巨大台風の次は、東京大震災に富士山大爆発か
プレジデントオンライン / 2019年10月30日 17時15分
■巨大台風の次は、東京大震災に富士山大爆発
2019年10月中旬、日本列島を巨大台風19号が襲った。15日現在で東北から東海地方にかけ75人以上の死亡が確認され、国土交通省の調べでは川の氾濫も国管理の24河川、16都県管理の207河川で発生した。東京都でも死者が1人出たほか、多摩川の水が溢れ出すなど多くの混乱を呼んだ。しかし地球科学者の鎌田浩毅氏は、2020年ころ東京にもっと深刻な災害がくる可能性を指摘する。その真意とは──。
■本当に大変なのはこれからだ!
日本列島を襲った台風19号による豪雨で、東海から東北地方までの広い範囲で甚大な被害が出た。暴風雨のさなかの10月12日夕刻には千葉県南東沖でマグニチュード(以下Mと略記)5.7の地震が発生し、千葉県南部は震度4の揺れに見舞われた。地球科学を専門とする私は肝を冷やしたのだが、今後の防災上懸念される「複合災害」に注意を喚起したい。
千葉県南東沖ではここ数年地震が頻発し、「首都直下地震」に連動するのではないかと心配されている。というのは、8年前に発生した東日本大震災以降、日本列島の地盤に歪みが生じ、その歪みを解消しようと、地震が至る所で起きている。震災以前に比べて直下型地震の頻度が増加した。日本列島は「大地変動の時代」に入ったのだ。
■首都直下地震がいつ起きてもおかしくない
実は、地震の多い時期は平安時代にもあった。869年には東日本大震災と同じ海の震源域で巨大地震(貞観地震)が発生した。その9年後の878年にはM7.4の内陸直下型地震(相模・武蔵地震)が起きた。現代に置き換えると首都直下地震が20年に起きる計算になる。もちろん、その通りになるわけでは決してないが、首都直下地震がいつ起きてもおかしくない状況にあるのも確かで、甚大な被害が予想されている。
![](https://president.jp/mwimgs/9/7/300/img_97454eb3b70689d6840c1380f9130f80210396.jpg)
たとえば、震度7の揺れに見舞われる最悪のケースでは、犠牲者2万3000人、うち火災による犠牲者1万6000人、全壊・焼失建物61万棟、経済被害112兆円と想定されている。
さらに、環状6号―8号線間の木造住宅密集地域は、火災が起きやすいので特に注意が必要だ。大正時代の関東大震災では犠牲者10万人のうち9割が火災により亡くなった。高層ビルが多い都心部では、ビル風によって竜巻状の炎を伴う旋風が次々と発生し、地震以上の犠牲者を出す恐れがある。
もう1つ、近い将来確実に襲ってくる南海トラフ巨大地震にも同様の危険性がある。これは東海・東南海・南海の3地震が同時に発生する連動型の地震で、いわゆる「西日本大震災」となる。その発生時期は、古地震やシミュレーション結果を総合判断して35年±5年頃に起きると予想される。国の被害想定では、東日本大震災を超えるマグニチュード9.1、また海岸を襲う津波の最大高は34メートルに達する。おまけに震源域の南海トラフは海岸に近いので、巨大津波が一番早いところでは2~3分で襲ってくる。
九州から関東までの広い範囲で大揺れをもたらし、最大震度の震度7を被る地域が10県にまたがる。その結果、犠牲者の総数32万人、全壊する建物238万棟、経済被害は220兆円を超えるとされる。東日本大震災の被害額は20兆円ほどなので、西日本大震災が一桁大きいことは必定だ。つまり、太平洋ベルト地帯を直撃することは確実で、全人口の半分近い6000万人が深刻な影響を受ける。
さらに、江戸時代には南海トラフ巨大地震によって富士山地下にあるマグマが不安定になり、大噴火を起こした例もある。このときは江戸に5センチメートルの火山灰が降り積もり、一カ月ほど大混乱になった(拙著『富士山噴火と南海トラフ』)。これは巨大地震と噴火の複合災害だが、「大地変動の時代」に入った日本ではこれまでと異なる状況を想定しなければならない。
今回の豪雨で緩んだ地盤が、首都直下地震や南海トラフ巨大地震の激しい揺れで被害が増幅する「複合災害」が最も心配だ。折しも太平洋の海水面温度が上がっているので気象災害は今後も避けられない。複合災害を最小限に抑えるという観点で台風が去った後も警戒を緩めないでいただきたい。
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京都大学大学院 人間・環境学研究科教授
1955年生まれ。東京大学理学部地学科卒業。97年より京都大学大学院人間・環境学研究科教授。理学博士。専門は火山学、地球科学。著書に『座右の古典』(ちくま文庫)、『理科系の読書術』(中公新書)、『読まずにすませる読書術』(SB新書)、『火山噴火』(岩波新書)など。
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(京都大学大学院 人間・環境学研究科教授 鎌田 浩毅 写真=時事通信フォト)
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