の結婚を目標にしていない。入籍婚にこだわるとトラブルが起きやすいからだ。特に注意が必要なのが『家族の反対』だ」という――。

※本稿は、篠藤ゆり『ルポ シニア婚活』(幻冬舎新書)の一部を再編集したものです。

■シニアの結婚の形には3種類ある

ひとくちに「シニア婚活」と言っても、シニアになってからの結婚に何を望むのか、人によってかなり違う。結婚に何を望むかがお互いに違えば、当然マッチングは難しくなる。とくにシニアの場合、離別・死別を問わず初婚ではない人が多いため、子どもや相続の問題でさらに条件が限定される。

60歳以上に多い結婚の形は、大きく次の3つに分類できる。

1.同居し婚姻届を提出する法律婚。
2.同居し婚姻届を提出しない事実婚。
3.お互いの家を行ったり来たりして、週末などを一緒に過ごす別居婚。法律婚はしている場合も、していない場合もある。

3の別居婚で籍も入れていない場合、はたしてその関係を「結婚」と呼んでいいのかどうかは迷うところだ。だがシニアの場合、あえてそういった関係を選ぶケースもある。

前の配偶者と死別・離別どちらの場合も、子ども家族と同居している場合は、そこに新たに配偶者を招き入れることは難しい。そこでワンルームマンションなどを借りて、週末だけ一緒に過ごすという形を取るカップルもいるが、年齢が高くなれば賃貸住宅を借りるのも難しくなる。

子どもたちが独立して出ていっている場合でも、慣れ親しんだ家を出て相手の家に住むことに抵抗を感じる人もいる。あるいは子どもたちの側が、自分が育った家に親の新たなパートナーが入ることをよしとしないケースもある。そういう場合は、別居婚という形を取らざるをえない。

■財産の半分を持っていかれる不安から子どもが反対

では、あえて法律婚を選ばないのは、どういうケースだろうか。理由を整理してみると、ほぼ次の3点に集約される。

①財産の問題

現在の遺産相続の制度だと、子どもがいる場合、配偶者の相続権は2分の1、子どもたちが残りの2分の1となる。シニア婚の場合、結婚してそう年数がたたないうちにどちらかが亡くなる可能性は、若い世代の結婚より当然高くなる。子どもたちの立場に立てば、晩年になって結婚した相手に自分たちの取り分を取られてしまう、という感覚が生じるのも致し方ない。それが結婚に反対する主たる理由となる場合もある。

また2018年の相続法改正では、「配偶者居住権」が創設された。これにより、たとえば夫が所有するマンションに夫婦で暮らしていた場合、夫が亡くなり、子どもたちが不動産の所有権を相続したとしても、妻は夫が所有していた家に住み続けることができる。子どもにしてみたら、不動産を売って現金化することもできない、ということになる。

こうした理由から、子どもたちを納得させる方法のひとつとして、入籍をしない関係を選ぶケースは少なくない。もちろんいずれのケースも、子どもたちが納得する遺言公正証書を作成すれば問題は回避できる。とはいえ事実婚のほうが子どもを説得しやすい、あるいは説得の必要が生じないと考える人が多いのも事実だ。

■多額の遺族年金をもらい続けるためあえて入籍しない

②夫と死別している

夫と死別している女性の場合、遺族年金をもらっているケースが多い。遺族年金とは、生計の担い手である被保険者が死亡した際、国民年金・厚生年金保険や各種共済組合などから一定の要件を満たす遺族に給付される年金のことだ。サラリーマンと専業主婦という家族形態が一般的だった時代、夫に先立たれた妻のなかには、かなりの額の遺族年金が支給されている人もいる。

ところが再婚すると遺族年金をもらえなくなり、自分の国民年金のみとなる。この差はかなり大きい。そこで夫と死別している女性のなかには、パートナーはほしいけれど、法律婚はしたくないという人もいる。

■「結婚相談所」だが必ずしも結婚しなくていい

③子どもの反対

財産とは関係なく、何があっても親の結婚には反対だという子どももいる。それでも新たに出会った相手と生活を共にしたいと願う場合、法律婚は諦めるカップルもいる。

ここでひとつ疑問が湧く。結婚相談所とは、そもそも「結婚相手」をあっせんするところのはずだ。必ずしも法律婚を目的とせず、ただつきあう相手がほしいという人が交じっていると、トラブルにはならないのだろうか。中高年に特化した結婚相談所「茜会」の立松清江さんに、そのあたりのことをうかがってみた。

「茜会も当初は、いわゆる戸籍上の結婚を目標にしていました。でもシニアになると、お子さまのこと、財産のことなどさまざまな事情があります。そういった事情やしがらみを加味すると、必ずしも入籍婚にこだわらないというのが、今のシニア婚活のスタイルです。入籍婚を希望している方もいれば、入籍は望まずパートナーを探している方もいらっしゃいます」

だがお互いの要望が違うと、トラブルの元になる。そこで入会時に、「入籍を希望する」「入籍は希望しない」「今は決められないが相手次第で考える」の3通りから、自分のスタンスを選んでもらっているそうだ。

「ただ、お相手が見つかっておつきあいをしていくなかで、入籍は考えていないとお答えだった方が、この方だったらということでご家族にも相談し、賛成してもらって入籍を選んだケースもあります」

■結婚の形は時間をかけて決めればいい

どういう形を取るかを含めて、茜会では、早急に結論を出すことは勧めていない。

篠藤ゆり『ルポ シニア婚活』(幻冬舎)

「年配になってからの出会いなので、もうあまり時間がないと、気持ちが焦っている方もおられます。でも答えを急ぎすぎると、うまくいかないケースがよくあるんです。

一番多いのは、ご家族の反対です。ある日突然『この人と結婚します』と言ったら、お子さんはびっくりしますよね。時間をかけて相手を見極め、ご家族の理解も得たうえで次のステップに進んでいただきたいというのが、私どものスタンスです。

また、年配になってからの結婚は、長い期間、まったく異なるライフスタイルを営んでこられたお2人、ということになります。ですからいきなり同居というのも、なかなか難しいのが現実です。

そこでお互いに行ったり来たり、通うスタイルを取る方もいらっしゃいます。あるいは同居はするけれど、籍はあえて入れず、まずは様子を見る。家族の理解が得られたら入籍も考えるけれど、財産の問題やお子さまに遠慮して、籍を入れない方も少なくありません」

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篠藤 ゆり(しのとう・ゆり)
小説家、ライター
1957年、福岡県生まれ。国際基督教大学教養学部卒業後、コピーライターとして広告代理店に勤務。退社後、世界各地を旅する生活を経て、1991年「ガンジーの空」で海燕新人文学賞受賞。女性誌を中心に人物インタビューを多数手がける。著書に『食卓の迷宮』(アートン新社)など。

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(小説家、ライター 篠藤 ゆり)

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