20代の結婚観に見る、少子化が止まらない未来
プレジデントオンライン / 2019年10月26日 11時15分
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塩田 亜多夢くん/慶応義塾大学3年生。強い結婚願望も子育て願望もあり。男性
伊藤 光輝くん/法政大学3年生。結婚も子育ても「ぜひしたい」。男性
富山 連太郎くん/上智大学1年生。将来は結婚も子育てもしたい。男性
田中 雪菜さん/明治大学2年生。結婚はしたいが子なしでいたい派。女性
羽山 未来さん/専修大学4年生。結婚願望も子育て願望もゼロ。女性
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■結婚したい男子、苦労は避けたい女子
【原田】僕の若い頃と違って、最近は結婚しない人や子どもを持たない人、あるいは、経済的にそれが厳しいと感じる人が増えてきたね。「結婚して子を持ってこそ一人前」といった社会的プレッシャーも低くなってきている。結婚や子どもに関してはかなり自由度が高い社会になったと思うんだけど、皆は将来どうしたいのかな?
【塩田くん】僕は結婚したいし、子どももできればほしいですね。大学もそのために入りました。結婚後のことを考えたら安定した収入が必要で、そのためには大学を出て就職しなきゃと思ったんです。
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【伊藤くん】僕も結婚したいですね。それで、結婚したらすぐに子どもがほしい。2人の時間は交際中に楽しんでおいて、結婚後は思いきり子育てを楽しみたいです。
【富山くん】同じです。両親が仲よくて楽しそうなので、結婚には憧れがありますね。子どももいたらいいなと思います。
【田中さん】結婚は小さい頃からずっとしたいと思っています。でも、子どものことは前向きに考えられません。子育てにかかる労力やコストを考えると、2人だけのほうがゆとりを持って過ごせそう。だから、子どもがほしい男性とは結婚しないつもりですし、もし結婚後にほしいと言われたら相手の意見も尊重しますが、私は欲しくないと伝えるつもりです。
【羽山さん】私は結婚も子育てもしたくないです。引っ越しが多かったので同じ人とずっと一緒にいることに慣れていないし、きちんと子育てできる自信もありません。1人で生きていくことになるけど、自分のことだけ責任を負えばいいので気楽かなと思います。
【原田】どちらかというと男子のほうが結婚に理想を持っていてけれど、女子のほうが現実的に結婚はハードなモノだ、と考えるようになってきているのかな。君たち世代の女子は、女性も一生働くことになると分かっているので、そうやすやすとは結婚を選択できなくなってきているのかもしれないね。
■若者たちの本音に見る夢と計算
【原田】羽山さん以外の4人は結婚したいんだね。今は一緒にいたいだけなら事実婚という選択肢もあるのに、どうして未だに結婚制度に引かれるのかな。実際、ブロガーのはあちゅうさんの事実婚も話題だし、フランスには事実婚でも結婚と同じ権利が得られる「PACS(パックス)」制度もある。日本もそうなっていく可能性は大いにあると思うんだけど。
【塩田くん】事実婚は、日本だとまだ法整備が追いついていないイメージがあります。それに、結婚って2人の愛のゴールの形かなと。ずっと一緒にいたいっていう気持ちをシンボリックに示せる気がします。
【田中さん】私にとっては、結婚の一番のメリットは体裁がとれることかな。結婚すれば、一緒に住んでも周りからとやかく言われないでしょう。でも、やっぱり憧れもあるんですよね。両親が結婚記念日を祝っている姿を見ると、いいなぁと思うし。
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【伊藤くん】恋人から夫や妻になることで、周りに「一区切りつけた」と示せる気がしますね。なぜ示す必要があるかと言われると、うーん……両親や祖父母も喜ぶだろうし、やっぱり子どもがほしいからかな。
【羽山さん】私は、彼氏はほしいけど結婚はしたくないです。付き合うのも、お互いが経済的にも精神的にも自立していることが大前提なので、事実婚も結婚も何のメリットがあるのかわからないですね。
【原田】男子は愛の形や区切り、女子は体裁やメリット。結婚についてかなり対照的な言葉が出たね。伊藤くんが言った「区切り」は、「けじめ」とも言い換えられると思う。そう考えると、男子はまだ結婚に対して夢があったり、古い道徳観念を受け継いでいたりするように見えるね。ところが、これに対して女子はかなり現実的。どうしてなのかな。
■男女の結婚観の落差はどこで生まれるか
【田中さん】母からいつも「結婚は愛じゃないのよ、お金よ」って言われているからかもしれないです(笑)。でも両親の仲はいいんですよ。
【羽山さん】私は相手のリスクを背負うのが嫌だからかな。それに、結婚すると旦那さんの愚痴を言う女性も多いと思うんですけど、自分は独身のままで「私は楽だよー」って言いたいです。
【原田】なるほど。田中さんは、結婚の先輩であるお母さんからして、かなり現実的なんだね。それと、結婚すると愚痴が増えるのもまた現実。男子とのこの落差は、男女の結婚観の違いでもあると思う。これが若者全体の傾向だとしたら、「結婚したくてもいい相手が見つからない」という人は、今後ますます増えるかもしれないね。
羽山さんは「相手のリスク」というけど、逆に自分のリスクを相手にも背負ってもらえるから、1人より2人のほうが長い人生を安定して送ることができるっていう考えもあると思うんだけどね。まあ、1人で生きる覚悟は昔の女性より今の若者女性の方が持っている人が増えているのかもしれないね。
■子どもとスポーツがしたい男子たち
【原田】もうひとつ気になったのは子どもについて。男子は全員子どもがほしいのに、女子は2人とも「ほしくない」と言い切っているね。男女両方の理由が知りたいな。
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【塩田くん】あくまで「子どもは授かりもの」という認識が強く、何が何でも子どもが欲しいという訳ではないです。ただ、僕は小さい頃野球をやっていて、父とキャッチボールした週末がすごく楽しく幸せな思い出として残っていて、それが幸せな結婚のイメージと直結しています。子どもができたら、男の子でも女の子でも沢山の思い出を築きたいです。
【伊藤くん】僕の両親はよく運動会やバスケの試合に応援に来て、すごく楽しんでいました。あまりの熱心さに恥ずかしい思いもしましたが(笑)、それは僕にとっても親との楽しい思い出なんです。だから、自分も子どもと楽しい思い出を共有したい。スポーツを応援したり一緒に走ったりしたいので、できれば背が高くて、運動神経がいいとうれしいですね。
【富山くん】僕は、両親には苦労させてしまった部分が多いと思いますが、僕がサッカーの試合でゴールしたときや受験で合格したときは僕よりも喜んんでくれて、そんなやりがいが感じられる子育ては楽しいんだろうなと感じるようになりました。
■女子が子どもは欲しくないと言い切る理由
【田中さん】私はずっと働き続けたいんですが、育児と両立できるとは思えなくて……。実際に子育てしている世代を見ると大変そうだし、今の学歴社会の中で、子どもの多様な生き方を応援してあげられる自信もありません。あと、自分が人と仲良くなるのに苦労してきたので、私の遺伝子を受け継いで幸せになれるのかなっていう不安もあります。
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【羽山さん】私は単純に小さい子が苦手なんです。自分の子はかわいいよって言われますけど、もし産んだ後にそう思えなかったら……って不安がある。それに、万が一子育てをしたら「こんなに世話してあげてるのに」と思うか、完全に放任しちゃうか、どっちかになりそうで怖いです。
【原田】羽山さんは、ご両親が離婚していることも関係しているのかもしれないね。田中さんは仕事を優先したい気持ちがあるそうだけど、国が少子化対策や両立支援に取り組んでいることについてはどう思う?
【田中さん】国のために子どもを産む気にはなれないですね。まだ大したこともしてもらっていないのに恩返ししてって言われても、子育ての大変さを考えたらとてもその気にはなれないです。
【原田】子どもについても、男子は夢があるのに女子はまったくないね。印象的だったのは、女子は子どもを持つことの楽しさよりも、子育ての大変さのほうに意識が向いていること。一方、男子は子どもとの「楽しい思い出づくり」がメインになっている。結婚と同じように、意識に大きな隔たりがあって、少子化が進むのも当然の結果に思えるよ。
若者たちの意見を聞いて、これでは未婚率の上昇も少子化も止まらないと思いました。国の施策も、上の世代の苦労を見てきた若い女性たちの意識を変えるには至っていないようです。その反面、若い男性は子どもとのキャッチボールを楽しみにするなど、子育てに夢を持っていると言えるでしょう。この隔たりは、理想の結婚相手や結婚後の生活についても同じなのか、これからしっかり探っていきたいと思います。
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マーケティングアナリスト
1977年生まれ。慶應義塾大学商学部卒業後、博報堂に入社。ストラテジックプランニング局、博報堂生活総合研究所、研究開発局を経て、博報堂ブランドデザイン若者研究所リーダー。2018年よりマーケティングアナリストとして活動。2003年、JAAA広告賞・新人部門賞を受賞。著書に『平成トレンド史』『それ、なんで流行ってるの?』『新・オタク経済』などがある。2019年1月より渡辺プロダクションに所属し、現在、TBS「ひるおび」、フジテレビ「新週刊フジテレビ批評」、日本テレビ「バンキシャ」等に出演中。
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(マーケティングアナリスト 原田 曜平 写真=iStock.com/mbbirdy)
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