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会計士から一転"有罪の烙印"押された男の人生

プレジデントオンライン / 2019年12月22日 11時15分

会計評論家 細野祐二氏

■犯罪会計学の確立と普及で迫る経済司法の改革

細野祐二さんは、2004年、公認会計士として東証一部上場の防虫駆除サービス会社、キャッツを担当していたとき、同社の粉飾決算事件の“共犯”として逮捕・起訴された、異色の経歴の持ち主。無実を主張し続けたものの、10年に有罪判決が確定した。

「物証のない経済犯罪では、騙すといった故意がなければ、罰せられない仕組みになっています。いわば心の犯罪なのです。だから検察当局は、犯意があったことを立証しようと、人権無視の長期勾留などで容疑者に自白を迫ります。その結果、冤罪を生む温床にもなる。そこで、自分と同じ目に遭う人が出ないようにするため、経済司法の改革を本書で訴えているのです」

そして、細野さんが取り組んでいるのが、不正会計の手口などを研究する「犯罪会計学」の確立と普及だ。「実は、財務諸表を分析すれば、意図的な不正会計の共通点を見出すこともできます。客観的な不正会計の“物証”があれば、自白の強要や冤罪もなくなるでしょう」。

また『公認会計士vs特捜検察』『法廷会計学vs粉飾決算』『粉飾決算vs会計基準』などの著作との違いについて、細野さんは次のように語る。

■不正会計に手を染めざるをえなかった、当事者の苦悩や葛藤

「経済事件を追っていると、不正会計に手を染めざるをえなかった、当事者の苦悩や葛藤も見えてくるんですね。これまでの著作では、解説や論評が中心だったのですが、本書では、そうした人間ドラマを、浮き彫りにしたかったのです」

細野祐二『会計と犯罪――郵便不正から日産ゴーン事件まで』(岩波書店)

さまざまな人間ドラマのなかでも、とりわけ力を込めて描いたのが細野さん自身の体験である。世界有数の会計事務所グループ、KPMGの「トップ20」の会計士から一転、“犯罪者”の烙印を押され、公認会計士の資格も剥奪された。公判中には最愛の妻も白血病で失った。まさに、天国と地獄を味わった、波瀾万丈の人生といえる。

「とはいえ、そんな私でも、現在はライフワークを見つけて、充実した生活を送っています。そのことを知れば、不本意な仕事を強いられている人にとって、救いになるのではないでしょうか」

本書でも紹介されている、上場企業の財務諸表の危険度を分析する会計ソフト「フロードシューター」を細野さんは開発し目下、その普及に全力投球中だ。「コンピュータは、クライアントから巨額の監査報酬を受け取っている監査法人のように、企業に忖度したりしません。公開情報に基づき、会計原則に則って、会計の適否を判定します。現行の外部監査制度の改革につながる起爆剤になれば」と意気込んでいる。

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細野祐二
会計評論家
1953年生まれ。82年公認会計士登録。78~2004年までKPMG日本およびロンドンで会計監査、コンサルタント業務に従事。

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(野澤 正樹 撮影=加々美義人)

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