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「頑張れ」より効果的な受験直前の声がけワード

プレジデントオンライン / 2019年12月10日 9時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/y-studio

受験前の子供には、どんな声をかけるべきか。プロ家庭教師集団「名門指導会」代表の西村則康さんは「子供と大人では時間の感覚が違うので、『頑張れ』と言われると子供は『まだ頑張らないといけないのか』と憂鬱な気分になる。それより『大丈夫』と声をかけてほしい」という——。

■応援したい気持ちの表れなのだろうが…

首都圏の中学受験生は、2月1日の入試本番まで50日を切った。この時期になると、どんな親でも穏やかな気持ちではいられなくなる。

第一志望校の過去問でまだ合格ラインに達していない。

苦手単元がまだたくさん残っている。

この時期に及んでもまだやる気が感じられない。

しかし、親がいくら焦ったところで、試験に挑むのは子供本人。これまでわが子の受験に伴走してきたけれど、最後は本人に頑張ってもらうしかない。

そこで、言ってしまうのが「頑張れ!」だ。親としては応援したい気持ちの表れなのだろう。いまひとつ、やる気を感じさせない子供には、叱咤(しった)激励のつもりかもしれない。しかし、今の時期にこの言葉を投げてはいけない。なぜなら、子供はすでに頑張ってきたからだ。

■大人と子供では時間の感覚が違う

親からすればよかれと思って言ってしまう「頑張れ!」。しかし、言われた側が、「これまで頑張ってきていない」という意味に受け取ってしまうこともある。「自分は今まで頑張ってきたけれど、点数が上がらないのは、ダメな方法で勉強を続けてきたからなんだ……。どうせいまさら勉強をしたって、合格できないんだ……」と思わせてしまうのだ。

また、すでに自分の限界を超えるほど頑張っている子供にとっても、「頑張れ!」はしんどい。「僕はもうすでにこんなに頑張っているのに、まだ頑張らなくてはいけないの?」と負担に感じる言葉なのだ。

大人からすると、50日を切ったということは、もうすぐ本番の感覚だろう。けれども、人生経験の浅い小学生の子供にとっては、50日はまだ先の未来。この時間的な感覚のズレが、永遠に頑張り続けなければいけないという憂鬱(ゆううつ)な気分にさせてしまうのだ。

■父親ほど「もっと勉強しないとダメ」と言いがち

「もっと勉強しないとダメだぞ!」
「こんな成績では合格できないぞ!」

直前期になって、こういう否定的な言葉を言いがちなのがお父さんだ。特に自分自身が猛勉強をして受験に成功したという人に多い。「直前期は寝ずに頑張った」「参考書がボロボロになるまで暗記をした」「同じ問題集を3回もやった」など、自分は勉強量で受験に勝ったと思い込んでいる。だから、わが子もできるはずだし、できなければいけないと強制する。

しかし、それができたのは、おそらく大学受験の時のこと。精神的にも体力的にも未熟な小学生に同じことを求めること自体が間違っている。いつも子供のそばにいるお母さんなら、子供のこれまでの頑張りを見てきているし、自分の肌感覚で「そんなにたくさんの量の勉強は、この子にはできない」と分かるものだが、お父さんにはそれが分からない。

■言ってはいけない「不合格」という言葉

「○○しないと、不合格になるぞ!」
「○○だと、不合格になるぞ!」

どんな言い方であっても、「不合格」という言葉は口に出してはいけない。直前期にもかかわらず、いまひとつ本人にやる気を感じないときに、発破をかけるつもりで思わず口にしてしまいがちな言葉だが、この言葉を投げられて、「よし! 頑張るぞ!」と気持ちを奮い立たせられるような子供はほとんどいない。

実は、子供はみんな合否のプレッシャーを感じている。親からみると、まったくやる気を感じられないような子供でも、やはり不合格は嫌なのだ。なかには、不合格だったときの言い訳を考えている子もいる。

「もし不合格になったら、お父さんとお母さんはがっかりするだろうな。おなかが痛くなって解けなかったと言おうかな」、こんなことを考えている子供がたくさんいるのだ。女の子の場合は、より具体的な言い訳を用意していることがある。女の子は家族のプレッシャーだけでなく、友達同士のプレッシャーも感じているからだ。

「もし私だけ不合格だったら、格好悪いな。『本当はあの学校には行きたくなかったんだよね。でも、親が受けなさいってうるさいから、受けてみただけなんだよね』って言おうかな」と、直前期に考えていることもある。そんなことを考えるくらいなら、最後まであきらめずに勉強をしてほしいのだが、そのくらい子供にとっては大きなプレッシャーがかかっていることを親は知っておいてほしい。

■お母さんの不安を敏感に察知する子供たち

直前期になると、できていないことが気になるものだ。特にお母さんは、「あれもまだできていない」「これもまだできていない」と不安にかられる。

直前期のお母さんの相談は、2パターンに分かれる。一つは熱心なお母さんからの相談、もう一つは“おまかせ系”のお母さんの相談だ。前者は「あの単元のあの問題が出たらどうしましょう?」と相談の内容がやたらと細かい。後者は単に「大丈夫なのかしら?」と不安がる。いずれの相談にも、直前期はあれこれ細かくアドバイスをするよりも、まずはお母さんを安心させてあげることが大事だと思っている。

直前期になると、お母さんの多くは顔の表情が険しくなり、笑顔が消える。子供にとっては、それが一番つらい。「お母さんの元気がない。もし、僕が不合格になったら、お母さんはもっと元気がなくなってしまうかもしれない」「お母さんがピリピリしているということは、合格が危ないということなのではないか?」こんなふうに子供はお母さんの表情を見て、不安な気持ちを募らせてしまうのだ。

■親も子も、十分頑張ってきた

だから、まずお母さんの不安を取り除くようにしている。中学受験は子供がまだ小さいため、親のサポートが必要だ。すると、親である自分が頑張らなければいけないと力が入ってしまうお母さんがいる。「私が勉強を教えられないから、この子の成績が伸びないのではないだろうか」「私が働いているせいで、この子が受験に不利になっているのではないだろうか」と思い込んでいるお母さんは少なくない。それが直前期の不安をさらに大きくしてしまうことがある。

そういうとき、私は「お子さんも頑張りましたけれど、お母さんも頑張りましたよね」と、ねぎらいの言葉をかける。そして、最後は細かいアドバイスではなく、「私はお子さんとお母さんの頑張りを信じていますから」と背中を押す。そうやって、親子を安心させる。

直前期の声かけは「頑張れ!」ではない。なぜなら、親も子供ももう十分頑張ってきたからだ。

「いつも通りにやれば大丈夫!」
「あなたは今まで本当によく頑張ってきたから、神様が味方についてくれるよ!」
「今まで頑張ってきたけれど、お前の力はこんなもんじゃない。さぁ、そろそろ本気を出そうか!」

■最後の最後は「あなたなら大丈夫!」

直前期の声かけは、「前向き」「ねぎらい」「明るい未来を思わせる」ことを意識してほしい。「頑張れ!」と応援するのではなく、「今まで頑張ってきたよね」とこれまでの頑張りを認め、ねぎらい、「だから、大丈夫だよ!」と安心させてあげる。子供が「そんなことない」と反論してきたら、「いやいや、お父さんとお母さんはあなたがすごいことを知っているもんね!」と冗談っぽく言ってみるものいいと思う。

どんなに優秀な子であっても、最後まで何が起こるか分からないのが、中学受験だ。精神的にまだ幼い小学生は、当日のメンタルが結果を大きく左右する。だからこそ、最後の最後は「あなたなら大丈夫!」と自信を持たせてあげることが大事なのだ。

言われたことをコツコツとやれる女の子と違って、男の子は直前期になってもマイペースなことが多い。そんなときはつい「このままでは合格できないわよ!」と発破をかけたくなるだろう。親からすると、もっともっと頑張ってほしいと思うかもしれないが、ほんの少しでも頑張りが見えたなら「頑張っているね。この調子だよ!」と明るい声をかけてほしい。すると、本人も頑張っている気分になり、入試2週間前にようやく「よし! 絶対に合格するぞ!」とやる気スイッチが入ることがある。そのくらいギリギリにならないと、やる気スイッチが入らない子もいる。

どんな子供にも最後に響く言葉は「大丈夫!」なのだ。

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西村 則康(にしむら・のりやす)
プロ家庭教師集団「名門指導会」代表/中学受験情報局 主任相談員
日本初の「塾ソムリエ」として、活躍中。40年以上中学・高校受験指導一筋に行う。コーチングの手法を取り入れ、親を巻き込んで子供が心底やる気になる付加価値の高い指導に定評がある。

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(プロ家庭教師集団「名門指導会」代表/中学受験情報局 主任相談員 西村 則康 構成=石渡 真由美)

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