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「死ぬのが怖くて眠れない夜」に読むべき名著

プレジデントオンライン / 2019年12月14日 15時15分

ダンテ 著、平川祐弘 訳●詩人ウェルギリウスの案内で地獄と煉獄を巡る著者。その後、天国に至るなかで、善悪とは何かを捉えていく。ルネサンスの先駆けとなった書。(河出書房新社)

■死ぬのが怖くて仕方がない

人間は年齢を重ねるにつれ死が近づいてきます。そして親族や友人の死に直面し、「明日はわが身か」と恐れおののいたり、「まだ死にたくない」とあがいたりする人が、少なくないのも現実のようです。

僕にいわせれば、死について悩むことなど時間の無駄です。「人間は何人たりとも、死から逃れることはできない」という、厳然たるファクト(事実)があるからです。それよりも、読みたかった本を読んだり、行きたかった場所に旅したりしたほうが、楽しく人生をすごせます。

とはいえ、「どうしても死に対する不安や恐怖が頭から離れない」という人もいるでしょう。そうした人には、中世イタリアを代表する詩人、ダンテが著した『神曲』を読んでみることをおすすめします。

神曲は、叙事詩形式の長編の物語で、ダンテ自身が主人公です。最愛の女性だったベアトリーチェを亡くして現世に絶望し、森のなかをさ迷っていたダンテの前に、古代ローマの高名な詩人、ウェルギリウスが現れます。ダンテの荒んだ姿に心を痛めた天上のベアトリーチェが、ダンテを立ち直らせるため、ウェルギリウスの魂に頼んで、ダンテに死後の世界を見せることにしたのです。

そしてダンテは、生前に重い罪を犯した人々が落とされる「地獄」、生前の罪を償うための「煉獄」、選ばれた幸福な魂だけが行き着く「天国」を、ウェルギリウスの道案内で巡ります。最後には神の意思に気づいて目覚める、という筋立てで、『神曲』を読むことで、あの世の“下見”ができます。

『神曲』は死後の世界を克明に描き、伝説上や歴史上の著名人もたくさん登場するので、読み応えがあって飽きません。僕も高校生のときに『神曲』を初めて手に取りましたが、一気に通読しました。

■楽しく読める地獄篇

『神曲』のなかでも迫力のある描写でよく知られているのが「地獄篇」です。地獄の行き先は、罪の内容や重さによって決められ、罪の軽い順に第1層から第9層まで分かれているという設定です。興味深いのは、ダンテが罪の重さを、自分の価値観や倫理観によって決めているところです。

たとえば、重罪人が行く第8層には、聖職の売買によって私腹を肥やした罪で歴代のローマ法王が送られ、その1人であるニッコロ三世が、石穴に頭から突っ込まれています。ダンテが当時の宗教権威を否定し、人間賛歌の「ルネサンス(再生)の先駆け」といわれた所以です。

行動することで何かを変えようと思ったり、よりよい選択ができるのなら、悩み考えることは有意義です。しかし、先にも述べたように、人が死ぬことは変えようがなく、悩んだり考えたりするのは時間の無駄です。それなら、いまこのときを楽しみましょう。

『神曲』のなかでもこの「地獄篇」は、苦難に満ちてはいてもエキサイティングで、他の「煉獄篇」「天国篇」よりも楽しく読めます。皆さんもぜひ『神曲』をひもとき、あの世を覗いてみてください。そして読み進めるうちに、死に対する恐怖心も和らいでいくはずです。

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出口 治明(でぐち・はるあき)
立命館アジア太平洋大学学長
1948年、三重県生まれ。京都大学法学部卒業後、日本生命保険相互会社に入社。2006年、ネットライフ企画(現・ライフネット生命保険)を設立。18年から現職に。

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(立命館アジア太平洋大学学長 出口 治明 構成=野澤正毅)

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