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電話が鳴ったら3回に1回だけ取るが正解なワケ

プレジデントオンライン / 2019年12月12日 11時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/PRImageFactory

「とても敏感な人」(Highly Sensitive Person)が対人関係や仕事でストレスを溜め込まないためにはどうすれば良いか。HSP専門カウンセラーの武田友紀氏は「私は親しみを込めて『繊細さん』と呼んでいます。繊細さを長所と捉え、自分のルールを作ると葛藤疲れに対処できます」という――。

※本稿は、武田友紀『「気がつきすぎて疲れる」が驚くほどなくなる「繊細さん」の本』(飛鳥新社)の一部を再編集したものです。

■「いつも私だけ忙しい」を抜け出す

これから繊細さんが働くうえでぜひ身につけていただきたい、とても大切な習慣をお伝えします。

「同僚のフォローをしているうちに、大変な仕事が自分に集まるようになった」「やらなきゃいけない仕事があるのに、みんな忙しくて手が回らないから、私が引き受けて夜遅くまでやっている」

こんなふうに、職場における繊細さんたちの「最大の悩み」は、とにかく忙しくなりがちなことです。なかには「もう少し時間に余裕がほしいと思って転職するけれど、どの仕事でもいつの間にか忙しくなる」と話す人もいます。

なぜ、繊細さんは忙しいのでしょうか?

繊細さんは非・繊細さんより多くの物事に気づくため、気づいたことに片端から対応していると、処理する量が単純に多くなり疲れ果ててしまうのです。そのため、気づいたことに半自動的に対応するのではなく、対応すべきものと放っておくものを自分で選ぶ必要があります。

具体的には、自分の行動を「気づく」と「対応する」に分けて考えます。

繊細さんは、作業する、メールを見る、といったごく普通の行動をしているだけで、「この部分に無駄がある。こうすればもっと効率化できるんじゃないか」「この問い合わせには、こちらの状況も伝えておいたほうがいいだろう」などと、次々と改善すべき点に気づきます。

これはOK。繊細さんにとって「気づく・気づかない」は、自分の意志でコントロールできるものではないのです。

■「気づく」と「対応する」に分けて考える

さて、ここからが肝心。気づいたことに対応するかどうかは、自分に余裕があるか見ながら判断します。たとえば、メールの返信で、「聞かれたことに答えるだけではなく、こちらの状況も伝えたほうがいい」と気づいたとき。

サクッと状況を伝えられるなら対応してもOK。もし、状況を同僚に確認し、言い回しや伝える順番を考えて、資料も添付して……と、芋づる式にやったほうがいいことが出てきたら、いったん手を止める。

時間をかけてでもやるべきことなのか、考えてみてください。ときには「気づいても対応しない」という選択も必要です。

なぜかいつも忙しくなる、仕事が溜まっていく。そんなときは「気づいたこと全てに対応しようとしていないか?」を振り返ってみてください。心身ともに健康に働くためには「対応すべきことを自分で選ぶ」「致命傷でなければ、対応せずに放っておく」ことがとても大切なのです。

■気づかないあの人の真似をしてみよう

前の項で、「対応すべきことを自分で選ぼう」と書きました。「職場でそんなことできない!」と思った方もいるかもしれません。ですが、生命に関わる場合を除き、「気づいても対応しない」という選択肢は存在します。

実際、職場を見渡すと「自分より気づかない人」あるいは「気づいても対応しない人」がいるのではないでしょうか。

電話が鳴っても出ない人、仕事が残っていても定時になれば「お疲れ様です」と切り上げる人、改善を提案しても「そうしたほうがいいのはわかるけど」と現状のやり方を続ける人。繊細さんにも、「気づかないあの人」「動かないあの人」と同じように振る舞う選択肢があります。

あれもこれもと仕事に追われるときは、気づかない同僚を思い浮かべて、「あの人でもここまでやるだろうか」と考えてみてください。「やらないかも」「もうちょっと手を抜くかも」と思ったら、自分も手をゆるめてみる。気づかない同僚をモデルに、少しずつ自分の「やらなきゃ」の縛りをゆるめてみましょう。

■職場でぼーっとする意外なメリット

介護施設で働くKさん。夜勤もこなす彼女は、職場で休めないという悩みを抱えていました。夜勤で一緒になる同僚は「聞こえてないのかなと思うぐらい」コールに出てくれないため、いつも自分が対応しているといいます。

夜勤では決められた休憩時間もあるそうなのですが、雑談している同僚をよそに、Kさんは翌日使う器具の準備に、コールへの対応にと、休めないまま働き通しだといいます。そんな彼女に、私から「率先して動くのをやめて、職場でぼーっとしてみよう」と宿題を出しました(もちろん介護施設の利用者さんに危険のない範囲で、です)。

すると、どうなったでしょう。コールが鳴ると同時に手を伸ばしそうになるのを一瞬だけこらえることで、同僚がコールをとるようになったそうです。「この人、コールとるんだ! と思いました」とKさん。今まで、ピストルが鳴ったと同時に走り出す陸上選手のように、やるべき仕事をキャッチしては率先して動いていたため、同僚の出番がなかったのです。

気づかない同僚をお手本に「やらなきゃ」をゆるめていったKさん。夜勤でも、ソファに座って休憩することができたそうです。率先して動くのをやめても、休憩しても、大丈夫。自分がすべてを背負わなくても、仕事は案外進んでいくのです。

■職場の電話、とるかどうか悩んだら…

Kさんの例は介護施設でしたが、「職場で電話が鳴るたびに、とるかどうか悩む」という方もいるのではないでしょうか。

忙しい中、電話をとれば対応に時間をとられてしまう。電話が鳴るたびに「誰かとってくれないか」と願ってみたり、書類作成に忙しいフリをしてみたり。かといって同僚たちの忙しい状況もわかるので、聞こえないフリをしている自分にも罪悪感がわく……。

このような葛藤は、繊細さんを疲弊させます。「周囲への配慮」(みんな忙しそう)と「自分の利益」(でも私も忙しい……)が対立する場面では、さまざまな考えが頭をめぐり、何もしていなくても疲れてしまうのです。

この葛藤疲れを防ぐには、マイルールが有効です。たとえば、電話をとるのは3回に1回だけと決める。鳴るたびにとるかどうか迷うのではなく、「さっきとったから、今回はとらない」「2回スルーしたから、次はとる」とルールに基づき判断するのです。

電話の他にも、「上司に質問したいけどどうしようか」「食器を片付けてから寝るか、翌朝片付けるか」といった、毎回のように生じる悩み、悩む時間がもったいないと思える場面で特に有効です。

■3回に1回だけと決める

ルールによって、際限ないシミュレーションを止める。最初は戸惑うかもしれませんが、ルールの運用に慣れてしまえば、「こうしよう」「ああしよう」「でも……」と考えることなく行動に移せます。

ちなみに、マイルールは「もし/ならば」という形で作っておくのがおすすめです。起きやすい問題と対処法をセットで考えることで、実行に移しやすくなるのです。

《例》

・もし電話が鳴ったら、3回に2回は無視し、3回に1回とる
・もし上司に質問しようか悩んで10分経ったら、席を立って聞きに行く

ある相談者さんは電話に出るのは3回に1回だけと決めたところ、電話に緊張することが減り、仕事後のぐったり感が和らいだとのことでした。葛藤疲れには、マイルールで対処。この小さな工夫を、ぜひ取り入れてみてください。

■気持ちよく働いている繊細な人の共通点

営業、事務、看護師、教師、アーティスト、秘書、経営者など、さまざまな職種の繊細さんに会ってきました。どんな職業であっても、気持ちよく働いている繊細さんには、「共通点」があります。

それは、自分が思う「いいこと」「いいもの」を仕事にしていることです。営業であれば「自分が心底いいと思える商品だと、自信を持って売れる。自分が好きじゃないもの、納得行かない商品を売らないといけないのは苦しい」ということ。

これは一見当たり前に思えるかもしれませんが、世の中には、思い入れのない商品でも「これが仕事だから」と売っていける人もいます。

繊細さんは感じる力が強く、良心的。心の中の小さな違和感を「まぁいっか」と流したり、なぁなぁにしたりすることができません。「この商品、あってもなくてもいいよな」と思っていると、売るたびに嘘をついているような気がしてストレスが溜まるのです。

逆に、「この商品は役に立つ」「お客さんのためになる」と思えるものを扱うと、自分で売り方を工夫していきます。いいと思えるものを扱うと工夫して成果をあげる一方で、いいと思えないものに関わると消耗してしまう。

そんな繊細さんがやりがいを持って働くには、自分が扱う商品やサービスを「いい」と思えるかどうかも大切なのです。

■自分が思う「いいこと」ができる仕事に就く

この「いい」「悪い」は、世間的に見た「いい」「悪い」や、稼ぎが「いい」「悪い」、誰かの言う「それっていいことだよね」とは異なります。あくまでも自分がその仕事をどう思うかが大切です。

繊細さんのお話を聞いていると、同じ物事について正反対の価値観に遭遇することがあります。雑貨屋で働くAさんは便利グッズやアイデア商品が好き。次々に発売される新商品を「次はこれが売れるんじゃないか」と予想しながら発注するのが面白いといいます。

一方、雑貨の卸で働くBさんは、低価格の商品が大量に流通するのを目の当たりにしてモヤモヤ。「地球の資源を大切に、永く大切に使われるものを扱いたい」という自分の思いに気づき、転職を検討しています。

AさんとBさん、両者が関わっているのはどちらも「雑貨」なのですが、ふたりの思いは全く異なります。Aさんは雑貨を扱うのが幸せ、Bさんにとって雑貨は幸せに反する。どちらがいいというのではなく、ただそれぞれ「いい」と思うことが違うのです。

自分は何を「いい」と思っているのか?

それはすなわち、自分が何を幸せだと思っているのか、ということ。自分が思う「いいこと」ができる仕事に就くと、働くたびに「今日もいいことをしたなぁ。よかったなぁ」と心が満たされていきます。

■幸せに活躍できる仕事の選び方

「繊細な人に合う仕事ってありますか?」

多くの繊細さんからされる質問です。看護師、公務員、教師、コンサルタント、伝統工芸の職人、ハンドメイド作家、システムエンジニア、経営者……実にさまざまな職種の繊細さんたちから相談を受けてきました。繊細さんはあらゆる業種・職種にいます。

一人ひとり、やりたいことも得意なことも違うため、「繊細さんに合う仕事はこれ」という答えは残念ながらありません。たとえば「困っている人の日常のお世話をすることが合っていて、介護の仕事が本当に好き」という繊細さんと話した数日後に、別の繊細さんから「困っている人に寄り添いたいと思っていたけど、介護の仕事は合わなかった」とご相談をいただくこともあるのです。

画一的な答えはないものの、600名を超える繊細さんたちから相談を受けて、繊細さんが充実感を感じながら幸せに働くための条件がわかってきました。

それは次の3つです。

1.想い――やりたいこと、いいなと思えること
2.強み――得意なこと
3.環境――職場環境や労働条件

これらが満たされるところに、幸せに活躍できる仕事=適職があります。

繊細さんが「今の仕事は自分に合っているんだろうか?」と悩むとき、大きく3つのケースに分けられます。ひとつ目は、仕事がつまらないケース。やりたいと思える仕事ではなかったり、会社の商品・サービスに関心を持てなかったり。

そうすると「お給料はいいし、職場の人たちも優しい。でも、どうしても仕事がつまらない。やりがいがない」となります。「今の仕事に関する勉強をもっとしないと……とは思うけど、なかなかやる気になれない」と話す繊細さんも。

■キーワードは想い、強み、環境

武田友紀『「気がつきすぎて疲れる」が驚くほどなくなる「繊細さん」の本』(飛鳥新社)

仕事に悩むふたつ目は、仕事に強みを活かせていないケース。「努力しているけど、なかなか上達しない。どんなにやってもうまくいかない」「社内でもっと認められたい。でも、何かがすごくできるわけでもないし……」という状態です。苦手なことを仕事にしていると特に、がんばっても結果が出にくい。

そして最後、3つ目は、職場環境や労働条件が合わないケース。「やりたかった仕事で結果を出し、高く評価されているけれど、忙しすぎてつらい」「シフト勤務だと落ちつかない」「職場の人とどうにも合わない。話が通じないし、考え方が根本的に違う」などです。

仕事内容が合っていても心身の消耗が激しいと続けれられません。また、職場の人と価値観が大きく違うと、自分がよかれと思ってした仕事が歓迎されないなど、がんばりを評価されにくい。幸せに活躍し、かつ、無理なく働き続けるためには、

・やりたいと思えるか(想い)
・得意を活かせるか(強み)
・働き続けられる職場環境かどうか(環境)

この3つに着目して仕事を選ぶ必要があるのです。自分が幸せに働ける仕事はなんだろう? そう思うときは、ぜひ一度、ゆっくり時間をとって、

・やりたいことはなんだろう?(想い)
・得意なことはなんだろう?(強み)
・どんな人たちと、どんなふうに働きたい?(環境)

と、考えてみてくださいね。

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武田 友紀(たけだ・ゆき)
HSP専門カウンセラー
1983年福岡県生まれ。九州大学工学部機械航空工学科卒。大手メーカーでの研究開発に従事後、HSP専門カウンセラーとして独立。HSPならではの人間関係や幸せに活躍できる仕事の選び方を研究。フリーのカウンセラーとして個別相談や適職診断を行う。

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(HSP専門カウンセラー 武田 友紀)

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