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富裕層が求める世界最高の教育はどんなものか

プレジデントオンライン / 2019年10月13日 6時15分

※写真はイメージです(写真=iStock.com/FatCamera)

子供を世界で通用するように教育したいと願う親は多いものです。富裕層が子女を通わせる世界最高峰の教育にはどんなものがあるのか、そして子供をインターナショナルに育てる秘訣はどこにあるのでしょうか。モナコで暮らす著者が教えます。

■子供という原石に対する教育「投資」

「人生で手に入れたいものは?」という質問に対して、上位に上がる富裕層の返答は「健康」「家族の幸せ」「安全な環境」です。「環境」というところでは、お金持ちほど子供の教育環境にお金を惜しまないという傾向があります。親にとって子供は大切な宝物であり、可能性を秘めた原石ですから、学校教育や学校選びは大切なポイントになります。富裕層の親にとって子供への教育は、「投資」という考え方にもなります。どんな学校へ行き、どんな人と出会うかで人生の方向はほとんど決まります。

ケンブリッジやハーバードのような有名大学のインフォメーションは、さまざまなところで得ることはでき、留学専門の業者もたくさんあります。しかし、世界には一般的に募集をしていない学校や、情報を取得するのが難しいところもあります。そのような学校は、永世中立国で大自然に囲まれた裕福な国スイスにあるのです。人と同じことをしていては突き抜けることのできない世の中で、子供たちに個性的な教育や環境を与えてくれる学校をご紹介いたします。

■モナコ大公も卒業した最高の教育機関

まずは世界で最も高額な教育機関の一つとされ、世界中の王侯貴族や名家、セレブリティの子弟・子女が数多く通う「ル・ロゼ学院」。1880年に設立されたスイス最古の寄宿学校の一つです。寄宿学校は“ボーディングスクール”と呼ばれ、日本の小中高校にあたります。スイスのヴォー州ロール近郊にある14世紀の古城「シャトー・デュ・ロゼ」がメインキャンパスですが、毎年1~3月の約3カ月間は欧州最高級スキー・リゾート地の一つグシュタードにキャンパスを移し、毎日午後はスキーをします。1年の間に2つのキャンパスを移動する学校は、世界でもル・ロゼだけ。在籍生400人に対して教師は約100人、授業は生徒5~6人という少人数制で行われます。生徒は世界60カ国から集まり、国際的な環境を維持するために生徒の国籍が偏らないように、一国籍10%までという上限制を採用しています。学費はかなり高額で、授業料以外に寄宿代、食費、海外就学旅行費やパーティ参加のための付帯費用などがかかります。米『Forbes』誌の調査によれば「世界で最も高額な中等教育機関」とされています。過去の卒業生には、モナコ公国大公・レーニエ3世、ベルギーの第6代国王・アルベール2世、エジプト王・フアード2世、イタリアの王族・エマヌエーレ・フィリベルト・ディ・サヴォイア、ジョン・レノンとオノ・ヨーコの息子のショーン・レノンなどなど。両親が出席する行事、パーティやスキー大会があり、親同士のコミュニケーションも大切になってきます。学業だけでなく、さまざまな行事を通して、社交術を身に付けることができる世界最高の教育機関と言えるでしょう。

■ダイアナ妃が結婚前に学んだ学校

二つ目は、女性教育のために1952年に設立された、フィニッシングスクール「ヴィラ・ピエールフー」です。フィニッシングスクールとはマナーや社交上のプロトコルの基本を学び、女性としての美しい心を磨くと同時に、品格や他者への思いやりを身に付けるヨーロッパ伝統の教育プログラムです。特にこの学校では、女性が国際的な社交の場やふだんの日常生活のなかで必要とされるマナーやプロトコルを身に付けることを主眼とした教育プログラムとなっています。フィニッシングスクールは、スイス・レマン湖畔のモントルー市やその周辺には、かつて10数校点在しましたが、時代の変化とともに少なくなり、現在ではヨーロッパ全域を見渡しても、伝統的かつ体系的なフィニッシング教育を実践しているのはピエールフー1校と貴重な存在になっています。このフィニッシングスクールは、ダイアナ妃がご結婚される前に学ばれた学校として知られています。授業内容は、欧州式テーブル・マナー、食卓の席次と会話、欧州スタイルの正餐の実践トレーニング、インターカルチュラル・コミュニケーション……。私もこの学校の卒業生のひとりで、この学校で美しい環境に囲まれながら学んだ時間には、人生で最も影響を受けたと今でも思っています。

■世界で通用するホスピタリティを学べる

三つ目は「ローザンヌ・ホテル学校」です。1893年に設立され、世界で初めてのホテルマネジメント学校。現在は、フランス語部と英語部があり、約2000人の学生がいます。いわゆる専門大学ですが、卒業すると学士号が得られます。学校外での実習は2度、6カ月ずつあり、修士課程もあります。普段学校内では、学生は、男子は背広、女子はスーツの制服が義務付けられています。ここはホテルマンになるだけの教育ではなく、世界のエリートたちを育成するプログラムです。

ホスピタリティ・マネジメント学科という学科を聞いたことはありますか。ホスピタリティとはお互いを思いやり、手厚くもてなすことを意味し、ホテルや飲食店、旅行業などのサービス産業にかかせない大切な精神です。社員管理能力等サービス産業でトップに立つために必要とされる能力を身に付ける学科でもあります。この学科で世界一に輝くのが「ローザンヌ・ホテル学校」なのです。同じ学科で、二位、三位ともに学校はスイスに存在します。

ローザンヌ・ホテル学校で学ぶ場合、一年のカリュキュラムで約1000万円かかり、さらに全寮制なので莫大な金額が必要となります。ホテル王のご子息たちが修行し、裕福なお嬢様たちが社交界で活躍する土台を作るためにホスピタリティを学ぶのです。また、国の政情不安を逃れるためにアラブの石油王たちの子息が送り込まれることも多いそうです。

これらの学校では学問を学ぶだけでなく、世界中に最強のコネクションを手に入れることができます。その名簿は一生の宝ものとなり、強い味方になるでしょう。どれだけ素晴らしい友人たちを手に入れるかで、人生のクオリティは大きく変化しますから。

■子供だけ国際人にしようとしても意味がない

日本でも、子供にはグローバルマインドを身に付けさせ、言葉も数カ国語話せるようなインターナショナルな人になってもらいたいと考え、そのために海外の学校や国内のインターナショナルスクールに通わせたいという親は多いです。子供向けの留学紹介をしていたのでさまざまなケースを見てきたのですが、驚かされるのは、親は子供に夢を託すだけで自分の成長は考えてないというケースが少なくないこと。英語も話さないような方が多く、私のような通訳者が入れば入学まで問題はないのですが、留学した後何が起こるかまったくイメージされていないのです。

以前私は、フランスのコートダジュールの山側にある幼稚園と小学校を、日本人に向けてPRしていたことがあります。残念ながら経営者が他界されたことで現在休校になっていますが、学校が山を買い取り、動物、植物、昆虫など自然に触れるプログラムが充実している学校でした。子供たちは動物の世話をしたり、畑を耕したり、乗馬レッスンがあったり、牛の乳搾りをしたり……もちろん座学の勉強のカリキュラムもバラエティに富んでいました。現代人に失われがちな、人とのコミュニケーションを大切にしている学校で、食事は畑で採れた野菜を中心に、オーガニック料理を全員でいただきます。この学校には、モナコ公国の後継候補のひとりも通われていました。

ある夏、サマーコースに親子で参加されていたグループのアテンドをしました。月曜から金曜日は子供たちは学校の寄宿舎に入ります。平日は子供の面倒を見る必要がない親達に向けて、語学のレッスンなどオプショナルコースがあるのですが、参加される親はわずか数人だけ。それ以外は、自由な時間を楽しんだり、ブランド店や高級料理店でランチやディナーざんまいといった次第です。帰国した際、「モナコ公国の○○店へ行ってきた」という話題が親達のコミュティーでは重要なことなのでしょう。その間子供は、外国人と接しながら、片言の言葉を使ったり、身振り言語で会話をする知恵をつけはじめます。「私はインターナショナルになれないので、子供だけ成長すれば十分です」とおっしゃるお母様が多いことに驚かされました。親の夢やエゴだけで子供の進路や教育方針を決めることは危険です。そのうち親と子のコミュニケーションは取りづらくなるでしょう。子供に大きな成長を望むなら、親も一緒に成長しなければならないはずです。子供だけに夢を託すのではなく、親も努力をする姿を魅せることを心がけてほしいものです。

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畑中 由利江(はたなか・ゆりえ)
国際マナー研究家
モナコ公国に活動拠点をおく国際マナー研究家。2003年、日本人女性にプロトコールマナーを伝えるスクール「エコール ド プロトコール モナコ」を設立。日本と欧州の文化活動や社会貢献活動の功績に対して、王家騎士団“聖マウリッツオ・ラザロ騎士団”から2016年、Dame(ディム)の称号を得る。モナコ公国アルベール大公が名誉顧問総裁を務める国連提携慈善団体Amitié Sans Frontières Internationale(国境なき友好団)の日本支部代表理事。著書に『ドレスを1枚ぶらさげて』など。

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(国際マナー研究家 畑中 由利江 写真=iStock.com)

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