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消化できなかった「有給休暇」はいつまで残るか

プレジデントオンライン / 2019年11月5日 9時15分

■消滅時効が5年に延びる可能性も

働き方改革の一環で、2019年4月から有休義務化が始まった。ただ、半年を経過した今も、「労働者が有休を取ることが義務化された」と勘違いしている人は多いかもしれない。実は義務を課されたのは、労働者ではなく会社側だ。労務問題に詳しい梅澤康二弁護士は次のように解説する。

「有休取得は法律上、『年休権』の行使にあたります。権利を行使するかどうかは労働者の自由です。ただ、本人に任せるだけでは有休取得が進まなかった。そこで会社側に対して、年10日以上の有休を付与される労働者について、5日の有給休暇を取得させることを義務づけたのです」

この5日間の有休取得は、労働者がこれを自主的に取得していれば、会社は取得させる義務を免れる。なお、有給休暇を取得する権利の消滅時効は2年と考えられている(改正民法の施行で伸長される可能性があるようだ)が、会社が有休を取得させる義務は1年ごとに判断される。2年で10日取らせればOKというものではない点は注意したい。

「労働基準法に年休権の消滅時効に関する規定はありませんが、賃金の消滅時効2年と同じだと考えられています。この点、債権法改正により債権の消滅時効が5年に統一されることを踏まえ、賃金債権についても現行の2年から5年に変更されるのではという議論があります。まだ決まった話ではありませんが、将来、賃金や年休も消滅時効が5年に伸長される可能性は相当程度あるかと思われます」

もしそうなれば、2年でやりくりしていた有休が5年という長期的スパンで設計できるようになるかもしれない。

■会社が未消化分を買い取る場合

年休の未消化分を会社側が買い取ることは法律上、原則として認められていない。有給休暇の制度は、身体を回復させることが目的。金銭的な補填で有給休暇を消滅させることは法律が予定していない。

※写真はイメージです(写真=iStock.com/ooyoo)

「ただ、退職時に有給が未消化の場合は少し違う。会社と労働者の合意による未消化分の買い取りは、法律に違反しないと考えられています」

ただ、これはあくまで労働者と会社の合意が成立する場合のみ。労働者が買い取りを要求する権利も、会社が買い取る義務があるわけでもない。買い取りの見込みがないのであれば、未消化分はきっちり消化してから辞めたほうが賢明といえそうだ。

ウチはブラック企業で、有休は取れない、という人は?

「有給取得の意思は、口頭で表明しても『聞いてない』などと言われるかも。メールなど形の残る手段で連絡するのが適切でしょう。通常は、会社の就業規則などで有給休暇のルールが定められていると思われるので、それが合理的な内容であればルールに従って申請するのが適切です。それでも有給扱いとされず給与が支払われない場合は、証拠のメールや給与明細等を持参して所轄労基署に相談することも、検討に値します」

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村上 敬(むらかみ・けい)
ジャーナリスト
ビジネス誌を中心に、経営論、自己啓発、法律問題など、幅広い分野で取材・執筆活動を展開。スタートアップから日本を代表する大企業まで、経営者インタビューは年間50本を超える。

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(ジャーナリスト 村上 敬 コメンテーター=プラム綜合法律事務所 梅澤康二 図版作成=大橋昭一 写真=iStock.com)

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