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ゲストの「眠たい話」を強制終了させるプロの技

プレジデントオンライン / 2019年11月25日 9時15分

文化放送アナウンサー 太田英明氏

長い。そして退屈……。「眠たすぎる話」をする人に、どう対処すればいいのか。ラジオで数多くのゲストを迎えてきた、手練れのアナウンサーに秘訣を聞いた。「プレジデント」(2019年12月13日号)の特集「話が面白い人、退屈な人」より、記事の一部をお届けします――。

■アナウンサーは、話を切るのが仕事

話の長い方って、困りますよね。聞いているうちに、どうしても眠くなってしまうことがあります。

私の見たところ、そうした話をする人には2パターンあるようです。決して悪口ではありませんが、1つはご高齢の方。1度話し始めると自分の記憶や思考に集中してしまう傾向があるようです。一方で黒柳徹子さんや、元演歌歌手の二葉百合子さんのように、何歳であってもちゃんと周囲の様子を見ながら、話をコンパクトにまとめるのが上手な方ももちろんいらっしゃいます。

もう1つのパターンは、話したいことが整理できず、しゃべっているうちに混乱してくる方。自分でも何を言いたいのかわからなくなって、狼狽してしまうのかもしれません。

そうした方が番組に出る場合でも、サポートするアナウンサーは放送時間内に話を収めるのが鉄則です。長い話を切り上げる基本は、「それって、こういうことですよね」と話を整理することです。脱線していた話が元に戻ったり、一段落ついたりします。アナウンサーは、リスナーという見えない第三者を常に意識せざるをえません。だからスタジオには自分と相手の2人しかいなくても、俯瞰で見るとリスナーを含めた「三角形」で話していることを意識しています。常に第三者的な視点をもつことで、しゃべりながらでも理論や対話の推移を冷静に把握できるのです。

電話で長話されるときも話の整理は有効です。昔、「はい……。はい……」と退屈そうに単調な相槌を打つことで、切り上げたい気持ちに気づいてもらおうとしたことがありました。しかし、ダメでした。そんなことをしても、自分の話をしたいだけの相手は気づかないのです。それよりも、「今おっしゃっていることは、こういうことですよね?」と要所要所で話を整理したほうが、結果的に話は早く終わります。

話を切り上げるため、その場にいる他の人へ話を振る方法もあります。たとえばゲストの話が終わらないとき、僕がメーンパーソナリティの大竹まことさんに話を振ることで、大体の人は「予定よりも長くしゃべってしまったのかな」と察する。ビジネスマンであれば、話を振る相手は目上の人や役職者のほうがいいでしょう。そうすれば長広舌をふるっていた人も、話す順番を譲りやすい。

ちょっといやらしいけれど、最初に「ヨイショ」をかますのも効果的です。たとえば番組にゲストをお迎えするとき、僕は必ず自分から挨拶して、「椅子の高さ、大丈夫ですか。飲み物は何がいいですか?」と気を使ったり、街頭インタビューでは「知的な感じがしますね。お仕事は?」など、機嫌よくしゃべってもらえるように接します。それによって後でこちらのペースに合わせてくれるような「下地」をつくっておくのです。

■自ら話に参加して、自然に主導権を握れ

眠たい話を終わらせるのにもっとも大事なのは、自分が話の進行の主導権を握ることです。話を止められないということは、向こうに主導権を握られているということ。ただ座って話を聞いているだけでは受け身なので、向こうのペースでダラダラしゃべられると、防ぎようがありません。急にさえぎったら、「いきなりなんだ?」と部外者が騒ぎ出したような扱いを受けます。そこでところどころで話に参加しておいて、その場をコントロールする立場を維持しておくのです。

説教をされているなら、自分から至らぬところを認めて先に謝ってしまう。会議が混乱して長引きそうなら、司会でなくても、「今、こういう論点になってますよね。ということは、こうしたほうがいいのではないでしょうか」と話を整理してみる。話に割って入るのは勇気がいるかもしれません。しかし勇気をふるって口を挟むと、その一言が助け舟となり、意外と空気を乱すことなく議論が収束することが往々にしてあるものです。会議でも説教でも、「お客さん」でいないで、当事者意識をもって参加する。そのことで話を終わらせる一手が打ちやすくなるし、用事も早く済んでそのぶん時間を有意義に使えます。

会議で長い話を打ち切るには、場所取りも肝心です。参加者の中に長話の常習犯がいると、ついその人から離れたくなるもの。そこで僕はいつも、その人の隣に座るようにしています。近ければ、「それってこういうことですよね」という整理するフレーズが自然な感じで言いやすい。司会や会議の中心となる人の正面に座るのも、話に割って入るのには有効です。司会者と目を合わせることで発言の機会をとらえやすくなり、発言していると2人を結ぶ線が会議の中心線であるような存在感も演出できます。

■人の話を聞きながら眠った大物司会者!

眠たい話を聞いていると、集中力が切れて、話の流れが頭に入らないことがあるかもしれません。そんなときに僕は、自分の部署に帰ってから、会議の内容を部員に報告するようにイメージしています。もし部下がいなくても、いると仮定して聞いてみてください。「この議題はうちの部には関係ないからいらない。でもここは重要だな」というように、あとで部員に会議の内容を伝えるつもりで耳を傾けてみる。そうすると当事者意識が芽生えて、集中力が持続します。

そして、もし何をしてもエンドレスに眠たい話が続く場合は、いっそのこと眠ってしまってもいいのではないでしょうか。僕は1度だけ、放送中にみのもんたさんが話を聞いているふりをしながら、目を閉じて寝ているのを見たことが……あったような気がします。それでも相手はまったくそれに気づきませんでした。そもそも話の長い人は、自分のことで頭がいっぱいだったり、鈍感だったりするものです。イチかバチかで眠ってしまうというのも、最後の手段かもしれません。

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太田 英明(おおた・ひであき)
文化放送アナウンサー
アナウンス部長。1963年、東京都生まれ。慶應義塾大学文学部文学科卒業後、86年文化放送に入社。『大竹まことゴールデンラジオ!』に出演中。

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(文化放送アナウンサー 太田 英明 構成=長山清子 撮影=岡田晃奈)

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