東洋医学で"冬に老化が進む"とされる理由
プレジデントオンライン / 2019年11月22日 6時15分
■木枯らし、小春日和。気温の乱高下で体調不良に
11月22日~12月6日は小雪(しょうせつ)で、この時期になると標高の高い山や寒い地域では初雪が降ります。また、木枯らしが吹き荒れるなどして、いよいよ冬本番へ突入です。
しかしながら、時々、小春日和と呼ばれる春のように暖かい日も何日か見られ、春の花が勘違いして咲きはじめるなどの便りを耳にすることもあります。気温の変化にカラダが適応できないことも多く、体調をくずしやすいのがこの時期の特徴です。体調管理には十分注意しましょう。
小雪は、寒さが進み、雪が降り出しそうな気温になりますが、雪はさほど多くはなく、雪が降ってもたくさん積もるようなことはありません。
季節のはじまりの初候は、新嘗祭(にいなめさい)と呼ばれる収穫に感謝を捧げるお祭りがあり、その年に収穫された新米や新酒を神様に捧げることで、深まる冬への準備をします。ちょうどこの時期はリンゴや魚のクエが旬を迎えます。季節が進む次候では、木枯らしが吹き荒れることで、木々の葉を吹き飛ばして、いかにも冬らしい季節になり、カマスや白菜が旬を迎えます。終わりである末候は、ボラやセロリが旬を迎えることで冬の深まりを告げます。
■うつ、老化対策には、日光浴と適度な運動が大切
東洋医学では冬は老化が進む時期と考えられています。寒さのため動かずにいると筋肉や骨が弱ると考えられています。筋肉や骨はある程度の負荷がかからないと成長しないため、運動が何よりも大切です。筋肉が弱ると筋ポンプ作用が低下し、循環器の異常が現れます。骨が弱ると背中が丸くなり、内分泌系や脳などの異常が起こりやすいため、老化が進んだように感じます。そのため、老化対策として暖かい日には外に出て、足腰を鍛えるような運動を積極的に取り入れ、骨を丈夫にするように心がけましょう。
この時期は、日光に当たる時間が少なくなることから、気持ちも落ち込みやすく、うつ傾向になりやすいのが特徴です。気分を調整してくれるセロトニンは、豆類などに含まれるトリプトファンからつくられます。豆類を積極的に摂取し、そのうえで太陽の光に当たることが必要です。天気がよい日は積極的に太陽の光に当たるよう、外に出かけてみましょう。
■骨を強化する食事と運動を取り入れよう
「カラダとココロの養生法」
骨を丈夫にするには食事と運動が不可欠。カルシウムやビタミンDを摂取するために小魚やヒジキ、大豆などの豆類、ヨーグルトや牛乳などの乳製品、サンマやサケ、シイタケなどを積極的に摂取しましょう。そのうえで、骨を鍛える片足立ちやスクワット運動を行うといいでしょう。骨は圧力が食わると成長しやすいことが知られています。そのため、骨に圧力がかかるような少し強めの運動が効果的です。
片足立ちの運動は、椅子などにつかまりながら片方の足で15秒行い、15秒の休憩後、反対側の足でも15秒。これを1日10セット行いましょう。また、スクワット運動は肩幅に足を開いて椅子の前に立ち、中腰の状態で10秒耐えたら椅子に座る運動を。こちらも同様に1日10セット行いましょう。
そして、食事と運動に匹敵するくらい重要なことは太陽の光に当たることです。骨を強くするにはきちんと栄養を取り、骨に圧力を加え、日光に当たらないと合成されません。まさに、日ごろの生活のたまものです。朝、太陽の光とともに起き、3食きちんとバランスのいい食事をとり、日中は光を浴びながら外で作業する。この生活習慣こそが、骨を丈夫にし、若返るための秘訣です。
「食養生」
この季節の旬はクルミです。クルミは栄養価が高く、滋養強壮に効果があるとされています。そのため、骨を強くするのに効果的な食品であるとともに、カラダを温める作用もあるため、冬のこの時期にはとても良い食材といえます。また、この時期に旬を迎えるリンゴは、消化機能を助け、呼吸機能を強化する役割があります。さらにカラダにうるおいを与え、肌の乾燥を防ぐ役割もあるので積極的に摂り入れましょう。
「お勧めのツボ」
小雪を乗りきるためのおすすめのツボに太谿(たいけい)があります(図表1)。太渓は内くるぶしとアキレス腱の間のくぼみにあります。このツボは、カラダの基盤となる力を高めてくれるツボであり、アンチエイジング効果が高いだけでなく、腰下肢痛や生殖器系の症状、泌尿器系の症状など幅広い症状に効果的です。イタ気持ちいい程度に10秒程圧迫し、5秒空けて5回程度刺激するようにしましょう。なお、触って冷たい場合はドライヤーで温めたり、お灸を行うことをお勧めします。
■定期的な運動と温めで、アンチエイジング対策を
【タイプ別・骨を鍛える対処法】
この時期は、寒さに加えて日照時間も減り、外で運動することが極端に少なくなります。特にカラダの枠組みである骨の成長には、食事や運動に加えて、太陽の光など、生活習慣が大きく関与しています。そのため、積極的に運動し、骨を鍛えるようにすることが大切です。
一生懸命頑張りすぎている頑張り屋さんタイプの人は、寒さやストレスでカラダが硬くなっているため、運動しても効率的に骨に圧力がかかっていません。そのため、ヒザより下の筋肉をストレッチしましょう。
具体的には、ふくらはぎの腓腹筋(ひふくきん)とスネの前脛骨筋(ぜんけいこつきん)の筋肉は、足首にかかる圧力を調整しているため、定期的にストレッチすることが大切です。息を吐きながら5~10秒程度ゆっくりと、イタ気持ちいい程度にストレッチし、1日10回程度行います(図表2)。仕事や運動の終わりやお風呂上りに行うと効果的です。
生活リズムの乱れによっておこる生活習慣タイプの人は、骨を丈夫にしてくれるような食材をたくさん摂りましょう。骨をつくり出すには、骨の材料となるカルシウムと、その吸収を高めるビタミンD、カルシウムを骨に定着させるビタミンKをバランスよく食べましょう。
牛乳、乳製品、小魚、干しエビ、小松菜、チンゲン菜などと、その吸収を高めるビタミンDを含むサケ、ウナギ、サンマ、シイタケ、キクラゲなど、カルシウムを骨に定着させるビタミンKを含む納豆、ホウレンソウ、ニラ、キャベツなどを積極的かつバランス良く摂取する必要があります。
年齢による加齢タイプの人は、骨に付加を与え、鍛えることが大切です。もっとも効率的な運動が、かかと落とし運動です。骨に適度なストレスを与え、骨の促進を促します。
かかと落とし運動とは、肩幅の広さに足を広げ、つま先立ちをした後に、ストンとかかとを落とす運動です。初めは2~3㎝程度かかとを上げるところからはじめ、徐々に高さを上げていきます。1日30回~50回程度行いましょう(図表3)。
なお、自分のカラダのタイプに関しては、カラダの状態を入れるだけで簡単にわかる無料アプリYOMOGIを利用すると便利です。月に1回(毎月10日まで)入力すると、あなたに合ったその月の養生法が送られてきます。
小雪は冬が本格化していく時期。カラダの冷えは動きを悪くするだけでなく、ホルモンの分泌や生殖器系や泌尿器系の症状にも影響を及ぼし、老化を促進します。そのため、日ごろから下肢を温め、定期的に運動を行うことでアンチエイジングしましょう。
「小雪の特徴」
●心身の症状
カラダ:背中が丸くなる、循環が悪い、内分泌異常
ココロ:気持ちの落ち込み、うつ
●季節に多い症状
骨の脆弱化
●心身の養生法
骨を鍛える(食事、運動、生活習慣)
●食養生に効く食材
クルミ・リンゴ
●ツボ
太谿(たいけい)
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明治国際医療大学大学院/養生学寄付講座教授
鍼灸学医学博士・全日本鍼灸学会理事。同大学附属鍼灸センター長。トリガーポイント鍼治療の第一人者であり、慢性痛の緩和治療に精通。現代女性のための、東洋医学に基づく心身のセルフケアも指導している。
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(明治国際医療大学大学院/養生学寄付講座教授 伊藤 和憲 写真=iStock.com)
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