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腰かけOLを経営トップに変えた3つの転機

プレジデントオンライン / 2019年11月13日 11時15分

一般職から総合職へ転換し、常に全力投球で努力し続けた陶山さなえさん。現在のキャリアを切り拓いた3回の転機とは、そして女性管理職が身につけるべきスキルとは──。リーダーを目指す人なら知っておきたい、ステップアップの秘訣が満載です。

(※本稿は、2019年8月7日、しなやかに情熱を持って働く女性たちのための交流会「PRESIDENT WOMAN Salon」の第5弾「SOMPOコミュニケーションズ 代表取締役社長 陶山さなえさんを迎えて」の内容から構成しています)

■3つの転機を経て花開いた“遅咲き”のキャリア

当社は、損保ジャパン日本興亜を核に、国内外の保険引受事業や介護・ヘルスケア事業を展開するSOMPOホールディングスグループにおけるコンタクトセンター運営専門会社です。現在、約500名の社員と約760名のスタッフが働いています。

私は1979年に一般職として、安田火災海上保険(現・損保ジャパン日本興亜)に入社しました。以来、保険金を支払う部署を中心にキャリアを積んできました。部長に昇格したのは53歳ですから、まさに“遅咲き”です。

焦った時期もありましたが、今思うのは「キャリアアップの適齢期は人によって違う」ということ。私にとっては、きっとあの時期が適齢期だったのでしょう。皆さんも、もし昇進が遅くても決してあきらめないでください。周りと比べず、今任されている仕事に打ち込んでいけば、きっと道は拓けると思います。

私は一般職からキャリアをスタートしました。最初はお気楽な腰かけOLでしたが、3つの転機を経て今に至っています。第一の転機は入社直後、総合職の素敵な先輩との出会いです。仕事への意欲がとても高い方で、私にも総合職レベルの業務を熱心に指導してくれました。そのおかげで仕事の面白さに目覚め、腰かけOLだった私が“やる気OL”に変身(笑)。20代半ばで出産した後も仕事を続けたい気持ちが強く、義父母との同居に踏み切って復職しました。

第二の転機はそれから約12年後。阪神淡路大震災で本来であれば男性管理職が担当する現地対策本部立上げ支援や、被災地支援の業務を任命され、その経験を通して人生観が大きく変わりました。同時に、リーダーとしてのやりがいや責任の重さにも気づき、これをきっかけに「キャリアアップしたい」という思いが明確になり総合職転換にチャレンジしました。

その後は仕事に邁進する日々が続きました。やがて次席に抜擢されたのですが、普通はここから4~5年で課長になるのに、私は約8年も同じポジションのまま。8年連続で社内表彰を受賞し、自分なりに業績を上げていると思っていたのに、昇進では後輩の男性3人に次々と追い抜かれました。当時は虚しい思いをしましたが、「あの時の私は課長職に見合ったスキルが不足していたから昇格できなかった」と昇格後に気づきました。

■女性リーダーに必要なスキル~管理職編&役員編

課長になったのは49歳の時。お世話になった先輩が部下になり、やりにくさも感じましたが、「マネージャーというのは上下関係ではなく役割としてやらせていただきます」と伝えたことで、良好な関係を築くことができました。第三の転機が訪れたのはその翌年、新組織立ち上げの仕事を通してです。

これは私の全キャリアを通じて一番の大仕事でした。9人の立ち上げメンバーとともにがむしゃらに働き、約1年半後には180人の大組織に成長させることができたのです。休みはほとんどありませんでしたが、つらさはまったく感じず、むしろ幸せな時間でした。いい仲間に恵まれ、自分がしたい仕事とできる仕事が一致して、仕事の面白さをより深く体感できたのです。

この成果が評価されて部長に昇格し、以降は理事、執行役員、グループ会社の社長と、それぞれの段階で必要とされるスキルを身に付けるよう努力してきました。こうしたキャリアの中で、私が心がけてきたことをお伝えしたいと思います。

まず、男性社会における女性管理職としては、①向かい風に立ち向かう覚悟を持つ、②鈍感力を磨き批判もエールと捉える、③情報やサポーターを得るための人脈づくり、④組織に欠かせないオンリーワンの存在になる、⑤自分の売りを自ら発信するプロモート力をつける、の5つを心がけました。

そして何よりも大事にしたのは、チャンスが舞い降りてきたら必ず自分でつかむこと。異動でも昇格でもプロジェクトでも、力を発揮するためにはまず打席に立たなければなりません。皆さんも、もし目の前に階段が現れたら、ぜひ勇気を持って登ってください。

次に、各ポジションでは、その役割にふさわしいスキルを身につけようと心がけていました。課長では業務知識や単年ごとの成果、メンバーとの信頼関係構築、部長では伝える力やビジョンづくり、決断力、ポジティブに方向性を示す力、任せる力などを磨くよう努力しました。

役員で努力したことは部長時代に求められるスキルより、ビジョンづくりや決断の際に見据える範囲が大きく広がりました。時間で言えば、10~20年先を見る目が必要になったのです。困難にも前向きに対峙する姿勢や多様性を受け入れる度量、また忖度を見抜く力も求められていると感じました。私がこうしたことに気づいたのは、各ポジションに昇格してからでしたが、皆さんには今から意識しておいていただけるといいかなと思います。

■男性との違いを強みに挑戦を続けて

キャリアアップしていく中では、人材育成も重要なスキルになります。私の場合は、キャリアの途中で迷っている人には、身の丈より少し上の成功体験を仕掛けるようにしました。また、「私の仕事はここまでだから」と割り切っているタイプには、得意分野での目標ややりがいを見出せるよう努めました。

一番困るのはやる気が見えない人で、これには特効薬はありません(笑)。ただ、そこで退場を言い渡すようでは管理職失格ですから、単にやる気がないのか、今の職に適性がないのかを慎重に見極めた上で、気づきのチャンスを繰り返し与えるのがいいでしょう。私は、人材育成には時には厳しい指導も必要だと考えています。ただし、それには信頼関係や愛情、第三者のフォローが必須。この土台を忘れずに、部下のことを考えた育成をお願いしたいと思います。

もう一つ、長く働き続けるためにはワークライフバランスも大切です。特に子どもが小さいうちは、両立に悩む人も多いでしょう。私は「お金で解決できることはお金で」と考えて、ベビーシッターやお手伝いさんを積極的に頼みました。周囲のサポートにも甘えつつ、帰宅前15分のコーヒータイムをつくるなどして一人の時間も確保するようにしました。

おかげであまりストレスがたまらずに済んだので、皆さんにもおすすめしたいですね。両立は、職場や家族のサポートなくしては立ち行きません。「甘えた後は感謝の気持ちを忘れない」を鉄則として、自分の子育てが楽になったら、次はぜひ他の人をサポートしてあげてください。

長いキャリアの中では失敗もあるでしょう。でも私は、やり直しがきくものは「失敗」ではなく「後悔」だと思っています。つまり、仕事はあきらめないことが一番重要なのではないでしょうか。苦しい時はつい近視眼になって、もうダメだと思ってしまいがち。私はメンターに相談したり、自分で自分をほめたり、実現したいことを書き出したノートを見て「意外と達成してるな」と実感したりしながら乗り越えてきました。

女性の活躍は私の願いでもあります。私は総合職になってから、男性以上にがんばって認めてもらおうとがむしゃらに働いてきました。それもいい経験でしたが、今思うと「男性との違い」を「引け目」と感じていたからです。私が期待されていることは男性と遜色ない働きをすることだと、勘違いしていました。私たちに求められているのは、違いを生かすことです。違いを強みと捉え、仕事を楽しみながらしなやかに自分らしくチャンスがあれば尻込みせず挑戦してください。その姿勢を見せ続けることが、次世代の育成につながるのだと思います。

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陶山 さなえ(すやま・さなえ)
SOMPOコミュニケーションズ 代表取締役社長
1979年、白百合女子大学文学部卒業後、安田火災海上保険入社。医療保険サービスセンター部長、お客さまサービス品質向上部長などを経て、2013年同社では女性初の執行役員に。17年にSOMPO企業保険金サポートの取締役社長に就任、2019年より現職。

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(SOMPOコミュニケーションズ 代表取締役社長 陶山 さなえ 文=辻村洋子)

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