「巨乳に見える服着るな」教員いじめの低レベル

プレジデントオンライン / 2019年10月29日 6時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/karimitsu

神戸市立東須磨小学校の教員間いじめ問題が波紋を広げている。教育アドバイザーの鳥居りんこ氏は「私が学校現場を取材した経験からすれば、この問題は氷山の一角にすぎない。どの学校にもこうした問題の遠因となる“職員室カースト”が存在しているからだ」という——。

■実は「教員間いじめ」はフツーの光景だった

神戸市立東須磨小学校の4人の教員が20代の男性教員に対して激辛カレーを無理やり食べさせたり、暴行をふるったりしていた問題。「いじめはいけない」と指導すべき立場の教員たちの行動も異様だが、その上に学校責任者である校長が、この件を知っていながら、長期にわたり放置し続けたという事態に驚いた人は多いだろう。

この常軌を逸した職場環境はこの小学校だけの特殊な出来事なのだろうか。

主に中学・高校の現場取材を続けている筆者は、この問題は氷山の一角にすぎないと捉えている。なぜならば、どの学校にも多かれ少なかれ「職員室カースト」があるからだ。

学校は一般社会とは“隔離された環境”であるため、ヒエラルキーが固定化しやすい。それは教室(=生徒)だけではなく、職員室(=教師)にもあてはまる。一度、澱(よど)みだすと、その水を浄化させる機能がほとんどないということは昔からの教育現場の問題点のひとつだった。

■「胸が大きく見える服装をしている」といちゃもんをつける

東須磨小学校の事件の原因には“神戸方式”という人事異動があるといわれる。

つまり、校長がお気に入りの教員を他校から招き寄せることができるのだ。これは、私立学校では、むしろ普通に行われていることである。これの問題点は、いつしかそれが負のエネルギーを持つ「お友だち」の集団に変化する可能性があるということであろう。この「お友だち」の関係が実に微妙なのだ。

ある中高一貫校ではこういうことが起きた。

やり手と評される女帝教員が系列校から、腹心の部下たちを連れて着任してきた。ところが、この中に女帝の虎の威を借りるだけの「勘違い女史」が含まれていたという。

この「勘違い女史」の標的になったのが若手教員たちだ。その中でも、特に女性には勘違い女史の当たりがきつく、「胸が大きく見える服装をしている」「男性教員と仲良くしている」などという“いちゃもん”を付けては、何人もの教員を退職に追い込む実績を作り上げていった。

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当然、問題になるが、勘違い女史はそのたびに女帝に泣きつき、自分が被害者のようにふるまう。女帝は「不始末」はすべて「部下のせい」で君臨してきた経歴を持つため、「すべて自分は関与せず」=「問題なし」として処理。中には労働裁判に発展した案件もあったが、結局、責任の所在がうやむやとなり、現在も女帝と勘違い女史は同じポジションを維持している。いい迷惑なのは、こういう内部闘争に巻き込まれる生徒である。

■生え抜き教員vs新参者教員の権力闘争

また、こんな話もある。

業界関係者からは「お飾り」と揶揄(やゆ)される校長がヘッドハンティングと称してある教員を連れてきた。ところが程なく仕事ができないことが露呈。あまりのひどさに生え抜きたちが校長にご注進しても、校長は“お友だち”をかばっているという。

こうなると、当然「真面目にやるほうが損」という空気が生まれ、生え抜きたちは“お友だち人事”を無視すべくより結束を固めているそうだ。

このように職員室での“先住民”教員と新参者教員の権力闘争は、傍観者をも巻き込む形で頻発しているのが実情だろう。

ある中学に新参者という立場で異動したベテラン教員はこう証言する。

「自分はある学校の“帝王”的な存在の人物から『改革をしてくれ!』と請われて行ったのですが、“先住民”からの嫌がらせは当たり前のようにありました。作成したデータや文書をPCのゴミ箱に放り込まれるなど序の口。書類を隠す、電話を取り次がない、挨拶(あいさつ)をしても集団で無視、生徒の前で『使えない』呼ばわりなどの“歓迎行事”が続きましたね。あまりに幼稚なので、他の学校に移りましたが、そこでもいろいろありますよ……。結論としては、職員室内の“いじめ”はありますし、その対処法はないです」

■ヒエラルキーの上位に君臨する意外な教員

一般社会から見ると「どうして上の者が注意できないのか?」と不思議に感じる。だが、それがなかなかできない。教員は一種の職人だからだ。教員はよくも悪くも一国一城の主といった意識が学校内にはある。

例えば、自分の受け持ちクラスには責任を持つが、隣のクラスのことは知らない。責任も持たない。ゆえに、その指導テクニックは“門外不出の奥義”。さらに、同じ学校内の出来事であっても、そこここに“治外法権”が張り巡らされているなどの特徴がある。

写真=iStock.com/GlobalStock
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要は管理職であっても、簡単には「指導」「注意」「警告」という行動には出にくい社会なのだ。

学校には校長と教頭といった管理職は存在するが、トップ以外の教員たちとは互いの「○○先生」と呼び合う横並びの関係に見える。ただ、力関係の上下はしっかりある。「生徒をまとめる能力がある」「学校トップに好かれている」「押しが強い」など、目に見えない“圧力”を持つ教員がヒエラルキーの上層部として君臨するのだ。しかも、一度、ヒエラルキーの下層部に認定されると、意見を言える空気は皆無になるという。

■「やるだけ損・やっても無意味」という「ことなかれ教員」を大量産出

加えて、学校は営業成績や前年比などの数字には左右されない世界。逆に言えば、学校や生徒のために身をていして仕事をしたとしても、その貢献度は評価をされにくいのだ。また、よほどでない限りは教員免許も剥奪されず、雇用も安泰だ。

これらが複雑に絡み合い、強固なヒエラルキーが形成され、「やるだけ損」「やっても無意味」という「ことなかれ教員」を大量に産出することになる。そして、そうした空気がやがては東須磨小学校の教員暴行傷害事件といった、一部の教員の暴走を許す土壌となっているのである。

■心ある先生方が「やる気の搾取」されない仕組み作り急務

しかし、筆者が現実に接している先生方の多くは、情熱を持って、献身的に仕事に取り組んでいる。ある私立中高一貫校で勤続25年を数えるベテランの先生はこう言った。

※写真はイメージです(写真=iStock.com/Satoshi-K)

「なりたいと思ってなった教員という職業。この仕事をどう職場で楽しんでいくかだと思います。目の前の慕ってくれる在校生や卒業生、彼らのためにもこの母校を失くしてはならないという、個人的な使命感から自分は、何があろうとも職場に残って、心が通じ合う教員仲間と共にこの学校を支えていくつもりです」

「OECD国際教員指導環境調査(TALIS)2018」でも明らかになったように、日本の教員の仕事時間は世界一長く、中でも、部活動や事務が負担になっているとの結果が出ている。国は2019年1月25日の中央教育審議会答申を受けて、「学校の働き方改革」を推し進めている。

心ある先生方が「やる気の搾取」をされることなく、本来の業務である授業準備や児童・生徒と向き合えるに十分な時間を確保して、やりがいを持って職務に励めるようになってほしい。そのためには、文部科学省や教育委員会から現場の学校へ、というトップダウンだけでなく、現場発信のボトムアップができる、透明性を伴った環境づくりが必要であることは言うまでもない。

少子化を踏まえ、学校存続の危機が叫ばれている中、これまで以上に、学校トップの責任は重くなるだろう。今回の事件を「他山の石」とできるような「教育の使命・ビジョン」を持った学校が増えることを期待したいところだ。

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鳥居 りんこ(とりい・りんこ)
エッセイスト、教育・子育てアドバイザー、受験カウンセラー、介護アドバイザー
執筆、講演活動を軸に悩める母たちを応援している。著作としては「偏差値30からの中学受験シリーズ」(学研)、「ノープロブレム 答えのない子育て」(学研)、「主婦が仕事を探すということ」(東洋経済新報社 共著)などがある。最新刊は「鳥居りんこの親の介護は知らなきゃバカ見ることだらけ」(ダイヤモンド社)。ブログは「湘南オバちゃんクラブ」「Facebook 鳥居りんこ」。

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(エッセイスト、教育・子育てアドバイザー、受験カウンセラー、介護アドバイザー 鳥居 りんこ)

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