20代女性が突出して他世代より嫉妬深い理由
プレジデントオンライン / 2019年12月14日 11時15分
■嫉妬すると人間は攻撃的になる
嫉妬心を少しも持たず、友人の成功を喜ぶ強い性格の持ち主は皆無である――。古代アテネの三大悲劇詩人の1人、アイスキュロスの言葉だ。この言葉が表している通り、古(いにしえ)より人間は、他者に対して嫉妬の感情を抱えながら生きてきた。誰にでも腹が立つ人や目障りに感じる人の1人や2人はいることだろう。
心理カウンセラーの大嶋信頼氏は「嫉妬は動物の本能」と断言する。
「嫉妬はすべての動物が持つ本能です。その根底にあるのは『優越の錯覚』。自分より下と見なしている存在が自分より優遇されている、寵愛を受けているといったときに、『なんで自分より劣るあいつが愛情を受けているんだ』と妬むのです」
例えばひな鳥では弱っている兄妹がいれば、わざと巣から突き落とす行動が確認されている。これは、自分より弱い、つまり下に見ている存在が母鳥の愛を受ける状況が許せず、相手を破壊して愛情を取り戻そうとする現象だ、と大嶋氏は話す。
「嫉妬すると、動物も人間も脳の神経ネットワークが過剰に活動している状態になって、脳内の電流が記憶を司る海馬をビビッと感電させます。一種の発作を起こした状態となり、破壊的な人格に変わって相手を攻撃してしまうのです。先の『優越の錯覚』が強い人ほど、嫉妬の発作を起こしやすいことがわかっています」
米スタンフォード大学と科学技術振興機構の共同調査によれば、男性の多くが「自分は平均より22%優れている」と錯覚しているという結果が得られたという。
「厄介なのは、本人に嫉妬している自覚がないことです。周りでも、嫉妬深い人ほど『○○さんは嫉妬深いよね』などと他人のことを言っていたりしませんか? しかも嫉妬は脳の発作なので、自分が何をどんなふうに言ったのか、本人はあまり覚えていない。嫉妬深い人ほど、自分が嫉妬していることがわからないのです」
■嫉妬している人は能面のような表情に
「嫉妬」の感情は見た目にも表れる。大嶋氏によると「嫉妬した瞬間の人間の顔は、能面のように無表情になっている」という。職場や学校などでの会話の途中、相手の顔が無表情になったときは要注意だ。
なぜ、そのような顔になってしまうのだろうか。
「嫉妬の感情の裏にあるのは、実は『孤独』です。自分よりも相手が愛情を受けているとみると、自分は愛情を受けられなくなる、1人になってしまうという不安感が募るのです」
さらに大嶋氏は、「社会的地位、コミュニケーション能力が高い人も嫉妬深くなりやすい」と注意を促す。
「実は最近、社会的地位が高い人ほど脳の背側縫線核(はいそくほうせんかく)の活動が活発だということが判明しました。この部位は、孤独の感情を司っています。つまり、社会的地位が高い人は孤独になりたくないがゆえにコミュニケーション能力が高い、ということなのです。一見交友関係が派手でキラキラしている人ほど、孤独になりたくなくて悩んでおり、嫉妬の感情にかられやすい。そういう人には嫉妬心を持たれないよう接するのが賢明です」
また、「あなたのことを思ってやってあげている、言ってあげている」と近づいてくる人にも要注意だ。
「相手のためによかれと思って何かするという人は、実は嫉妬からきていることが多い。典型例は親が子どもに『あなたのために言ってあげている』という親子間の嫉妬。上司が部下に説教するときもそうです。優れた子どもや部下であるほど、嫉妬の対象になりやすい。親の威厳、上司の立場を脅かされると考えるのです」。奥深く、恐い嫉妬の全貌を、1000人へのアンケートを基に解説していく。
■バブル世代VSロスジェネ世代
プレジデント誌では、1000人の男女を対象に、嫉妬に関するアンケート調査を実施した。育った環境や経験の差による「嫉妬する対象の違い」が浮き彫りになった。
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まずは「高級外国車に乗っている人を見て嫉妬するか」の回答を見てみよう。男性では40歳以上で40%前後、60歳以上は47%と半分近い人が「嫉妬している」、つまり高級車に乗っている人が気になるとしている。
「若年層は男性も女性も高級車にステータスを感じていませんが、50代後半の女性と40歳以上の男性は価値を見いだしている。これはバブル景気をリアルタイムで経験しているか否かが大きな分かれ目になっています。50代後半というと、ちょうどバブルのときに20代だった人たち。そのときの体験が忘れられないのでしょう。60歳以上の男性も、まさにバブルでおいしい思いをした人たち。人生経験によって嫉妬を感じる対象が大きく変わる典型例といえます」
一方で、若い世代が嫉妬を感じているのは「高級そうな服」。これには、「今の若者はフォトジェニックなSNS世代」ということが反映されていると大嶋氏は見る。
「24歳以下の若者は、インスタグラムなどでたくさん『いいね!』をもらっていることが嫉妬の対象になっています。60歳以上の数字が高めなのは、バブルの名残でしょう」
「高学歴」の項目を見ると、30代男性の数字が40%台と高くなっている。彼らはいわゆる就職氷河期の“ロストジェネレーション世代”だ。
「学歴さえあればあんなに就職で苦労することはなかったのに……という思いが透けて見えます。『有名企業に勤めている』の項目で30代後半男性が最も高いのもそういうことでしょう。逆に50代のバブル世代は就職で苦労しなかったので、あまり学歴に執着しない。このあたりのコントラストがはっきり見てとれます」
また、「金融資産」を見ると、違った背景が見えてくる。30代以上の男性の多くが嫉妬を感じている。一方で、50代前半だけ30%台と、前後の世代に比べて低くなっているのだ。
「これは『リーマンショック』で大損した世代ではないでしょうか。リーマンショックが起きたとき、ちょうど40代に入ったくらいの世代です。それなりの社会的立場と経済力を手に入れ、本格的に投資でも始めようかというときにリーマンショックに遭ってしまった。ひどい失敗を経験して、『もう投資なんてやるものか』と思った人が一定数いるのでしょう」
※調査概要 ビジネスパーソン1000人にインターネット調査を実施。調査期間は2019年9月10日~22日
■結果・評価・成長が気になる女性たち
ライバルなどの人間関係では、人はどのようなところを見ているのか。女性の多くが反応したのが、「上司・先輩と仲がいい」「会社内に味方が多い」の項目だ。この結果に「男性と女性で嫉妬のメカニズムが違う」と大嶋氏は説明する。
「嫉妬にはテストステロンという男性ホルモンが関係していることがわかっています。テストステロンは競争心と密接に関わっており、一般的に、男性は出世や年収といった数値で見える部分で嫉妬心を抱くことが多い。一方、女性は人間関係が気になる傾向がある。私よりもあの子のほうがかわいがられている、好かれているといった周囲との関係性で優位にある人を妬むのです」
若者は飲み会嫌いと言われて久しいが、「自分より飲み会に誘われる」という項目では20代後半女性の56%が嫉妬すると最も高くなっている。同年代の男性の2倍近い数字だ。
「これは結婚相手を見つけるという背景も大きいでしょう。いつの時代も、社内結婚は1つの選択肢です。その場合、自分が呼ばれていない飲み会に他人が誘われていたら気になるし、ずるいと感じるわけです」
スタイルに関しては、60歳以上の男性も53%と高い。
「これは『三高(高身長、高年収、高学歴)がモテる男の条件』などと言われた世代でしょう。『年収』の項目は男女ともに全世代で高い数字を見せていますが、60歳以上は71%と特に高い。男性の価値観は、年齢を重ねてもさほど変わらず、男性は全般として自分よりも三高度が高い男性を妬んでいるということがよくわかります」
大嶋氏が意外だったと話すのが「自分よりも成長できる環境にいる」「仕事で結果を出している」の項目の結果が男性よりも、女性のほうが高く反応している点だ。
「働く女性が増加するなかで、出世についても競争心を持ち始めているということでしょう。これからの時代は女性のほうが上を目指してバリバリ働くということかもしれませんね」。ここでも、働く女性は自分よりも出世している女性を特に気にしているといえそうだ。
調査全体で見ても、「嫉妬する」割合は男性で41%、女性で42%と拮抗しているが、年代で見ると20代女性が48%と最も高い。「おとなしい」「ゆとり世代」というイメージが強いが、その裏側では周囲の人間を蹴落としてでも自分がのし上がるというたくましい女性が増えているのかもしれない。
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心理カウンセラー
インサイト・カウンセリング代表を務める。米アズベリー大学心理学部心理学科卒。カウンセリング歴25年、臨床件数はのべ8万件以上にのぼる。著書に『消したくても消せない嫉妬・劣等感を一瞬で消す方法』(すばる舎)など。
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■▼持ち物・見た目でどこが気になりますか?
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■▼どんなステータスの人に嫉妬しますか?
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■▼ライバルのどこを見ていますか?
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■▼どんな働き方をしている人が羨ましいですか?
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(ライター 衣谷 康 撮影=研壁秀俊)
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