67歳再就職エンジニアが怯える"無呼吸とがん"
プレジデントオンライン / 2019年12月22日 11時15分
■突然の病、月3万円の医療費が生活を圧迫
【定年時の貯金額】500万円以下
いまや国民病といっていいほど患者数が増えている「睡眠時無呼吸症候群」。眠っている間に呼吸が止まり、不整脈や脳卒中などさまざまな疾病のリスクを高める。渡辺さんも発症した1人で、それが老後プランに影を落とすこととなってしまった。
治療法の1つであるCPAP療法は、機器を使って睡眠時に気道に空気を送り込むもの。渡辺さんも自宅で治療するため機器をレンタルすることになった。しかし、健康保険が適用される月額約4500円(3割負担の場合)の機器を試してみると息苦しくて眠れず、医師と相談のうえ、別の機器を借りることとなった。治療にかかる費用は月額約2万8000円に跳ね上がった。
「贅沢な体なんですかね(笑)。毎月のことですから、ボディーブローのように家計に響いてきますね」
これから20年使い続けるとすれば出費は約670万円に上る。
「両親ともがんで亡くなっているのでがん保険には手厚く加入していたのですが、まさか呼吸器系の病気にかかるとは想定外ですよ」
渡辺さんが加入するがん保険は、最新型ではないが先進医療は対象となるもの。その他医療保険なども含め、世帯年間払い込み保険料は70万円にも上る。保険料が半額くらいになるように、そろそろ加入を見直したほうがいいかなという考えもよぎるが、「まだ自分は働いているから」と思い、なかなか決断できないと言う。
■52歳で希望退職に応じた
渡辺さんは日本を代表するメーカーにエンジニアとして勤めていたが、52歳で希望退職に応じた。
「新卒で入社して以来、給与や昇給見込みなどを自分でデータベース化して予測管理をしていたのですが、定年まで会社に残っても、資産が目標金額に到達しそうもなかった。それなら、割増退職金を受け取って転職したほうが有利だと考えたのです」
転職先でもエンジニアとして活躍。契約制で61歳まで働いたところで、手掛けていた仕事に区切りがついた。そこで国際協力機構(JICA)の海外協力隊に応募。半年間、アフリカに単身赴任した。
帰国後は、赴任中にエージェントを通して見つけた企業に、すぐに再就職した。技術系の国家資格を生かし、現在は週1回の勤務で月収約18万円を得ている。そのほかに年金と企業年金も受給しているが、月の収入は現役時代と比べれば、15万円ほど少ない。
現在はエクセルで100歳までのキャッシュフロー表を作成するなど、お金への意識が高い渡辺さんだが、マイホームの住宅ローンが家計を圧迫している時期もあった。
「バブルのピークから1年後、同僚が家を買ったと聞いて、それなら俺にも買えるはずだと思わず購入してしまったのです」
何事にも綿密な計画を立てる渡辺さんだが、マイホーム購入だけは無計画だった。少しでも有利に住宅ローンを返済しようと、10年ほど経過したときに借り換えを銀行に相談したが「評価額がローン残高より1000万円低いので難しい」と断られてしまった。
「悔しいから、評価額をアップさせるため自分で設計して増築を行いました。見事成功し、借り換えができました」
そのローンも52歳で希望退職したときの退職金で完済。現在の仕事は1年更新だが、70歳までは続けられそうなので、それまでに“想定外”の穴埋めのため、新たな手段で蓄えを増やしたいと考えている。始めたのはロボットアドバイザーを活用した運用。低リスクの設定で運用しているが、慣れたら、もう少し高いリターンを狙うことも考えている。「暗号資産も勉強したい」と積極的だ。
(ライター 向山 勇 撮影=岡村隆広)
外部リンク
この記事に関連するニュース
-
「退職金2,400万円」で住宅ローンを完済!月収38万円の65歳サラリーマン、現役引退後に悠々自適な年金生活を期待も、待ち受ける「老後破産」の危機
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年6月19日 9時45分
-
定年後も質素に暮らす「年金夫婦で月20万円」の元大卒サラリーマンでも…「退職金2,000万円」「貯蓄2,000万円」を使い切ってしまうワケ
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年6月18日 9時45分
-
51歳パート、住宅ローン残高は約2500万円。完済は夫80歳時です
オールアバウト / 2024年6月6日 22時20分
-
52歳会社員、離婚して貯金ゼロに。3人の子どもの大学費用と、老後をどう乗り切ればいい?
オールアバウト / 2024年6月5日 22時20分
-
41歳貯金1100万円。住宅ローンを組んでしまった怖さに不安で眠れないことがあります
オールアバウト / 2024年6月2日 12時20分
ランキング
-
1ウイスキーが「おじさんのお酒」から激変したワケ 市場復活に導いたサントリーのハイボール秘話
東洋経済オンライン / 2024年6月30日 8時20分
-
2意外な面倒さも? 財布いらずの「スマート支払い」、店側はどう思っているのか
ITmedia ビジネスオンライン / 2024年6月30日 8時10分
-
3関東「気動車王国」の離れ小島路線が面白い! 不思議な“右ハンドル”車両 3駅の路線に“スゴイ密度”であるものとは?
乗りものニュース / 2024年6月29日 15時12分
-
4「押しボタン式信号」なぜ“押してすぐ青”にならないケースが? 納得の理由があった!
乗りものニュース / 2024年6月29日 16時42分
-
5上海の伊勢丹が営業終了、中国で日系百貨店の閉店相次ぐ…高島屋は売上高が減少傾向
読売新聞 / 2024年6月30日 20時56分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください