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「次の経産相も菅派」で響く安倍内閣の不協和音

プレジデントオンライン / 2019年10月28日 15時15分

安倍晋三首相に辞表提出後、記者団の質問に答える菅原一秀経済産業相(中央)=2019年10月25日、国会内 - 写真=時事通信フォト

■ダメージが大きいのは安倍首相よりも菅官房長官

菅原一秀経済産業大臣が10月25日、安倍晋三首相に辞表を提出した。公設秘書が支援者の通夜で香典を渡したことで公職選挙法違反が指摘されたのを受けた引責辞任だ。

第4次安倍再改造内閣の発足から1カ月あまりでの閣僚辞任は、安倍政権にとっては打撃となる。ただし、ダメージを負ったのは安倍首相だけではない。菅原氏の後見人だった菅義偉官房長官のほうが、はるかにダメージは大きい。「菅原辞任劇」は、菅氏の今後の政治人生にも影響を及ぼしかねない。

■メロン、カニ、香典をせっせと配る「日本のタマネギ男」

「ただいま、安倍総理に辞表を提出してまいりました。私の問題に関して国会が停滞するということは、私の本意ではありません。懸案山積にも関わらず職を辞するのは慚愧に堪えない」

25日朝、国会内で菅原氏は記者団にこう語った。

菅原大臣をめぐっては、地元有権者へのメロンやカニなどの贈答、そして支援者の葬儀に秘書が香典を持参していたことを「週刊文春」が報じていた。疑惑が次々と出てくることから、韓国で法相辞任に追い込まれた曺国(チョグク)氏に擬せられ「日本のタマネギ男」などと呼ばれていた。

菅原氏は24日深夜まで25日の衆院経済産業委員会で答弁に立つ準備をしていた。親しい同僚議員に「明日はきちんと説明する」と語っている。

わずか半日あまりでの状況の変化。菅原氏は「一晩考えたが、今朝、自ら決意した」と説明する。しかし、辞任発表からわずか数十分で後任の経済産業相に梶山弘志氏が就任することが発表されたことを考えると、首相官邸側が背後で外堀を埋めた、事実上の更迭劇だったと考えるのが自然だ。

■「任命責任」を認めながら、責任を取るそぶりもみせない

それにしても「過去何度も見た光景」だった。後援会の観劇費用を一部負担していたと指摘されて経産相を辞任した小渕優子氏、名前入りの「うちわ」を有権者らに配布して法相を辞任した松島みどり氏……。「政治とカネ」で辞任した閣僚は後を絶たない。

その多くは、疑惑そのものに対する説明責任を果たさず「国会が停滞する責任」を理由に辞任。安倍氏は「任命責任」を認めながら、具体的な責任を取るそぶりもみせない。この手法が政権へのダメージが一番少ないというのが、長い政権運営の下で導き出された結論なのだ。今回も、従来通りのシナリオに沿って辞任劇は進んだ。

■菅原氏の辞任で「菅バブル」がはじけた

更迭された菅原氏は、どういう人物なのか。その件に関しては内閣改造直後の9月15日の記事「次の首相の最有力が『令和おじさん』である根拠」を参照いただきたい。

9月に発足した内閣には、無派閥の閣僚が6人いる。その中の1人は菅義偉官房長官だが、他の5人も大部分が事実上の「菅派」であることを紹介した。そして、代表的な「菅派」議員が菅原氏だった。

菅原氏は、菅氏の親衛隊的な役割の勉強会「令和の会」の中心メンバーで、尊敬する政治家は菅氏であると言ってはばからない。9月の内閣改造での入閣も、菅氏の力添えがあったことは間違いないだろう。

その菅原氏がスキャンダルで失脚した。その事実は菅氏にとってもダメージとなる。菅氏は、記者会見で新元号「令和」を発表以来、知名度が急上昇し「ポスト安倍」の有力候補として注目されるようになったが、菅原氏の辞任で「菅バブル」がはじけたといえるかもしれない。

■菅氏に対する「やっかみ」が党内に充満していた

今回、野党から集中砲火を浴びる菅原氏に対し自民党内からも「完全にアウトだ」などという冷ややかな声が多かった。次々に疑惑が露呈したことで、守り切れない状況だったのも事実だが、根底には菅氏に対するやっかみのようなものが党内に充満していたように思われる。

官房長官として霞が関を掌握し、党内でも50人近い「隠れ菅派」を持つといわれる菅氏に対し、党内では警戒感が強まっている。その警戒感が、菅氏の側近を自任する菅原氏にも向けられていたのだ。そう考えると、菅原氏の辞任劇は、自民党内で「反菅」勢力が増幅してきたことを示しているのかもしれない。

今回、菅原氏の更迭を最終判断したのは菅氏だったと言われる。守り切れないと見切れば、側近とはいえ早いうちに対応する。鮮やかで冷徹なリスクマネジメントと言えよう。ただしその後の対応には首をかしげざるを得ない。

■「菅派」の後にまた「菅派」を許した背景

菅原氏の後任の梶山氏の父は官房長官などを歴任した故・梶山静六氏。故・橋本龍太郎氏、故・小渕恵三氏や小沢一郎氏らとともに「竹下派七奉行」と呼ばれた剛腕政治家だった。菅氏は、梶山氏を政治の師とあおいでおり、静六氏の死後は、弘志氏をかわいがっている。

失敗した「菅派」・菅原氏の後に、やはり「菅派」の梶山氏が就任する。菅氏に対するジェラシーはますます強くなる懸念がある。今回の人事に当たり、菅氏が梶山氏を強引にねじ込んだという事実はない。しかし、自身の側近の不祥事で自民党に多大な迷惑をかけたことを鑑みれば、後継には菅派とみられる人物は起用しないように安倍氏に進言するのが本来の姿ではなかったか。

苦労人である菅氏は、「気配りの人」として現在の地位を気づいてきた。しかし、今年に入り求心力が高まったことと平仄(ひょうそく)を合わせるように「人が変わった」というような批判の声も聞こえ始めている。その批判に対し、どう答えるか。

(プレジデントオンライン編集部)

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