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電車でついビニール傘を置き忘れてしまうワケ

プレジデントオンライン / 2019年11月23日 11時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/zomby007

■忘れ物をしないことのほうが難しい

電車内の忘れ物で、圧倒的に多いのは傘です。どこでも手に入る安価なビニール傘で、失くしたら大変なことになるほど重要性が高くはないのが、忘れやすい理由でしょう。

忘れ物は、予定の記憶(展望的記憶)に関係しています。電車に乗って傘を手すりに掛けたら、「降りる前に手すりに掛けた傘を手に取ろう」と予定しますよね。でも、乗車中ずっと傘のことを考え続けるわけにはいかず、いったん意識からなくします。その後、電車を降りるタイミングで、その予定を自発的に思い出さないといけません。これが展望的記憶です。その予定を思い出さなかったら、展望的記憶の失敗といえます。

忘れたのではなくて、「思い出さなければいけない予定を、思い出し損なった」というのが正確で、あらゆる忘れ物をする理由はこれで説明がつきます。ただ、実際のところ、必要なときに予定を思い出すのは、とても難度が高いことです。

これを前提として、電車内に傘を置き忘れないためには、大きく3つの対策が考えられます。

■高価な傘を買えば、忘れ物は減る

1つ目は、2万円くらいの高価な傘を使うこと。安価な傘だと「絶対に失くしたくない!」というほど大事なものにはならないですよね。多くの人は、心から大事だと思っているものは忘れません。例えば、恋に落ちた相手との初回デートの約束は忘れないですよね。でも、結婚して何年も経つと時々約束を忘れてしまうこともあるでしょう(笑)。「重要性の認知」があるか否かは、忘れ物に大きく関係します。

2つ目は、傘をどこにも置かないこと。私は自分が忘れっぽいと自覚しているので、長傘ではなく折り畳み傘を持つことがほとんどです。電車に乗っているとき、折り畳み傘は鞄にしまっているので、忘れることはありません。

3つ目は、傘を持たないと降りられない状態で電車に乗ること。例えば、手すりに掛けるのではなく、自分の脚の間に挟むなどです。逆折り傘は自立するので、脚の間に置いておけます。「それをしないと目的が達成できない」状態とするのが、対策としては最強だと思います。

どの対策をするにしても、最後に「後ろを振り返る」のはお忘れなく。「自分は忘れ物をする人間なんだ」と自覚し、毎回確認するのです。電車内でずっとスマホを見ていた人が、突然あたりをキョロキョロして自分が降りる駅だとわかった瞬間、勢いよく電車を飛び降りたはいいものの、手すりに掛けた傘や網棚の荷物を忘れていった……という姿を見たことはありませんか。

人の注意力には限界があります。多くのことに同時に注意を配ることは難しく、どこかに注意がいくと情報処理のリソースが足りなくなり、ほかが疎かになってしまうものです。

だからこそ駅に着く前、とくに駅区間が短い路線では一駅前のタイミングで、ゲームや動画閲覧、読書など、それまで熱中していた活動をやめて、降りることに備え、余裕を持つこと。それが傘に限らずすべての忘れ物を防ぐひとつの手になると思います。

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芳賀 繁 交通心理学者
立教大学名誉教授。社会安全研究所技術顧問。著書に『あなたのその「忘れもの」コレで防げます』ほか。趣味はギター演奏。

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(交通心理学者 芳賀 繁 構成=池田園子)

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