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なぜ日本人は「英語で自己表現」できないのか

プレジデントオンライン / 2020年1月3日 11時15分

大学入試への英語民間試験導入には、高校生からも批判が寄せられている。(PIXTA=写真)

■なぜ、日本の英語教育はダメなのか

大学入試の英語民間試験の導入が延期された。

これからの国際社会での活躍を考えるときに、英語を読む、聞くだけでなく、話す、書くを含めた「4技能」が望ましいのは言うまでもない。

その一方で、英語でコミュニケーションをする能力を、限られた時間の中で実施されるテストで測るというアプローチ自体に無理があるように思う。

諸外国では、英語における自己表現はもっと時間をかけて、たっぷりと深くやるのが常識である。

小学校に入るかどうかくらいの年齢から、自分の好きなものを持ってきてみんなの前で説明する「ショー・アンド・テル」と呼ばれる課題を行う。劇でいろいろな役を演じる「ドラマエデュケーション」も盛んだし、エッセイも自由なテーマで長い文章を書くのが普通である。

本来、学校での学習や、大学入試では、たっぷりと時間をかけて表現する中で培われ、見えてくる一人一人の個性、総合力を評価するのが望ましい。実際、諸外国ではそんなかたちを取っている。

学校での学びの本格的な変革をせず、ただ、テストの形式だけを微調整する。そのようなやり方では、もはや日本の教育を立て直すのは難しい。

■日本の学校のシステムを変えるのは難しい

ところで、日本の学校のシステムを変えるのは難しい点もたくさんあるが、気がつくとすでに多様な動きが生まれ始めている。

先日も、ある地方に行ったときに、高校の先生とお話しした際、県の教育委員会主導で、「国際バカロレア」準拠の学校が複数設立されつつあるのだと聞いた。探究学習、アクティブラーニングを基礎として、「全人教育」を行うのだという。

文部科学省自体も、国際バカロレアに基づく教育を推進する立場である。学びのスタイルは、従来のカリキュラムとは一線を画す。そして、国際的な大学入学資格が与えられる。

知人の1人は、子どもを特別な才能がある「ギフテッド」のための通信制の学校に在籍させている。

さまざまな国の大学で教え、複数の研究機関と関係している彼は、子どもを一緒につれて世界中を飛び回っている。だから、1つの校舎に通うような学校は無理である。

聞いてみると、非常に高度な教育がなされており、また「宿題」もたくさん出て、彼の子どもは、世界を転々としながら科学やプログラミング、英語などの課題を猛勉強して提出しているのだという。

面白いことに、その通信制の学校に在籍している生徒の中には、テニスの若きプロだったり、さまざまな種目で世界選手権やオリンピックで活躍しているアスリートが含まれ、金メダリストもいるのだという。

考えてみれば、世界を転戦する若きプロにとって、1つの学校に通うことは無理である。通信制の学校は、その需要を満たしている。進学実績は極めて高く、米国のアイビーリーグの名門校などに多数合格しているのだと聞いた。

英語民間試験の導入は、従来の日本の教育、受験システムの延長線上にある。一方で、全く異なる、新しい動きが日本の社会にも徐々に浸透してきている。

これからは、もし子どもに最高の教育を受けさせようと思ったら、受け身でなく積極的に情報収集しなければならないだろう。「教育ビッグバン」はすでに始まっている。

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茂木 健一郎(もぎ・けんいちろう)
脳科学者
1962年生まれ。東京大学理学部、法学部卒業後、同大学院理学系研究科修了。『脳と仮想』(新潮社)で第4回小林秀雄賞受賞。『幸せとは、気づくことである』(プレジデント社)など著書多数。

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(脳科学者 茂木 健一郎 写真=PIXTA)

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