三田友梨佳が安藤優子から学んだ伝え方の極意
プレジデントオンライン / 2019年10月23日 15時15分
■アナウンサーの仕事は「思い」を伝えること
【三宅義和(イーオン社長)】三田さんがアナウンサーとして普段心がけていらっしゃることは何ですか?
【三田友梨佳(フジテレビアナウンサー)】アナウンサーは言葉のプロですので、いかに正確な言葉で情報を的確に伝えられるかということが一番大切ではありますが、私がいつも意識しているのは「思いやりを持つ」ということです。
【三宅】思いやりですか?
【三田】はい。アナウンサーは決して主役ではありません。主役は情報そのものだったり、共演者の方であったりするわけで、私たちはそのサポート役です。ですから「視聴者の方がどのような気持ちでこのニュースを見るのだろう」「共演者の方は今、何を考えていらっしゃるのだろう」といった、相手を思いやる気持ちがアナウンサーに求められているのではないかと思っています。
【三宅】「私を見て、見て!」ではないということですね。
【三田】それはアナウンサーとして一番やってはいけないことだと思います。
■アナウンサーの大先輩からの教え
【三宅】今、三田さんは報道番組を担当されていて、世論を二分するようなさまざまな出来事を伝える立場にいらっしゃいます。そのバランスといいますか、ニュースとの関わり方で難しさは感じませんか?
【三田】そうですね。そういった中で私は、周りの人の意見を尊重しながらも、自分の意見をしっかりと持って、芯がブレないように意識しています。
【三宅】そうですか。
【三田】はい。これは私の尊敬する大先輩の安藤優子さんから教わったことです。安藤さんとは4年間一緒に『直撃LIVEグッディ』をやらせていただいたのですが、「伝えるということはきれいな言葉でなめらかに話すことではなく、自分の思いをしっかりと持って『あなたに伝えたい』という気持ちを込めて語ることだ」と教えていただきました。「思いがあれば相手の心に響く言葉になるから、自分の信念をしっかりと持ってそれを相手に伝えたいという思いを大切にしなさい」と。
【三宅】素晴らしい教えですね。
【三田】はい。だからといって自分の意見を周りに強いるような態度ではやはり思いやりに欠けますから、周りの方の意見を引き出しつつ自分のなかに取り込み、自分の思いをしっかり持つということですね。アナウンサーとしては番組のバランスをとることがベースにあるのですが、そのなかでも自分の意見はブレないように、そしてその思いを伝えたいという気持ちを強く持ちながら、毎日番組に臨んでいます。
■生放送で何を意識しているか
【三宅】では三田さんが英語でインタビューされるときなども、その人なりの意見を引き出す、ということは意識されているんですか?
【三田】しています。たとえば一流アスリートの方のお話を聞いて毎回思うのは、我流といいますか、自分なりの哲学をしっかりお持ちなんですね。
【三宅】そのとき三田さんの意見はぶつけられるんですか?
【三田】はい。一応頑張って事前に勉強させていただいて、私なりの意見も持ったうえでインタビューに挑むようにしています。毎回勉強させていただく形にはなりますが。
【三宅】そうでしたか。テレビを見られる方も、三田さんの思いを含め、いろいろな意見を聞いて、自分なりに考えるきっかけになるといいですね。単に世の中の流れに流されるのではなく。
【三田】そうですね。それを理想としています。
【三宅】最近はテレビよりもインターネットという人が多いですが、そんな中で報道番組の意義というものをどうお考えでしょう。
【三田】やはりリアルタイムで視聴者のみなさんと同じ時間を過ごすことができる、ということではないでしょうか。私は入社してからずっと生放送を担当していますが、生放送ならではの醍醐味は「世界の今」を感じられることです。そして心を通して一緒に物事を考えられるということが魅力だと思っています。少なくとも私はそれを意識しながら生放送に取り組んでいます。
■人間的成長につながったシアトル留学
【三宅】三田さんは昔から自分の意見をしっかり持たれるタイプだったのですか?
【三田】あまりそのようなタイプではなかったのですけれども、大きな転機になったのが高校3年生のときアメリカのシアトルに1年間ホームステイさせてもらえた体験です。この留学が私を人間的にひと回りもふた回りも大きくしてくれたと思っています。
【三宅】どのような学びがありましたか?
【三田】当時の私は本当に海外に対する憧れが強くて、実際に暮らしてみてその思いはさらに強まりました。しかしそれ以上に、私が当たり前だと思っていた日本での生活が、家族や友人のサポートなしでは成り立たないということ、そして私がどれだけ恵まれてきたかということを実感しました。
【三宅】それは大事な気づきですね。
【三田】大きかったですね。そしてもうひとつの大きな学びが「自分の意見を持つ」ことの大切さです。現地の高校に通って授業に出ていると、アメリカの高校生は自分なりの意見をしっかり持っていて、ちゃんと主張するんですね。ディベートの授業とは一切関係ないところで積極的に手を挙げて「あなたの意見はここが間違っている。自分はこう思う」といった主張が飛び交います。
【三宅】日本人は戸惑いますよね。
【三田】はい。「うわー、すごいなー」と思いながらその議論を眺めていたら、急に「友梨佳はどう思うの? 日本ではどうなの?」とボールが飛んできたりして(笑)。そこでしどろもどろになったりしながら、私に致命的に足りないのは自分の意見を持つことだと痛感しました。
【三宅】そのような姿勢はこれからの日本人に必要だと思いますか?
【三田】日本文化の良さや日本人の誇りは絶対に大切にするべきところだと思いますけれども、日本人がグローバルで活躍するためには海外の方たちと対等に歩を進めていかないといけません。やはり自分の意見をしっかりと持って、自信を持って発信していくことが大切ではないかなと思います。
■英語字幕で活きた英語を身につける
【三宅】英語のお話を伺いたいのですが、三田さんは幼稚園のころから英会話スクールに通われ、毎年のように海外に行かれていたので留学の段階で英語の苦労はあまりなかったのでは?
【三田】そうですね。さすがに授業となると知らない専門用語がたくさん出てくるので勉強しましたけれど、日常生活での苦労はあまり感じませんでした。
【三宅】さすがですね。ではその留学を経験して、一段と英語が強化された感じでしょうか?
【三田】はい。「英語で夢を見るくらいになると英語に対する耳の穴がパッと開く」という噂はもともと聞いていたのですけれど、たしかに今思うと留学中に英語で夢を見はじめて、そこから英語の苦労がかなりなくなった気がします。
【三宅】留学前にはどのような学習法をされていましたか?
【三田】映画を英語字幕でひたすら観ていました。やはり自分が好きな映画ですと苦ではないですし、日常で使える単語や言い回しがたくさん出てきますので、そこでの学びは大きかった気がします。
■暇さえあれば海外の音楽番組を観る
【三宅】個人的には字幕を一緒に読み上げる、オーバーラッピングという勉強方法がおすすめです。
【三田】私もやっていました! お墨つきをいただけてうれしいです。やはりネイティブの方の発音は目で追うだけではなかなか理解できない部分もありますけれども、それを口に出すことで「ここはこう短縮できるんだ」といったように、教科書では教えてもらえない実践的なことが映画から学べたような気がします。
【三宅】そもそも英会話は実践訓練でしか鍛えられませんからね。
【三田】おっしゃる通りですね。TOEFLやTOEICの点数を上げるだけなら頭に詰め込む勉強で事足りるかもしれませんけれど、実際に話すとなったときには普段から声に出すことが大きな意味を持つように思います。
【三宅】そうですね。
【三田】ただ、ひとつ反省点があるとすれば、留学を通してある程度英語ができるようになったことで気が緩んでしまって、日本に帰ってきてからどんどん英語力が落ちてしまいました。本来であれば自分の英語を高い水準で維持できるようにレッスンに通うなり、勉強をするなり、何かしら努力をすべきだったなと思っています。
【三宅】ちなみに今ご自身で意識して取り組んでいらっしゃることはありますか?
【三田】海外の音楽番組が好きなので、そういった番組を暇さえあれば観ています。
■後悔するならやって後悔すべし
【三宅】それでは最後に日本のすべての英語学習者や、海外での活躍を目指している人々へのメッセージをお願いいたします。
【三田】メッセージを伝えられるような立場ではないのですけれども、英語学習というものは必ずや明るい未来に通じるものだと思っています。私の場合ですと英語を通じて自分の世界観が広がりましたし、仕事の幅も広がりました。結果的にそれは世界中の人々との出会いにつながり、その出会いが私の成長の糧となっている部分も大きいと感じます。
ですから、みなさんもぜひ希望を持って英語を学んでいっていただけたらなと思います。
【三宅】希望と、そして自信ですね。
【三田】そうですね。あと、アナウンサーになって大先輩から言われた言葉で、今でも大切にしている言葉があるのです。「やらないで後悔するくらいなら、やって後悔したほうがいいよ」。本当にそうだなと思います。
「今のままでいいや。だって何か嫌なことあったら嫌だもの」と思っていらっしゃる方がいるのであれば、やらないで後悔するくらいならやって後悔したほうがいいし、勇気をもって一歩を踏み出したら違う世界が広がっているかもしれない、ということはぜひお伝えしたいなと思います。
【三宅】ありがとうございました。
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イーオン代表取締役社長
1951年、岡山県生まれ。大阪大学法学部卒業。85年イーオン入社。人事、社員研修、企業研修などに携わる。その後、教育企画部長、総務部長、イーオン・イースト・ジャパン社長を経て、2014年イーオン社長就任。一般社団法人全国外国語教育振興協会元理事、NPO法人小学校英語指導者認定協議会理事。趣味は、読書、英語音読、ピアノ、合氣道。
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フジテレビアナウンサー
東京都生まれ。青山学院大学国際政治経済学部国際経済学科・国際コミュニケーションコース卒業。2011年フジテレビ入社。12年から3年間『めざましテレビ』『めざましどようび』のスポーツキャスター。15年から4年間『直撃LIVEグッディ!』進行キャスターを務める。2019年4月からは『Live News α』(月~木曜メインキャスター)、『Mr.サンデー』(日曜 アシスタントキャスター)を担当。
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(イーオン代表取締役社長 三宅 義和、フジテレビアナウンサー 三田 友梨佳 構成=郷 和貴)
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