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あおり運転をする人の卑屈な日常

プレジデントオンライン / 2019年11月14日 17時15分

逮捕時の状況を楽しむ宮崎容疑者。(AFLO=写真)

■宮崎容疑者はアドレナリンジャンキー

2019年8月、茨城県の常磐自動車道で起きたあおり運転殴打事件。県警は監視カメラから容疑者を全国指名手配し、傷害・強要容疑で住所不定の宮崎文夫容疑者(43)と同乗者の女を逮捕した。この事件は、被害者の車載カメラに暴行の映像が残っていたこともあり、世間で大きな話題となった。宮崎容疑者は新東名高速道路でも同様のあおり運転をした容疑など、余罪が多くあると見られている。このような過激なあおり運転をする人間にはどのような特徴があるのだろうか。精神科医の樺沢紫苑氏はこう分析する。

「逮捕時の映像を見る限り、あおり運転をしている際も、逮捕される際も、その状況を楽しんでいるように見えました。私の作った言葉にアドレナリンジャンキーという言葉があります。これこそ、まさにアドレナリンジャンキーの症状と言っていい。アドレナリンは、本来自分が死に陥りそうになったときに平常時以上の力を発揮する効果をもたらす分泌物のこと。格闘技ではアドレナリンが出ると痛みを感じにくくなり、戦闘意欲が高まることが知られています。宮崎容疑者は、危ない運転に快楽を見出しすぎる、アドレナリンが出た状態にあったと思われます」

■感情が一時的に増幅

樺沢氏によれば、宮崎容疑者は怒りの感情が一時的に増幅され、その勢いであおり運転や暴力を振るった可能性が高いという。

「ただし、アドレナリンは一瞬で分泌され、約6秒でピークの値から下がるといわれています。つまり、カッとなっても10秒だけ深呼吸して時間の経過を待てば、事態を冷静に見つめ直すことができる。彼にはそれができなかったのでしょう」

激昂している人というのは、自らが怒っているという自覚が持てない。それがもっとも問題だという。

「怒りを鎮めるための効果的な対策は、怒りを自分で認識すること。『いま自分は怒っている』と客観視できれば、一時的な感情で極端な行動に走ることはなくなります。例えば、シリコンバレーを中心に今流行っているマインドフルネス(瞑想)は、自らの感情を自覚する行為です。いま自分は楽しい、いま自分は落ち込んでいるなどと自覚できれば、感情をコントロールできます」

また、樺沢氏によると、宮崎容疑者は怒りの感情を抑えられない病を患っている可能性も否定できないという。

「怒りが爆発しやすい、間欠爆発症という病気があります。いくつかの診断基準があるのですが、宮崎容疑者は、あおり運転と怒りのトラブルを繰り返していたことから、その特徴を備えている可能性もあります」

さらに、こうしたアドレナリンジャンキーの場合、日常生活の中でも自動車の運転はトラブルを招く可能性が高いと樺沢氏は指摘する。

「よく、車に乗ると性格が変わる人がいますが、それは車が自分に全能感・万能感をもたらしやすいからです。車はスピードや方向など自分でコントロールできる領域が大きいので、卑屈だったり、自己肯定感が低い人は相手に悪気がなくても、割り込みをされたと思い込みやすい。クルマを体の延長線のように捉えていると、自分が邪魔されたように勘違いしやすいのです」

では、自己肯定感を高めるためにはどのようにすればよいのだろうか。

「人からほめられるだけでなく、自分で自分をほめるのも自己肯定感の向上につながります。いまの自分でいいじゃないか、追い越されてもいいじゃないかと考えることです」

最後に、万が一、自らがあおり運転被害に巻き込まれた場合は、どのように対処すればいいのだろうか。

「何より相手の挑発にのらないこと。感情は伝染します。自分まで怒ってしまうと相手の怒りは増幅してしまう一方なのです。それを避けるために、相手がどれだけ怒っていても、必ずゆっくり話しましょう。ゆっくり話す行為は、副交感神経が優位に働き、深呼吸と同じ効果があります」

売られた喧嘩は買わない。それがアドレナリンジャンキーから自らの命を守る最大の策である。

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鈴木 俊之(すずき・としゆき)
編集者・ライター
1985年生まれ。12年法政大学卒業、出版社入社。月刊誌編集部を経て15年独立。専門分野は金融、起業、IT、不動産、自動車、婚活、美容など。

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(編集者・ライター 鈴木 俊之 写真=AFLO)

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