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「椎間板ヘルニア」の8~9割は手術しなくていい

プレジデントオンライン / 2019年12月7日 11時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/PeopleImages

腰が痛い。でも医者に行っても治らない。どうしたらいいのだろうか。「プレジデント」(2019年11月15日号)では、全国から悩める患者が集まる福島県立医科大学の医師たちに対処法を聞いた。第3回は「椎間板ヘルニア」について――。(第3回/全6回)

■画期的な注射薬が普及しつつある

骨や軟骨の変性による腰痛の代表格として、真っ先に挙げられるのが、腰部椎間板ヘルニア(以下、椎間板ヘルニア)でしょう。腰椎は、「椎骨」という骨が連なっていて、椎骨と椎骨をつないでいるのが、「椎間板」と呼ばれる軟骨。腰を曲げたり、伸ばしたりするとき、腰椎をスムーズに動かせるように、クッションの役割を果たしています。

ところが、椎間板を覆っている「線維輪」の一部が膨らんだり、線維輪の裂け目から「髄核」という椎間板の中身が飛び出たりするのが椎間板ヘルニア。「ヘルニア」とは、ラテン語で「はみ出した状態」といった意味です。ヘルニアが、背骨の中を通っている神経を圧迫したり、炎症を引き起こしたりするので、腰や足の痛みやしびれが表れるわけです。ただし、ヘルニアがあっても、腰痛になるとは限りません。腰痛を経験したことのない青年・壮年の画像検査をしたところ、なんと76%の人にヘルニアが見つかったという調査もあります。

■体への負担の軽い内視鏡手術も

椎間板ヘルニアは働き盛りの若い世代、とりわけ男性に多いのが特徴。建設業や運送業など腰を酷使する職業の人に多発することが知られていますが、デスクワークが長くても腰に負担をかける姿勢を取っている人はなりやすいといえます。

椎間板ヘルニアには前屈姿勢を取ったとき、すなわち前方へ背中を丸めたときに、痛みが強くなるといった特徴もあります。なぜなら、痛みを引き起こすヘルニアは椎間板の背中側にあるのですが、前屈すると椎間板が上下の椎骨に圧迫され、椎間板内部の圧が高まって、ヘルニアによる神経圧迫が強くなるからです。

椎間板へルニアの治療は現在、薬などで痛みを抑えながら、治癒を待つ保存療法がメーンとなっています。実は、ヘルニアの多くが、自然に縮小することがわかったからです。どういうことかといえば、炎症細胞の一種である「マクロファージ」や分解酵素によって、ヘルニアが縮小するのです。ヘルニアの70~90%は、3~6カ月以内に自然に縮小することが確かめられています。

薬物療法では、痛みやしびれを抑えるために、「プレガバリン」や「ミロガバリン」という神経障害性疼痛治療薬が処方されます。最近では、椎間板の水分を保持する力を低下させ、椎間板内圧を下げることによってヘルニアによる神経への圧迫を軽減させるという画期的な注射薬「コンドリアーゼ」が、普及しつつあります。保存療法の期間が、劇的に短縮されることが期待されます。

しかし、10~20%の患者さんは、保存療法では症状が改善しません。とりわけ、神経の幹の部分である「馬尾」が障害されている場合は、症状の進行を止め、神経機能の悪化を防ぐためにも、早い段階での手術をお勧めします。仕事の関係で早く症状を治したい場合も、手術がよく選ばれます。最近では、体への負担の軽い内視鏡手術も行われています。内視鏡手術の場合、入院期間は3~7日が普通。デスクワークなら、約1週間の自宅療養で職場復帰できます。入院費は24万円(自己負担が3割の場合)が目安です。

(福島県立医科大学医学部 整形外科学講座准教授 二階堂 琢也 構成=野澤正毅)

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