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なぜSNSの友達が増えるほど寂しさが募るのか

プレジデントオンライン / 2020年1月4日 11時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/monzenmachi

何もすることがないとき、なぜ人はSNSを開いてしまうのか。SNSに、キラキラとした日常を投稿する大学時代の友人にあなたは何を思うか。正しい孤独との付き合い方とは何か。アンケートと精神科医の分析で、あなたの孤独ライフをサポートします。

■精神医学の文脈では、孤独は自殺の原因

一体、孤独を感じやすい人にはどのような特徴があるのだろうか。今回実施した1300人のビジネスパーソンを対象にしたアンケートの結果、年齢や職業、年収などによって人が孤独を感じる度合いは大きく変わることがわかった。

精神科医でベストセラー作家でもある樺沢紫苑氏は、今回のデータを受け、「孤独が好きだ」と答えている人の割合の多さに注目した。

「年代別では20代を除いて半数以上が『孤独が好きだ』と答えています。今や、日本は3人に1人が単身世帯ですが、今後その割合は2人に1人になると言われています。そうした社会変化に適応できている日本人が意外に多いとわかる調査結果だったと言えるでしょう」

だが、「孤独が好きだ」と答える人が多い状況は決して歓迎できるわけでもないとも樺沢氏は指摘する。

「心理学や精神医学では、孤独は自殺を招く大きな原因と言われており、解決すべき社会問題と捉えられています。人は社会とのつながりがなくなったときに生きる意味を失い、自殺しやすい。一方で、自分のことを気にかけてくれる人が1人でもいると、自殺する確率は一気に低くなるのです。

自殺する人の3分の2は誰にも相談しないで自殺に至っているというデータがあります。気軽に相談できる人がいれば自殺を防げる可能性が高いのです。友達をいたずらに増やす必要はないですが、最低限、頼れる人がいることはとても重要なことです」

さらに興味深いのは、男女間でも孤独について差があることだ。

「どういうときに孤独を感じるか?」という質問に対し、男性は「誰もいない家に着いたとき」という答えが1位だったのに対し、女性は「悩みを相談する人がいないとき」が1位となった。

「配偶者が先に亡くなった場合、孤独になった男性の死亡率が2.4倍に増える一方で、女性は独身になってもあまり変化がないという研究結果があります。家にいるパートナーの死が大きな精神的ダメージになる男性に対し、女性はパートナー以外にも気軽に話せる相手が多いため、孤独を感じにくいのです。つまり、女性にとっては話せる友人の数のほうが重要なのです」

とは言っても、いたずらに人とつながることは、「孤独感を大きくすることにもつながる」と樺沢氏。

その典型例がSNSだ。アンケート結果によると、1日のSNS利用時間が0時間で「孤独を感じる」と答えた人の割合が64%だったのに対し、1~2時間と答えた人は87%。つまりSNSの利用時間が長い人ほど孤独を感じやすいのだ。

■SNSの利用は、幸福度に大きく影響

「考えられる原因は2つです。1つ目は、SNSを使っている時間が長い人は、1人の時間が寂しいと思っている可能性が高いこと。SNSを開くと、友人の投稿が溢れています。さらに自分が投稿すれば『いいね』やコメントなどの反応が返ってくる。SNSは、そうした寂しさを埋め合わせる存在になるため、頻繁に開いてしまうのではないでしょうか。2つ目の原因は、SNSを長時間開く人ほど現実社会が充実していないから。人と会っている時間にSNSを見る人は少ないはずです。今、目の前に一緒に過ごす相手がいる人は自然とSNSを開く時間が減るのです」

また、SNSの利用時間は幸福度にも大きな影響を与える。

「ある調査結果によると、SNSの利用時間が長い人ほど幸福度が下がるというデータもあります。つまり、幸福度という点でも、SNSの長時間利用はよくないのです」

その要因としては、他人のいわゆる「リア充」投稿を見て疎外感を持ったり、逆に自身のリアルが充実していないから、結果的にSNSの利用時間が増えてしまったりすることが考えられるのだという。

では、ネット上ではなく、リアルの対人関係と孤独感にはどのような関係があるのか。例えば、なんでも相談できる友人がいれば、孤独感は薄れるのだろうか。

「腹を割って話せる友達の数」を調査したところ、0人と答えた人で「孤独を感じる」と答えた人は66%だったのに対し、6~10人と答えた人は87%だった。「腹を割って話せる友達」が多い人のほうが、少ない人よりも孤独を感じやすいのである。

一見、友達が多いほうが孤独を感じにくいようにも思えるが、これはなぜだろうか。

「友達の数が多くなるほど、一人ひとりとの関係は必然的に薄くなります。いくら『腹を割って話せる友達がいる』と言っても、その相手が6人以上だと、それぞれと話せる内容は限られるはず。また、友達が多いというのは、寂しいことの裏返しとも言えますし、実は本当に親しい友達は1~2人にしかならないという社会学の研究結果が出ています。このアンケート結果は妥当と言えるでしょう」

友人関係だけでなく、年収面も孤独感に影響を及ぼす。

■低年収の人が孤独なときにすること

年収別に孤独を感じている人の割合を調査したところ、低年収なほど孤独を感じる人が少なく、高年収になるほど孤独を感じる人が多いことがわかった。また、低年収(299万円以下)の人で「孤独が好きだ」と答えた人が43%なのに対し、高年収(1200万円以上)の人は59%と、高年収の人は自分を孤独と感じやすく、かつ孤独が好きということが明らかになった。

「高年収の人の中には、企業の管理職や経営者が多く含まれるはずです。彼らは低年収の人に比べて、たった1人で決断し、行動することが多い人たち。日々孤独を感じているものの、その環境がそこまで嫌ではないというのには納得がいきます。一方、年収が低い人は、自分と同じ境遇の人が周囲に多く、それゆえに自分が孤独だと感じにくいのかもしれません」

また、「1人のときにやること」についてはすべての年収で「映画やドラマを見る」が1位だが、高年収にはない「寝る」と答えた人が低年収になるほど増え、孤独を感じたときの対処の仕方にも顕著な差が見られた。

私生活面ではどうだろうか。

ペットの有無でも、人が感じる孤独には大きな差がある。ペットを飼っている人のほうが、飼っていない人に比べて9%も孤独を感じる人が多かった。

「ペットと触れ合うことでオキシトシンという脳内物質が出ます。このオキシトシンとは、人がセックスしたあとに出る快楽物質です。通常、人間同士が触れ合うことで分泌される物質ですが、動物と触れ合ってもオキシトシンは分泌されます。つまり、ペットは孤独を埋め合わせる癒やしの存在として、セックスの機能的代替物となっているのです。孤独を感じている人のほうが、癒やしを求めているのでペットを飼いやすいのでしょう」

業種別の孤独を感じている人の割合でも大きな差が出た。グラフを見て明らかなように、教育業が88%、医療・福祉業が84%と専門職に就く人が孤独を感じやすい一方、運送・輸送業が68%、不動産業72%、電気・ガス・水道業が73%とインフラ系の業種が孤独を感じにくいという調査結果が得られた。

「教師も医療関係者もスペシャリストと言われる職業です。彼らの業務は、ほかの誰かに相談できず、決断の孤独が生まれやすいのが特徴です。例えば、教師はクラスの生徒たちと触れ合う機会が多いとは言え、彼らに頼るわけにはいきません。責任も大きく、孤独を感じやすい」

■友達の多さが正解ではない

仕事でたくさんの人とつながっていそうで、つながっていない。上位にランクインした業種にはそのような特徴があるのだ。

「3位のマスコミも、読者や視聴者からの声が作り手に直接届くわけではなく、自分の作ったコンテンツへの感謝が直接届きにくい仕事と言えます。人は自分のやっていることが誰かの役に立っているのかに疑問を持つと孤独を感じます。その点で、『孤独を感じる』と答えた人の割合が低かった運送・輸送業は日々誰かに頼られ、感謝される仕事と言えるでしょう。

荷物を届ければ、お客さんから直接感謝されます。バスの運転手ならば乗客からありがとうと言われる機会も多いでしょう。また、電気・ガス・水道業などのインフラ系は、個人の裁量権は少ないですが、大企業に所属し、チームで仕事をするケースが多いので孤独は感じにくいのでしょう」

最後に、孤独と年齢に関するデータを見たところ、孤独を感じる割合は20代と30代は80%なのに対し、40代以上は70%台と、おおむね年齢を重ねるごとに数値は低くなっていた。加えて、「孤独が好き」と答える人の割合は、50代が60%と際立っている。その背景にあるのは「家族の存在」と樺沢氏。

「精神科医としてさまざまな相談を受けますが、交友関係の悩みは若い人に圧倒的に多いです。年齢を重ねるに従って結婚して子供を持つ人の割合は増えますから、家族がいることで孤独を感じる人が減っているのは納得できます。

30代から40代で急激に数値が下がっているのはそのためでしょう。50代が孤独を好むのは、結婚したものの、家で居場所がないと考えている人が出てくるからではないでしょうか。家族がいても、ライフサイクルの変化で孤独を感じるのは珍しくないのです」

調査結果全体を通して、人とのつながりが孤独感に影響を与えていることがわかるが、「友達の数が多いことが正解なわけではなく、信頼できる相手を見つけ、感謝の言葉を投げかけられることが重要」と樺沢氏。やはり、妻など特定の1人を大事にすることが結局は重要ということだろうか。

アンケートは調査会社を通じて集計。20代、30代、40代、50代、60代各20人ずつ、13の業種でインターネット調査を実施した。

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樺沢紫苑
精神科医・作家
1965年、札幌市生まれ。札幌医科大学卒業。米・イリノイ大学への留学を経て樺沢心理学研究所を設立。『学びを結果に変えるアウトプット大全』など著書多数。

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■▼配偶者を亡くし、孤独になった男性の死亡率は約2.4倍!

■▼低年収は孤独を嫌い、暇なときは「寝る」

■▼精神科医が語る20代が一番孤独な理由とは

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鈴木 俊之(すずき・としゆき)
編集者・ライター
1985年生まれ。12年法政大学卒業、出版社入社。月刊誌編集部を経て15年独立。専門分野は金融、起業、IT、不動産、自動車、婚活、美容など。

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(編集者・ライター 鈴木 俊之 撮影=横溝浩孝 写真=PIXTA)

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