SNSの投稿に必死になっている時間は「ゴミ」だ
プレジデントオンライン / 2019年10月31日 11時15分
※本稿は、成毛眞『一秒で捨てろ!』(PHPビジネス新書)の一部を再編集したものです。
■形のないものにも「不要なもの」はある
少し前からの「断捨離」ブーム、「こんまり(近藤麻理恵さん)」ブームに乗って、自宅の不用品をすっきり片付けたという人もいるだろう。そのトレンドには私も賛同する。だが、私が言う「不要なもの」とは、形のあるものだけを指しているわけではない。むしろ無形のもののことだ。
たとえば、以下のようなものである。
●断ち切りたくてもなかなか断ち切れない人間関係のしがらみ
●常識だと思い込んでいるが、じつはそうではない固定観念
●朝から晩までせっせと集めているわりに、1ミリも役に立っていない情報
●ヒマさえあれば投稿しているが、「いいね」がまったくつかないSNS……。
いかがだろう。あなたは、こうした「不要なもの」をため込んでいない、と断言できるだろうか。ムダな仕事をするのも、何の得にもならない人間関係を続けるのも、固定観念にしばられ続けるのも、無為に情報を集め続けるのも、どうでもいいSNSの投稿を続けるのも、別に自由じゃないかと言われれば、それまでだ。好きでやっているなら、私も止めはしない。
だが、そうした「不要なもの」によって、人生の貴重な時間をムダにしたり、足を引っ張られたりすることは、少なくない。また、場合によっては、人様に迷惑をかけることもある。しかも厄介なことに、それらを“大事なもの”と勝手に思い込んでいるフシがある。
断言しよう。それは“ゴミ”だ。
これから何十年と人生があると考えたら、一度ぐらいは立ち止まって、検証したほうがいいのではないか、というのが、私の主張だ。
■5年以上前に買ったパソコンはゴミ
時間や人間関係といった「無形」のムダが多い人は、「有形」のものに関しても不要なものをためこんでいる場合が多い。
「不要なもの」の筆頭は、「古いもの」である。次の質問に答えてみてほしい。
●5年以上前に買ったパソコン
●消費税5%時代(1997年4月~2014年3月)に買った液晶テレビ
●これまた消費税5%時代に買ったハードディスクドライブ(HDD)プレーヤー
●かれこれ10年以上乗り続けているマイカー
読者の皆さんが持っている私物のなかで、当てはまるものは、いくつあるだろうか。
1つや2つならともかく、4つも5つも該当するとしたら、正直言って、かなりヤバイ。“終わっている”と自覚したほうがいい。
「終わっているなんて失礼だ。私は物を大事にしたいだけだ」と言うなら、別にムリして捨てる必要はない。あなたの自由である。
ただし、この先、ビジネスの世界で生き残っていきたいならば、悪いことは言わない。古いものを捨てて、新しいものをどんどん使うべきだ。
なぜか。それは、古いものを積極的に捨てる意識をもたないと、世の中の変化についていけなくなるからだ。いや、あなたが気づいていないだけで、すでに変化についていけなくなっているかもしれない。
■捨てられないのは保守的になっている証拠
時代の流れに取り残されないためには、とにかく、新しいものを積極的に使ってみる。これが大切である。わかっているにもかかわらず、現実的には、新しいものを取り入れるのに消極的な人が多い。消極的になる理由は、「捨てない」からだ。
捨てないというのは、「いま持っているもので間に合っているから、捨てる必要がない」という物理的な意味合いもあるが、実際には、精神的な側面が大きい。使い慣れたものを使い続けたほうがストレスを感じずに済む、あるいは失敗することがないと思うから、「捨てない」のではないか。
「長年使ってきて愛着がある」とか「昔の考え方にも良い面はある」とか、理由はさまざまだが、なんのことはない、たんに保守的になっているだけだ。
歳をとればとるほど、このような傾向は強まっていく。しかし、それを放置していることは、ビジネスをしていくうえでは、危険極まりない。感性はどんどん鈍っていき、時代とズレにズレていく。
女性は、20代のときに覚えた化粧の方法を一生続けると言われる。若い頃と変わらない化粧をしている40代、50代の女性が「これが最新のやり方だ」と言って、若者に自分の化粧方法を教えたら、どう思うだろうか。間違いなく、ウザがられるだろう。
■捨てられない人は経済的に差をつけられる
新しいものを使うことを放棄したミドルエイジも同様である。もしもあなたがクタクタの古いシャツを着て、「ガラケー」を手に仕事をしていたら、若手社員から冷ややかな目を向けられるはずだ。部下は心の底で「この人の下で働いて、大丈夫か」と不安に思う。そして何も言わずに、会社を去っていく。
人間社会では同じような人が集まるものだが、感度が鈍い会社には、感度の鈍い人ばかりが集まるようになる。すると、精神的には安定するかもしれないが、他社の社員とはまったく話が合わなくなり、世界は狭くなっていく。
そうして、捨てる人と捨てない人の差は開いていき、それがやがて経済的格差につながっていくのだ。
それがイヤなら、捨てるしかない。古いものを捨てて、新しいものを使うことは、自分の感度をつねにフレッシュにするための第一歩なのである。
「捨てる」ことが重要なのは、ものだけでなく、考え方や知識も同様だ。最近、「アンラーニング」という言葉を耳にするようになった。これは、「学習棄却」という意味で、いまの時代に合った考え方や知識を身につけるには、これまで学んだ考え方や知識に上書きをするのではなく、いったんそれらを捨て去って、新たに学び直すことが必要だという考え方だという。
私は、中高年の学び直しに関しては否定的だが、この考え方には同意する。古くさ
い考え方や知識は、新たな学びのジャマになるだけだ。どんどん捨てて構わない。
■ときめかない常識やスタイルは捨てろ
近年は「捨てる」に関するブームがいくつも起きている。「ミニマリスト」という言葉がよく言われるようになったし、「捨てる技術」や「断捨離」の本もヒットした。さらに、その流れで登場したのが、「こんまり」だ。
![](https://president.jp/mwimgs/8/b/200/img_8b8e1f5a5755ba1ee1c791c5a967b4e492409.jpg)
こんまりが支持されたのは、「ときめかないものは捨てて良い」と、捨てられない人の背中を押してくれたことだ。
捨てるというと、「エコと逆行している」「もったいない」となり、ポイポイ捨てるのは、後ろめたい行為ではあった。それを「ときめかないならOK」と言ってくれたことで、罪悪感が薄まったわけだ。ものがあふれているのは、日本だけでなく、世界的に言えることだからだろう。
また、メルカリのようなフリマアプリやネットオークションの登場も、「捨てる」ブームに拍車をかけている。たとえ大した収入にならなくても、「誰かに使ってもらえば、成仏する」という思い込みにより、ものを手放すことに後ろめたさがなくなるからだ。
このようなトレンドのなかでは、捨てる意識をもつのは容易なはずである。にもかかわらず、捨てる意識をいまだにもてない人は多いようだ。また、ものは捨てられても、ビジネスの領域までは捨てる意識をもてないという人も多いようである。
しかし、自分を取り巻くあらゆる場面で「捨てる」を意識することが何より必要だ。
その意識の差が、自分の運命を決めると言っても過言ではないことは、本稿を読んで理解いただけたと思う。
ビジネスパーソンは、捨てるトレンドに乗り、自分がときめかない常識やスタイルはどんどんすてるべきだ。そう、「ビジネス版こんまり」を目指せ、と声を大にして言いたい。
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書評サイト HONZ代表
1955年、北海道生まれ。中央大商学部卒。マイクロソフト社長を経て投資コンサルティング会社インスパイアを創業。書評家としても活躍。著書に『黄金のアウトプット術 インプットした情報を「お金」に変える』『定年まで待つな!』『amazon』など。
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(書評サイト HONZ代表 成毛 眞)
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