40代の多くが中絶、意図せぬ妊娠を避けるには
プレジデントオンライン / 2019年10月20日 11時15分
■30代、40代でも、正しい避妊知識のない人が多数!
妊娠できないと悩む女性がいる一方、意図しない妊娠に悩む女性もいる。厚生労働省発表の平成29年(2017)度「衛生行政報告書」によると、人工妊娠中絶件数は約18万2000件(図表1参照)。50年前の昭和30年代と比べれば格段に減少しているものの、平成29年度の出生数、約96万6000人からみれば(図表2参照)、その約5分の1にあたる数の妊娠が何らかの理由で継続されていないということになる。もちろん、胎児の発育不全などにより妊娠継続が不可能になったり、母体への負担が多すぎて継続できなかったりする場合もある。が、大半が「意図しない妊娠」による中絶というのが現実だ。
「統計では、中絶を実施するのは20代がもっとも多く、次に30代が続きます。40代は妊娠率そのものが低く母数が少ないため、統計上は低いように見えますが、妊娠中絶を選択する率は20代よりも多いトップとなっています」と、話すのは、「アヴェニューウィメンズクリニック」院長の福山千代子医師。40代だからといって絶対に妊娠しないと思い込むのは危険だという。
「日本では、性に関することをタブー視している家庭もあるようで、親から避妊などの知識を得る機会はほとんどないと言っても過言ではないでしょう。男女ともに『中出ししなければ大丈夫』と、間違った知識のままコンドームなどの避妊具をまったく使用せずに性行為へと進めば、妊娠する可能性が高くなるのは当然です」
こういった間違った知識を持つのは、10代、20代の若い世代ばかりではなく、30代、40代でも正しい避妊の知識を持ち得ていない人は多いと語る。
■自分に合った避妊方法を知ることで、描いた人生設計が円滑に
現在日本で用いられている避妊法はさまざまな種類があるが、年齢や生活習慣、将来の出産予定やパートナーの協力度によって、それぞれに適した方法を選ぶことが大切だ。
まず、もっともポピュラーな避妊法は、「コンドーム」の使用。学校の性教育でもおなじみの誰もが知っている避妊具であり、正しく装着すれば、精子を膣内に進入させることなく、さらに性感染症の予防にも役立つ。ただし、男性側にしっかりとした避妊意識があれば別だが、性行為に至っている中でコンドーム着用を男性にお願いするのは、相手の機嫌を損ねムードを壊すのではと、なかなか言い出せない女性も多い。性感染症への罹患リスクの予防にはもっとも効果が高いが、男性の決断に依存する点から考えると、確実に避妊できるとは言い難い。
コンドーム(ラテックス製男性用避妊具)
メリット
●膣内への精子の進入を阻止
●細菌やウィルスによる性感染症を予防
●手軽に購入できる
デメリット
●膣挿入前の装着が必要
●装着・使用方法により精子が漏れる危険
●男性に使用決定権がある
失敗率
(正しい利用により)2%
(一般的な利用法により)18%
出典:MSDマニュアル家庭版「バリア法による避妊方法」を参考に編集部作成
意図しない妊娠を避けるには、男性に使用決定権があるコンドームより、女性自身の意志で使用できる避妊薬や避妊具が必要になる。その代表格が、経口避妊薬「ピル」だ。
「以前に比べ『ピル』への抵抗感は低くなってきましたが、それでもまだ『ピルは太る』『ピルは怖いもの』といった古いイメージを持っている女性も多いですね。現在は、低用量のピルを処方するのが一般的。避妊目的はもちろん、生理痛の軽減、生理不順の改善にも効果があることを知ってほしいですね」
ピルは、経口避妊薬として一般的に利用されているが、毎日正しく服用する必要があり、つい飲み忘れてしまうという人も少なくない。飲み忘れた場合には、妊娠する可能性はあるのだろうか。
「3日間連続で飲み忘れた場合は、排卵が再開し妊娠する可能性はあります。自己判断で再開せず、飲み忘れた場合は速やかに医師に相談し、再開できるか否かの判断を仰ぎましょう」
ピルの服用忘れで妊娠し、そのままピルを飲み続けて妊娠していることに気づかなかった女性の例もあるそう。ピルを選択した場合は、くれぐれも飲み忘れには注意したい。ただし、血栓症のリスクが高まるため、低用量ピルの服用は40歳までが適用範囲だそうだ。
OC(低用量経口避妊薬)
メリット
●毎日の正しい服用で、高い避妊効果を発揮可能
●経血量の減少、月経痛の緩和など
●未産婦でも使用できる
デメリット
●服用初期に、吐き気・頭痛などが出現する場合も
●授乳中は使用できない期間がある
●飲み忘れにより、避妊効果が脆弱する
失敗率
(理想的な利用により)0.3%
(飲み忘れなどある場合)9.0%
出典:バイエル薬品冊子「IUS」より一部編集
■装着すれば5年そのままでOKの、子宮内避妊具も登場!
出産経験があり、ピルでは毎日の服用が煩わしいと感じる女性には、子宮内避妊具がオススメだ。
「ピル以外で女性が行う避妊方法には、IUD(子宮内避妊具)と呼ばれる器具を子宮内に装着するタイプがあり、今はT字型のものが主流。さらに同じT字型でも、黄体ホルモンが付加されたIUS(子宮内黄体ホルモン放出システム)が最近注目されています」
IUSは、黄体ホルモンを子宮内に持続的に放出するシステム。子宮の入り口の粘膜を変化させることで、精子が膣内から子宮内へ進入するのを妨いだり、子宮内膜を薄くすることで、受精卵の着床を妨いだりする。避妊効果はもちろん、経血量を減らし、月経痛を軽くする効果もある。また、装着後は最長5年間効果が持続するため、ライフプランが立てやすいのも特徴。装着をやめればすぐに妊娠が可能になるという。
「40歳まではピルを服用し、それ以降、50歳くらいまではIUSを利用するのがいいでしょう。40代だからといって絶対に妊娠しないわけではありません。すでに子どもがいて、それ以上子どもを望まないのであれば、IUSで確実に避妊を。もちろん、20代、30代の経産婦でも、次の妊娠はまだ先と考えている人、ピルを毎日飲むのが面倒と感じる人には、IUSがオススメです」
未産婦でも相談に応じてくれる場合もあるので、興味のある人は、まずは婦人科の医師へ相談してみよう。
銅付加IUD(子宮内避妊用具)
メリット
●1度の装着で数年にわたる長期の避妊が可能
●毎日避妊のことを考える必要がない
●授乳中でも使用できる
デメリット
●経血量が増えることがある
●医師による装着・除去が必要
失敗率
(理想的な使用により)0.6%
(一般的な使用により)0.8%
IUS(子宮内黄体ホルモン放出システム)
メリット
●1度の装着で数年にわたる長期の避妊が可能
●毎日避妊のことを考える必要がない
●経血量が減少する
●月経痛が軽減する
デメリット
●装着後初期に月経時以外の出血が続くことも
●医師による装着・除去が必要
失敗率
(理想的な使用により)0.2%
(一般的な使用により)0.2%
出典:バイエル薬品冊子「IUS」より一部編集
万が一、避妊をせずに性行為に至ってしまった場合(コンドームの破損、レイプなどの性被害など含む)、妊娠の可能性におびえる女性もいるだろう。そんなときは、速やかに婦人科を受診し、緊急避妊用「アフターピル」を処方してもらおう。「アフターピル」は排卵を遅らせる(または排卵させない)、受精卵を着床させない作用により、妊娠を回避するもの。ただし、性行為後72時間以内のなるべく早くに服用するのがマストで、それ以降は効果が低下するそうなので注意が必要だ。
アフターピル(緊急避妊薬)
メリット
●無防備な性行為後の妊娠の可能性を低減
※服用しても妊娠する可能性がある
デメリット
●性行為後、72時間(3日)以内の服用がマスト
●計画的な避妊には使用不可
●医療機関での受診・処方が必要
●服用後24時間は授乳禁止
妊娠阻害率
84%(排卵日付近での性交で妊娠を防ぐ率)
出典:KEGG HP内「ノルレボ」医薬品情報を参考に編集部作成
ライフプランを円滑に進め、心軽やかに人生を送るため「避妊」は大切な要素となるが、いずれの避妊方法も100%避妊できるとは限らない。中絶を選択したことで悩み続ける女性も多い。意図しない妊娠リスクはもちろん、病気リスクを下げるためにも、20代から「かかりつけ婦人科医」を持ち相談することが大切。また、親に知識や情報がなければ、子も正しい知識を持つ機会が少なくなる。もし、あなたに娘がいるならば小学生の頃から妊娠の仕組みや知識を段階に応じて積極的に与えることも大切。そして、自分に合った避妊方法を選びとる知恵をつけることも母親の務めだろう。
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産科婦人科専門医
アヴェニューウィメンズスクリニック院長
金沢医科大卒。2009年11月、同院院長に就任。あらゆる角度からの更年期治療に精通。女性ホルモンに影響され、さまざまな不調や悩みを抱える女性のイキイキとした暮らしを応援すべく診察にあたる。
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(プレジデントウーマン編集部 戌亥 真美 写真=iStock.com)
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