「あと10歳若ければ」と言い訳し続ける人の末路
プレジデントオンライン / 2019年11月7日 11時15分
※本稿は、中越 裕史『やりたいこと探し専門心理カウンセラーの 日本一やさしい天職の見つけ方』(PHP研究所)の一部を再編集したものです。
■「闘争」か「逃走」か、人生の選択
人生というのは選択の連続です。たとえば転職、起業、結婚など、目の前に人生の大きな選択肢があるとき、誰だって大きなストレスを感じます。
強いストレスを感じたとき、人間は本能的に、「闘争」か「逃走」の反応をしてしまいます。
つまり、「チャレンジをするか」「あきらめて逃げ出してしまうか」。
でも、人間というのは僕自身を含めて誰だって怠惰な生き物で、ほんのちょっと都合のいい言い訳が与えられると、ついチャレンジよりも「逃走」を選んでしまいます。この、人類のほとんどが持っている都合のいい言い訳が、「もう少し若ければ、チャレンジしたんだけどな~」というもの。
新しいことに向かって「闘争」するか「逃走」するか。誰だって心の中に迷いがあって当然。悩んでいるときは49対51かくらいの絶妙なバランスで、心に葛藤があります。そういうバランスで葛藤があるから、簡単に答えが出せないんですよね。
そこにほんの一押し、「もういい歳なんだから、無理なチャレンジして失敗したらみっともないよ……」なんて声が聞こえてきたら、「闘争」と「逃走」のバランスは一気に「逃走」に傾いてしまいます。
僕自身、偉そうに人のことがいえず、「もう40歳なんだから、多少お腹が出たって仕方がないよな~」と、腹筋との戦いから「逃走」してしまっています。腹筋からですら「逃走」してしまうのですから、転職や起業となると、年齢を言い訳に「逃走」しても仕方がないのかもしれません。
■女子高生にすら「若ければ症候群」の人が
僕が偶然、電車の中で聞いた女子高生の言葉です。
「好きなことで食べていけたら、一番いいやん。私やったら、ダンスで食べていけたらいいけどさ~。そんなん、もっと若いときからやってないと無理やんな~」
当時、40歳手前の僕は、「なんと! その年齢でそんなこというのか。今からいくらでもやり直せるのに。ていうか、その言葉。普段うちに来る30代、40代の相談者さんと、全く同じ言葉や……」と心の中でつぶやきました。
100歳まで生きると言われる時代、女子高生が年齢を言い訳にするのであれば、80%近くの人が年齢を言い訳にするといっても、決して過言ではないでしょう。これはもう、「若ければ症候群」といってもいいかもしれません。
ダンスも種類によっては、幼いときから英才教育を受けていないと、難しいものがあるのかもしれません。それでも僕と同年代の人は、「その年齢でそんなことをいうのか」と思ってしまうはずです。
僕のカウンセリングルームに来る相談者さんは、20代後半から40代後半の人が多いです。50代の方はちらほら。60代の方はごく稀(まれ)にという感じ。
そして、どの年齢の方も共通しておっしゃる言葉。それが、「もうこんな歳だから……。もっと若いときからやっていれば……」。これは僕が天職探し心理学をはじめて15年。本当に変わらずに、どの相談者さんもおっしゃいます。
そして、ちょっと意外な事実。50代、60代になると、「もうこの歳になると、年齢なんて気にしても仕方がないですよ!」と、達観して来る方が少しずつ出てこられます。もちろん50代、60代でも、「若ければ症候群」の方が圧倒的に多いですが、歳をとることで「若ければ症候群」を克服する人が出てくるというのは、なんとも興味深い現象です。
■40代は、人によって考え方が大きく変わる
逆に、一番、年齢を気にしているのが、20代後半から30代半ば。胸を張って若者とはいえず、中年というにはまだ早い。10代のように、何も考えずにいられる余裕はない。でも、50代、60代のように達観するにはほど遠い。だからこそ、悩んでしまう。
また、恋愛、結婚、子育ても、十分に可能性があるだけに、仕事で新しいチャレンジをするべきかどうか、悩んでしまう。それを考えると、この世代が一番年齢を気にするのも、当然です。
ちなみに40代は、人によって大きく変わります。もちろん、年齢を気にする人もたくさんおられます。でも、「今まで、人生を無駄に過ごしてしまった……!」と、残されている時間は限られていると気づき、動きだす人もいます。
40歳になると、加齢による体の変化があります。すると、嫌でも自分の残り時間に、気づいてしまいます。心理学者ユングのいうところの、人生の正午です。
ずいぶんと白髪も増えてきた。体力も落ちてきた。同級生が体調を崩して入院したり、自分自身も大きな病気を経験したり。そういうことを経験する年齢です。そうなると、「あれ? 噂(うわさ)には聞いていたけれど、人生ってこんなに短いの? やりたいことを、やっておかなければ……!」。そう思う人が出てくるのも当然でしょう。まさに、「年齢が……」なんて言い訳している時間すらないと気づきはじめます。
そこに気づく人が出てくるのが40歳。さすがに30歳では、そこまで気づけないかもしれません。僕自身、30歳になったときは、そこまで考えていませんでした。
■「あと10歳若かったら……」と、みんなが悩む
さて、例の女子高生の言葉を聞いたあと。僕はすぐに、あることを思い出しました。
「そういえば僕も、たいして変わらなかった。20歳でカウンセラーをあきらめたとき、もうこんな歳からじゃ、やり直しはできない、若いときもっと勉強していれば……、高校入試、せめて大学入試からやり直せたらな……。そんなふうに思っていたよな~」
今の年齢になって考えてみると、高校生も20歳もほとんど一緒。いくらでもやり直せます。でも、20歳の僕はたしかに、「もうこんな年齢なんだから……」と思っていました。それを考えると、「もうこんな歳だから……」という悩み。実は年齢に関係なく、すべての年齢の人が悩むんですよね。
僕が25歳のとき。もう一度心理学を学んで、思ったこと。
「5年前、20歳のときにあきらめた、心理職への道。それがまだ心のどこかに、引っかかっている。もし、今また何もせずにあきらめたら……。今から5年後の30歳になったとき、また同じことを悩む。25歳のあのときなら、まだ間に合ったのに……。今までの僕のパターンを考えると、またきっとそうなる。情けないけれど、それが目に見えている」
「いや、5年後だけじゃない。10年後も、15年後も、きっと同じことを思う。今のまま35歳、40歳になったら、きっと同じ後悔をする。もう10歳自分が若かったら、やり直せたのに……。僕はきっと、それを言い続けるのだろう。これじゃタイムリープの小説みたいだ」
「それを考えると、問題の本質は年齢ではない。一度は、自分が納得いくまで、やりきってみたかどうかだ。それをやる以外に、このモヤモヤを手放す方法はないんだ」
そう思ったことを、今でもはっきりと覚えています。
■できることは、一つしかない
なにか新しい道に進むとき、何歳であったとしても、必ず年齢を気にします。なにしろ、女子高生も20歳のときの僕も、同じ言葉をいっていたのです。人間なんてみんな、どこかしら「若ければ症候群」を持っているのです。
「もうこんな歳だから……。もっと若くからやっていれば……」
たしかに若い方が有利なことは、いくらでもあります。若い方が体力もあるし、チャンスだってもらいやすい。なにより、余裕がある。それは誰もが、実感することでしょう。
でも、それをいいだしたら、ただあきらめるだけの人生になる。それではきっと、心のモヤモヤを手放せません。それではきっと、「天職」や「本当にやりたいこと」なんて見つけられません。
もし、新しい道に進みたいなら。あるいは天職を見つけたいのなら。もし、心のモヤモヤを晴らしたいのなら。
結局、僕たちに取れる選択肢は、一つしかありません。
「今からでも、やるしかない」
このとてもシンプルな答え。これが、必須なんですよ。
若さはないけれど、人生経験を積んでいること。若い人とは、違う視点でものを見られること。自分の意志で選んだ分、若い人よりも学ぶことに貪欲であること。それを心の支えにして、納得いくまでやるしかないのです。
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やりたいこと探し専門心理カウンセラー
1979年生まれ。大阪市在住。社団法人日本産業カウンセラー協会認定 産業カウンセラー。日本メンタルヘルス協会 研究コース修了。自分自身が会社員時代、働くことで非常に苦労したので、働きながら猛勉強してカウンセラーの資格を取り、働く人のためのカウンセラーとして独立。やる気が出ないという相談が、会社員や経営者を問わず非常に多いため、「やる気が出る心理学 モチベーションセラピー」を設立、運営。『「天職」がわかる心理学』(PHP研究所)、『絵本を読むと「天職」が見つかる』(廣済堂出版)など、著書多数。
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(やりたいこと探し専門心理カウンセラー 中越 裕史)
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