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スマホ時代にバズる動画に共通する"4つのS"

プレジデントオンライン / 2019年11月19日 15時15分

ワンメディア社長の明石ガクト氏

多くの人にシェアされる動画は、どうすれば作れるか。ワンメディアの明石ガクト社長は「いつの時代も人の心が動く動画には、4つのSが共通している。なかでも最も重要なのはStory(物語)だ」という――。

■自分たちっぽい動画ってなんだろう

ワンメディアは2014年に創業してから、なかなか芽が出ない時期が続いていました。そんなある日、共同創業者であり現在は執行役員を務める佐々木から、「ガクトさん、映像の会社というのはそれぞれ、“あの会社と言えばこういう表現だ”という明確な特徴があるものですよ」といわれました。

たしかに考えてみると、スタジオジブリはたとえ名前が載っていなくても、絵柄やキャラクターの雰囲気、色のトーンなどから、「あ、ジブリ作品だ」、あるいは「ジブリっぽいな」と、なんとなく察することができます。テレビの制作会社やCMプロダクションも同様で、各社とも制作物に滲み出る特徴を持っています。

では、ワンメディアはどうなのかといえば、特徴がある動画を作っているとは決していえない状態でした。これは当時のワンメディアがお金にも人材にも乏しい弱小スタートアップであったため、僕たちならではの表現というものを作る余裕がなかったことにも理由があるでしょう。

お金さえあれば、いいカメラを使ったり、話題のタレントを起用したり、様々なやり方はあると思います。しかし、当時の自分たちはどちらもできない状態だったので、とりあえず「パソコン上で完結する特徴作り」をメンバーで試行錯誤することにしました。

そうして作り上げたのが、ワンメディアの得意とするインフォグラフィックス動画です。

■たどり着いたのは「インフォグラフィックス動画」

インフォグラフィックスとは、複雑なデータや位置関係、時間軸の経過など、テキストで表現するのが難しいものをグラフィックでわかりやすく伝える手法のことです。

ちょうどその当時、フェイスブックやツイッターなどが本格的に流行しはじめ、インフォグラフィックスを活用した画像がバズっているのをよく見ていました。そこでSNS全盛の時代においては、文字情報よりも直感的に理解できるグラフィックのほうが受け入れられやすいだろうと考えました。

さらに、このインフォグラフィックスを静止画ではなく、動画でやればいいのではないか? これが、ワンメディアがインフォグラフィックス動画を軸に制作しはじめたきっかけです。

インフォグラフィックス動画は主に、2つの要素からできています。文字をかっこよくグラフィックにしたタイポグラフィと、図や写真を動かすモーショングラフィックスです。そこでワンメディアでも、この2つの要素をかけ合わせることを意識して動画を制作していました。

限られた選択肢の中で、僕たちが唯一できる手段であったインフォグラフィックス動画。ワンメディアの手掛けたインフォグラフィックス動画は時間の経過とともにSNSで話題になりはじめました。

■1分で伝える

従来、テキストで何ページも使って説明していた内容を、たった1分の動画で説明できる。そしてわかりやすい。それが、インフォグラフィックス動画が新しいコンテンツになり得た理由です。

僕らはそうした動画を月に100本作り、SNSに配信し続けました。結果、それが企業の目に留まるようになり、発注をいただく機会が増えたのです。

ワンメディアは、スマートフォンで見やすいインフォグラフィックス動画を多数制作し、発信し続けることで社会の歯車に乗ったのでした。

そうしてインフォグラフィックス動画を中心に独特の立ち位置を築いたワンメディアですが、来る日も来る日も動画を作り続ける中、ふと世間に目をやると、あることに気付きます。ユーチューバーが商品紹介をするなど、シンプルでわかりやすいコミュニケーション手法として、動画の広告市場は大きく広がっていたのです。

それに対して、現状の動画スタイルのままでは、難しい表現をわかりやすく説明したいクライアントには対応できるものの、提供できる動画の幅は広がりません。これが、僕らが外部のクリエイターと組もうと考えるきっかけになりました。

■自分たちっぽさの先に、さらなる成長がある

会社としてさらなる成長を遂げるには、「ワンメディア=インフォグラフィックスに強い制作会社」であってはならない。世の中に数多存在する優れたクリエイターを支援するメディアカンパニーに発展しなければならない。メンバー一同の強くなった思いが、今年7月に発表した「ONE BY ONE」プロジェクトというクリエイターネットワーク事業につながります。

「ONE BY ONE」プロジェクトはクリエイターと出演者、クリエイターとワンメディア、あるいは出演者とワンメディアという掛け合わせを意味しています。

僕自身、こうして動画の会社をはじめた時には、多くの課題に直面しました。たとえば、出演者が思うようにアサインできなかったり、スタジオなどを借りる費用が不足していたり、さらには自分のポートフォリオを作るための環境がなかなか整わなかったり――。

そうした経験を踏まえ、ワンメディアなら才能あるクリエイターが世の中に出ていくためのサポートができると考えました。理由は3つです。

1. 出演者やトピックの提供
2. 撮影場所、機材の提供
3. SNSを中心とした配信面の提供

これからはSNSやデジタルサイネージなどで積極的に才能を発信していかなければ、クリエイターの活躍の場は増えません。ワンメディアはこの「ONE BY ONE」プロジェクトを通して、クリエイターに必要な上記の3つを提供し、活躍のサポートをしていきたいと考えています。

これによって、クリエイターは自分のクリエイティブの持ち味を活かした作品づくりが可能となり、ワンメディアはインフォグラフィックス動画を提供するだけではなく、多種多様な表現を提供できるようになるという、双方のメリットがあります。もちろん、我々としてはこれまで通りシンプルでストレートな動画でメッセージを伝えたいというクライアントともお付き合いができ、実際にたくさんの案件が生まれています。

■動画で欠かせない“3つのS”

ワンメディアはタッグを組む動画クリエイターの方たちに常々、「動画において3つのSが重要である」と伝えています。これは僕が日頃からよく発信しているインフォメーション・パー・タイム、つまり時間あたりに対する情報の凝縮と密接に関わっています。

「3つのS」とは、Smart phone、Speed、Silentのこと。それぞれ、次のような意味になります。

Smart phone:スマートフォンの小さい画面で見られることを意識して動画を制作すること。

Speed:動画を見るタイミングは人によって異なる。移動中やランチタイムなど隙間時間に再生されることが多いため、短時間の中で情報を凝縮して入れること。

Silent:音を出して外で視聴することは稀なので、音がなくても情報が伝わるようにすること。

これらの要素を合わせることが、インフォメーション・パー・タイムの条件を満たすことにつながります。

ワンメディアはこうした「3つのS」を意識してインフォグラフィックス動画を制作してきました。

■いつの時代も相手の心を動かす“4つ目のS”

そしてここでもう1つ、「3つのS」に続く「4つ目のS」が重要であると僕は考えています。それは「Story」です。

明石ガクト『動画2.0 VISUAL STORYTELLING (NewsPicks Book) 』(幻冬舎)

ワンメディアがインフォグラフィックス動画を中心に制作していた時は、複雑な情報が的確かつわかりやすく伝わることを意識していましたが、最近ではLINE内のVISIONやタクシーサイネージをはじめとする、デジタルスクリーンにコンテンツを配信するようになりました。こうしたデジタルスクリーンの場合は、見ていて楽しいコンテンツを作ることにフォーカスを当てています。

人の感情を動かすのは、いつの時代もストーリーです。見ていて気持ちがポジティブになったり、何かをはじめたくなるような動画を作るためには、何よりもストーリーが大切です。

「3つのS」はいわばテクニック論であり、ハウツーに過ぎません。今度はそのテクニックを使ってストーリーを伝え、人の気持ちを動かすことが、今の動画の世界では最も重要なことであると僕は考えています。これを、「ONE BY ONE」というネットワークと用いて、クリエイターのみなさんとさらに追求していきたいのです。

今、中国では動画をフックにしたECが非常に盛り上がっています。インスタグラムから直接商品を買えるリンクが付き、アパレルやコスメを購入するという新しい消費行動も生まれはじめています。

ではインスタグラムなどを介して物を買う人は、なぜその商品を買うのか? 価格やスペックが受け入れられたからでしょうか?

いえ、違います。直前まで見ていた動画や写真などのビジュアルストーリーを見て気持ちが動き、購入というアクションを起こしているのです。

ワンメディアはこうしたストーリーを大切にし、人の気持ちを動かして販促につながるような動画を提供していきたいと考えています。

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明石 ガクト(あかし・がくと)
ONE MEDIA 代表取締役
1982年、静岡県生まれ。2006年上智大学卒業。2014年6月、ミレニアル世代をターゲットにした新しい動画表現を追求するべくONE MEDIAを創業。独自の動画論をベースにInstagramやYouTubeなどオンラインでの配信のみならず、「山手線まど上チャンネル」や「駅ナカOOH」などデジタルサイネージでの動画配信を行い圧倒的なエンゲージメントを達成している。個人の活動としても、2018年アドテック東京にて「Brand Summit Best Presenter Award」を受賞。NewsPicks Bookから自身初となる著書『動画2.0』を出版。ONE MEDIA 明石ガクトTwitter:@gakuto_akashi

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(ONE MEDIA 代表取締役 明石 ガクト)

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