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地球科学者「陰口を叩かれる派手服を着る理由」

プレジデントオンライン / 2019年12月6日 15時15分

京都大学大学院人間・環境学研究科の鎌田浩毅教授 - 撮影=川隅知明

■学生の食いつきが普段とまったく違った

僕が派手な服を着るのは、出会った瞬間に相手の気持ちをぎゅっと「つかむ」ためです。ファッションには人の注意を引きつける力がある、そう気づいたのは今から22年前、京大教授に就任したときでした。ある日、授業の後すぐにパーティーに出るため、いつもより少し派手なオシャレをしていったら、学生の食いつきが普段とまったく違ったのです。

なるほど、見た目の第一印象で人の関心を捉えられるのか。そうわかってから、僕は授業では意識的に派手な格好をするようになりました。初めてテレビに呼ばれたときにも、真っ赤な服を着ていったらとても受けました。僕としては、自分が火山学者だからマグマを象徴する色を選んだのです。

2011年の東日本大震災以降は、幅広い方々に地学に対する関心を持ってもらうために、派手さを少しエスカレートさせました。日本は明らかに大地変動の時代に入っていて、35年を中心に±5年の間に南海トラフ巨大地震が起こります。何も備えをしなければ想定死者数は32万人、被害総額は220兆円にものぼるのです。日本が破滅しかねない大災害です。

■「あそこまでは自分にはできないな」と周囲に思わせる

被害を少しでも抑えるために、国民一人ひとりが自力で身を守る備えをしてほしい。僕が自分に注目を集めたい理由は、このメッセージを1人でも多くの人に届けるためです。「あの赤い服を着た派手な教授が、なんか大変なことを言っているぞ」と耳を傾けてもらいたいのです。

「35年±5年」という表現は、正確さを問われる学者としてはギリギリセーフのラインです。学界の王道を往くのであれば「今後30年以内に70%の確率」と言うべきでしょう。けれども、そんな言い方をしても一般の方には伝わりません。本当に大変なことが起こるんだと認識してもらうには、具体的に表現しなければならない。だからといって「何月何日、どこそこにマグニチュード○の地震が起こる」と告げたら、それはもう科学とは言えません。僕の予測は、学者としての土俵に何とかとどまっているのです。

赤い服、派手な装いを始めたときは、確かに「なんだあれは!」と周りのみんなは眉をひそめていたと思います。けれども、僕には地震の恐ろしさを知ってもらうという大義名分があります。「35年±5年」と言うのと同じです。しかも本音を明かすと、ファッションが面白くなり、もはや趣味の段階をはるかに超えて、毎年ボーナスをすべてつぎ込むレベルに達しています。身上をはたく覚悟でやる、という意味では道楽なのです。

写真=iStock.com/jacoblund
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/jacoblund

このレベルまで突き抜けると、周りも「まあ、鎌田さんはああいう人だから(仕方ないか……)」と認めてくれる。出る杭は打たれると言うけれど、出すぎた杭は打ちようがないのです。1つ抜きん出てしまい「あそこまでは自分にはできないな」と周囲に思わせてしまったら、何も怖いものはありません。仮に嫉妬されたとしても、それは周りが認めている証しぐらいに受け止めておけばいいのです。

【対策】「マグマの赤です」。目立つ理由を簡単に説明

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鎌田 浩毅(かまた・ひろき)
京都大学大学院人間・環境学研究科教授
1955年生まれ。東京大学理学部地学科卒業。97年より現職。理学博士。専門は火山学、地球科学。『座右の古典』『読まずにすませる読書術』『火山噴火』など著書多数。

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(京都大学大学院人間・環境学研究科教授 鎌田 浩毅 構成=竹林篤実)

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