支持率5割切りに安倍政権が焦りを深めるワケ
プレジデントオンライン / 2019年11月25日 18時15分
■首相復帰後、「初の危機」に直面している
11月21日に「憲政史上最長」の在任期間に到達した安倍晋三首相。ところが、これと並行するように政権の大暴落が進んでいる。一連の「桜を見る会」問題が発覚以降、報道各社が行う内閣支持率が急落しているのだ。
約7年におよぶ長期政権を支えてきた安定的な支持が崩れ始めた今、安倍氏は、2012年暮れに首相復帰後、初の危機に直面している。
■内閣支持率は48.7%は「数値よりも内容が悪い」
共同通信社が23、24日の両日に行った世論調査によると、内閣支持率は48.7%。10月の前回調査と比べて5.4ポイント下がった。
「桜を見る会」問題に火が付いて以来、各社が行っている世論調査は、おおむね同じ傾向が続く。内閣支持率は5~7ポイント程度下落して5割前後になっている。
「5割」という数値は必ずしも低いとはいえない。共同通信社の調査でも安倍内閣の支持が4割を割り込んだこともある。その時と比べれば十分高い。しかし、世論調査ウオッチャーたちによると、今の内閣支持率は「数値よりも内容が悪い」という。
■これまでは2~3カ月すると持ち直していたが…
かつて安倍内閣の支持が落ちたのは、特定秘密保護法や、集団的自衛権の行使を一部容認した安全保障関連法などを成立させた時だった。反対が根強い中で強引な国会運営をした影響もあったが、ある程度支持率が下がるのを覚悟して、信念に基づいて政策を押し通した結果だった。覚悟していたから、措置しやすい。だから2~3カ月すると支持は持ち直していた。
10月下旬、菅原一秀経済産業相と河井克行法相を巡る「政治とカネ」の問題が起きた時も、安倍氏はある程度支持が下落することを予測し、2人をあっさりと更迭。前後して、国民から批判が集まっていた大学入学共通テストへの英語民間検定試験の導入も見送る決断をした。
その後の世論調査では、内閣支持率は下がらず、むしろ評判の悪い英語民間検定の導入を見送ったことで評価を高めたほどだ。こういった危機管理が長期政権を築いてきた知恵でもあった。
しかし今回の支持低下は安倍氏にとって想定外だった。安倍氏も、安倍事務所も、首相官邸も「桜を見る会」についての危機感は乏しかった。この問題は10月13日、「赤旗」日曜版で問題点が指摘されている。しかし11月8日に参院予算委員会で共産党の田村智子氏が追及するまで十分な対策を練っていなかった。
■不支持理由の圧倒的1位は「首相が信用できない」
共同通信のデータを元にもう少し深く分析してみたい。安倍内閣を「支持しない」と答えた人にその理由を聞いた設問がある。その中で圧倒的な1位は「首相が信用できない」で36.0%。前回は27.8%だから、8.2ポイントも上がったことになる。さらに「首相にふさわしいと思えない」も前回の11.4%から15.3%に上がっている。
前回は「経済政策に期待が持てない」が1位だった。要するに安倍政権を評価しない人は、前月までは政策に対する批判が多かったのだが、今は安倍氏自身に拒否反応が主となっている。理由は「桜を見る会」への対応だ。
この問題につい安倍氏の発言を「信頼できる」という回答は21.4%、「信頼できない」は69.2%。「桜を見る会」を巡って安倍氏に不信が高まったことが内閣支持の低下の主要因になっていたことが、はっきり分かる。
■多くの人が「そんなはずはない」と思う説明ばかり
「桜を見る会」の問題はわかりやすい。税金を使って来客をもてなす会に安倍氏の後援者を大量に招いていたという話は、安倍氏が政権を私物化しているという印象を誰もが持つ。
「桜を見る会」の前日、都内の高級ホテルで開かれた「前夜祭」について安倍氏は、総額を示す明細書はなかったと説明しているが、多くの人は「そんなはずはない」と思うはずだ。このことは、すでに「支持者を堂々と『税金』で接待する安倍氏の驕り」(11月13日)や「丁寧に説明するほど疑惑増す『安倍首相の逆説』」(11月18日)で解説している。
この問題は安倍氏個人に向けられている。「森友学園」の疑惑では安倍氏の妻・昭恵氏の関与が疑われた。「加計学園」では、安倍氏の友人である加計学園の加計孝太郎理事長の存在が注目された。また、最近では安倍氏が任命した閣僚が相次いで辞任した。その都度、安倍氏も批判されたが、安倍氏は脇役だった。
しかし「桜を見る会」は、文句なく安倍氏が主役。彼自身に批判の目が向けられている。だから問題は大きく、対応が難しいのだ。
■「安倍政権には岩盤支持層が3割ある」は健在
安倍氏はどこまで追い詰められてしまうのだろうか。最近、野党からは疑惑がさらに深まる前に安倍氏が衆院解散してしまうのではないか、という観測が出ている。また永田町内では安倍氏が政権を投げ出し、辞任するのではないかとの見方さえある。
しかし、そこに至る可能性は、現段階では低いとみたほうがいい。共同通信社のデータにもう一度戻ろう。「桜を見る会」に安倍氏の支援者が多数招待されたことを問題だと思うかどうか、という設問に対し「問題だと思う」は59.9%、「問題だと思わない」が35.0%だった。
ここで注目するべきなのは「問題だと思わない」が35%もあることだ。今、テレビ、新聞がこぞって「桜を見る会」を取り上げて批判する中、「問題だと思わない」と答える人は、どんなことが起きても安倍氏を支持しようと考える岩盤支持層だ。
これまで安倍政権が窮地になっても、内閣支持率が30%台で下げ止まることから「安倍政権には岩盤支持層が3割ある」と解説されてきた。世論調査を見る限り、まだこの「岩盤」は健在であることを示している。
野党側はこの問題で一気に倒閣まで持ち込もうと息巻いてはいるが、「桜一辺倒」では難しいことも世論調査は雄弁に語っている。裏を返せば、安倍氏の国会などでの説明に明確な矛盾が生じ、「岩盤層」も崩れ始めた時、今度こそ安倍政権は終末を迎えることになるだろう。
(永田町コンフィデンシャル)
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